我が国の悪性腫瘍で正しいのはどれか。
- 咽頭癌は男性より女性に多い。
- 乳癌の組織型で最も多いのは腺癌である。
- 子宮頸癌の組織型で最も多いのは腺癌である。
- 胃癌の組織型で最も多いのは扁平上皮癌である。
- ホジキンリンパ腫の方が非ホジキンリンパ腫よりも多い。
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
2.乳癌の組織型で最も多いのは腺癌である
解説
✔ 組織型:「腺癌」と「扁平上皮癌」を区別する
悪性腫瘍は、発生した細胞の種類によって「組織型」に分類されます。特に頻度が高いのが「腺癌」と「扁平上皮癌」で、この2つの違いを理解することが重要です。
- 腺癌
- 母乳や消化液などの分泌物を出す「腺組織」から発生するがんです。したがって、乳腺、胃、大腸、前立腺、肺など、腺組織が豊富な臓器に発生します。
- 扁平上皮癌
- 体の表面や、食道・気管・子宮頸部のように、管の内側を覆う「扁平上皮」という粘膜から発生するがんです。
この基本ルールに当てはめると、乳腺から発生する乳癌の組織型は、腺癌が最も多いと判断できます。
✔ 各選択肢について
1. 咽頭癌は男性より女性に多い。
- ❌ 誤り
- 咽頭癌の主なリスク因子は喫煙と飲酒です。そのため、罹患率は男性が女性よりも圧倒的に高くなります。
2.乳癌の組織型で最も多いのは腺癌である。
- ✅ 正解
- 乳癌は、乳汁を分泌する乳腺組織から発生するため、その大多数が腺癌です。
- 中でも浸潤性乳管癌が代表的です。
3.子宮頸癌の組織型で最も多いのは腺癌である。
- ❌ 誤り
- 子宮頸部は、扁平上皮で覆われているため、扁平上皮癌が最多です。
- 近年、腺癌も増加傾向にありますが、依然として扁平上皮癌が主流です。
4.胃癌の組織型で最も多いのは扁平上皮癌である。
- ❌ 誤り
- 胃は、消化液を分泌する腺組織が豊富なので、腺癌が大多数を占めます。胃の扁平上皮癌は非常に稀です。
5.ホジキンリンパ腫の方が非ホジキンリンパ腫よりも多い。
- ❌ 誤り
- 悪性リンパ腫全体で見ると、欧米ではホジキンリンパ腫の割合が比較的高いですが、日本では非ホジキンリンパ腫が約9割以上を占め、圧倒的に多くなっています。
出題者の“声”

この問題は、主要ながんの「組織型」と「疫学」という、基本中の基本を正確に記憶しておるかを試しておる。がんは臓器ごとに「よく見られる顔つき」が決まっておるのじゃ。
学生がよく間違えるのは、3番や4番のように、腺癌と扁平上皮癌の発生母地を混同してしまうパターンじゃ。
「子宮頸部=扁平上皮」「胃・乳腺=腺組織」という基本を外すと、一気に得点を落とすことになる。
また、5番のリンパ腫の割合も、日本人として知っておくべき疫学じゃ。
この問題は、ひっかけに惑わされず、がんに関する基本的な常識を即答できるかを試す、実力チェック問題じゃな。
臨床の“目”で読む

臨床現場では、がんと診断された後、まず組織型を確定させる「病理診断」が行われます。なぜなら、組織型によって治療法が大きく異なるからです。
- 乳癌
- ほとんどが腺癌であり、さらにホルモン受容体やHER2といったタンパク質の発現を調べ、手術・薬物療法(ホルモン療法、抗がん剤、分子標的薬)・放射線療法を組み合わせた、個別化治療が行われます。
- 子宮頸癌
- 扁平上皮癌が多く、ヒトパピローマウイルス(HPV)との関連が深いため、検診による早期発見が重要です。放射線感受性が高く、放射線治療が良い適応となることが多いです。
- 胃癌
- 腺癌が主体で、その中でも分化度(顔つきの良し悪し)によって、がんの進行様式や予後が変わってきます。
- 悪性リンパ腫
- 日本では非ホジキンが大多数であり、さらに数十種類の細かい病型に分類され、それぞれで治療薬や治療方針が全く異なります。
私たち放射線技師も、自分が撮影しているがんがどのような組織型で、どのような特徴を持つのかを知っておくことで、画像所見と病理を結びつけて考える、より深い視点を養うことができます。
今日のまとめ
- 基本ルール: 腺組織(乳腺、胃など)からは腺癌が、扁平上皮(子宮頸部など)からは扁平上皮癌が発生しやすい。
- 乳癌・胃癌の組織型は腺癌が最多。
- 子宮頸癌の組織型は扁平上皮癌が最多。
- 咽頭癌は喫煙・飲酒の影響で男性に多い 🚻。
- 日本の悪性リンパ腫は、非ホジキンリンパ腫が圧倒的に多い。
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