あるデジタルX線画像システムで撮影したときの、単位面積1 mm²当たりの平均入射X線量子数が1,000個で、出力画像のSNRは20であった。このシステムのDQEの値はどれか。
- 0.2
- 0.3
- 0.4
- 0.5
- 0.6
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
3.0.4
解説
この問題は、デジタルX線画像システムの「性能(変換効率)」を計算させる問題です。
アルファベットの羅列にビビる必要はありません。
これは「理想の状態から、どれだけ劣化してしまったか?」を計算するだけの、シンプルな割り算です。
✔ DQEとは?:「情報の伝言ゲーム」の成績表 📝
DQE(量子検出効率)とは、装置がX線情報をどれだけロスなく画像にできたかを表す指標です。 理想的な装置(DQE=1.0)なら、入力された情報を100%出力できますが、現実の装置は必ず途中でノイズが混じり、情報は劣化します。
「入力された情報の質 (SNRin)」に対して、「出力された情報の質 (SNRout)」はどれくらいか? この比率(の2乗)がDQEです。
DQE = (SNRout)2 /(SNRin)2 = (出力SNR / 入力SNR)2
✔ Step 1:入力SNR を求める
ここが最大のポイントです。問題文には「入力SNR」という数字は書いてありません。
代わりに「入射X線量子数(N) = 1,000個」とあります。
X線のような量子の世界では、「信号 (S) が N 個なら、ノイズ は √N になる(ポアソン分布)」という鉄の掟があります。
つまり、入力SNR(信号対雑音比)は、以下の式で自動的に決まります。
SNRin = N / √N = √N
今回の問題では N = 1000 なので、SNRin = √1000 ≒ 31.6
これが「理想の画質(スタート地点)」です。
✔ Step 2:DQEを計算する
題文より、出力SNR (SNRout) = 20 です。
スタート地点は 31.6 だったのに、装置を通したら 20 に下がってしまいました。 では、効率(DQE)は?
DQE = (20 / 31.6)2 ≒ (0.63)2 ≒ 0.4
よって、正解は 0.4 となります。 (※「効率40%」という意味です。FPDとしては標準的な性能です)
出題者の“声”

この問題の狙いは、「X線のノイズは √N で決まる」という統計学の基礎を知っているか、そして「DQEは入出力のSNRの2乗比である」という定義を覚えているか、この2点じゃ。
「入力SNRが書いてない!」と慌てた者は勉強不足。
「量子数 1000個」という情報自体が、「入力SNR=√1000」であることを意味しておるのじゃ。
この √N は、放射線計測のあらゆる場面で顔を出す超重要ルールじゃから、絶対に忘れてはいかんぞ。
臨床の“目”で読む

ーDQEが高いと、何が嬉しいの?ー
DQEは、言ってみれば車の「燃費」のようなものです。
- DQEが高い装置(燃費が良い車)
- 少ないガソリン(少ないX線量)で、目的地まで走れる(きれいな画像が出る)。 → 被ばく低減に直結します!
- DQEが低い装置(燃費が悪い車)
- 同じきれいな画像を出そうとすると、大量のX線が必要になる。 → 患者さんの被ばくが増えてしまいます。
私たちがFPD(フラットパネル)を使う最大の理由は、昔のフィルムやCRに比べてDQEが圧倒的に高いからです。 「DQE 0.4(40%)」という数字は低く見えるかもしれませんが、フィルム時代に比べれば格段に進化しています。
新しい装置を選定する際、メーカーの担当者が「このFPDはDQEが高いですよ」とアピールするのは、「低被ばくで高画質が撮れますよ」と言っているのと同じ意味なのです。
今日のまとめ
- DQE(量子検出効率)は、装置の「情報の変換効率」を表す成績表。
- 式は DQE = (SNRout)2 /(SNRin)2
- 最大の鍵は SNRin = √N(ポアソン分布)。
- DQEが高い=少ない線量できれいな写真が撮れる(低被ばく)。



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