放射性物質を取り込んだ子どもに対する預託実効線量において、
摂取した年齢からの評価期間で正しいのはどれか。
- 40歳まで
- 50歳まで
- 60歳まで
- 70歳まで
- 80歳まで
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
4.70歳まで
解説
この問題は、放射性物質を体内に取り込んだ際(内部被ばく)の、「被ばく線量の計算期間(いつまでカウントするか?)」のルールを問う問題です。
✔ 預託実効線量とは?:「将来の借金」を一括計算する 💸
内部被ばくは、外部被ばく(レントゲンなど)と違い、放射性物質が体内に残っている限り、将来にわたって被ばくし続けます。 この「一生分の被ばく量(将来の負債)」を、摂取した今の時点でまとめて計算したものを「預託実効線量」と呼びます。
では、その「一生分」とは具体的に何年でしょうか? ICRP(国際放射線防護委員会)は、人間の平均寿命などを考慮して、以下のルールを決めています。
- 大人の場合
- ルール:摂取してから「50年間」
- 理由:働き盛りの20〜30代で被ばくしたとして、50年経てば70〜80代。仕事(放射線作業)における管理期間としてはこれで十分カバーできると考えます。
- 子どもの場合
- ルール:摂取してから「70歳になるまで」
- 理由:例えば0歳の赤ちゃんが被ばくした場合、「50年間」だと50歳で計算が打ち切られてしまいます。これでは人生の残りが長すぎます。そこで、子どもは「70歳(人生の標準的なゴール)」までをカバーできるように計算します。
出題者の“声”

この問題の狙いは、「大人と子どもの人生の残り時間の違い」を理解しておるか、という点にある。
- 大人(作業者):あと50年生きれば十分だろう → 「50年間」
- 子ども:大人になるまでの時間+大人としての時間が必要だ → 「70歳まで」
この区別がついているか。「50」という数字だけを丸暗記している学生は、選択肢2を選んで自滅する。「期間(年数)」なのか「年齢(歳)」なのか、単位の違いにも注目するのじゃぞ。
臨床の“目”で読む

ーなぜ「内部被ばく」を特別扱いするのか?ー
レントゲンやCTなどの「外部被ばく」は、スイッチを切れば被ばくはゼロになります。 しかし、核医学検査(PETや骨シンチなど)や原発事故などで体に入った放射性物質は、スイッチを切ることができません。 物質が体から出ていくか(排泄)、放射能が弱まるか(減衰)するまで、24時間365日、体の中から放射線を浴び続けます。
特に小児は、細胞分裂が盛んで放射線感受性が高い(影響を受けやすい)上に、これから生きる時間が長いため、発がんなどのリスクが顕在化する可能性が大人より高くなります。
だからこそ、小児の線量評価は、大人よりも厳しい(長い)期間を設定して、慎重に管理する必要があるのです。
今日のまとめ
- 預託実効線量は、将来にわたる内部被ばくを一括計算した値。
- 大人(作業者)の評価期間は、摂取後「50年間」。
- 子どもの評価期間は、摂取後「70歳になるまで」。
- 子どもは感受性が高く余命も長いため、より慎重で長期的な評価が必要とされる。



コメント