ホウ素中性子捕捉療法〈BNCT〉での治療時に用いられる核反応はどれか。
- (d, n)
- (n, α)
- (n, γ)
- (n, p)
- (p, d)
出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)
2. (n, α)
解説
✔ BNCTは「がん細胞の中での小型爆弾」だ!
BNCT(Boron Neutron Capture Therapy)の仕組みを一言で言うと、「がん細胞にホウ素(Boron)を食べさせて、外から中性子(Neutron)を当てて、内部から破壊する」治療法です。
この時、がん細胞の中ではミクロな核反応が起きています。 あらかじめ投与された「ホウ素薬剤(¹⁰B)」は、やってきた「熱中性子(n)」と出会うと、パクっと吸収します(これが捕捉)。 すると、不安定になったホウ素原子核はすぐに分裂し、強力な「アルファ線(α)」と「リチウム原子核(⁷Li)」を放出します。
これを式で表すとこうなります。 ¹⁰B + n → [¹¹B] → α + ⁷Li
つまり、「中性子(n)が入って、アルファ線(α)が出る」反応なので、 (n, α) 反応と呼ばれます。
✔ なぜ (n, α) が最強なのか?
この反応で飛び出す「アルファ線」と「リチウム原子核」には、すごい特徴があります。
- 破壊力が凄まじい(高LET放射線):DNAをズタズタにします。
- 飛ぶ距離が極端に短い:わずか細胞1個分(約 10 μm)しか飛びません。
この「飛ばない」という性質のおかげで、隣にある正常な細胞を傷つけず、ホウ素を取り込んだがん細胞だけをピンポイントで自爆させることができるのです。
✔ 各選択肢について
1. (d, n)
- ❌ 誤り
- 重陽子(d)を当てて中性子(n)が出る反応です。これは治療時の反応ではなく、加速器を使って「中性子を作り出す」時に使われる反応(ベリリウムターゲットなど)です。
2. (n, α)
- ✅ 正解
- これこそがBNCTの主役!ホウ素が中性子を吸収してアルファ線を出す反応です。
3. (n, γ)
- ❌ 誤り
- 中性子捕獲療法では、ホウ素以外に体内にある水素(H)も中性子を吸ってしまいます。その時、水素はガンマ線(γ)を出します(¹H (n, γ)²H)。これは治療中に起きる不要な(被ばくの原因となる)反応として有名ですが、治療の「主役」ではありません。
4. (n, p)
- ❌ 誤り
- 中性子が入って陽子が出る反応。窒素(¹⁴N)などが起こす反応として知られていますが、BNCTの原理ではありません。
5. (p, d)
- ❌ 誤り
- BNCTとは関係ありません。
出題者の“声”

この問題は、BNCTという言葉の「B(ホウ素)」と「N(中性子)」の意味を、物理的に理解しているかを問うておる。
単に「BNCT=ホウ素」と覚えているだけでは浅い。 「なぜホウ素なのか?」 それは、ホウ素(特に¹⁰B)が熱中性子を捕まえる能力(断面積)が桁違いに大きく、しかも捕まえた後に「殺傷能力の高いアルファ線」を出すからじゃ。
記号の (n, α) を丸暗記するのではないぞ。 「中性子(n)という起爆剤を入れたら、アルファ線(α)という爆弾が破裂した」 この映像を頭に浮かべれば、選択肢は自然と2番に絞られるはずじゃ。
臨床の“目”で読む

BNCTは今、放射線治療の現場で最もホットなトピックの一つです。
- 1. 「原子炉」から「病院」へ
- かつてBNCTは、中性子を作るために「原子炉」が必要でした。そのため、ごく一部の研究施設でしか行えませんでした。 しかし近年、病院の中に設置できる小型の「加速器型BNCT装置」が開発され、保険適用も始まりました。皆さんが働く病院にも導入される日が来るかもしれません。
- 2. 技師の役割の変化
- BNCTでは、これまでの放射線治療(リニアックなど)とは違うスキルが求められます。 「いかにホウ素薬剤をがん細胞に集めるか」が重要になるため、薬剤師や医師と連携した投与計画や、PET検査(FBPA-PET)を用いたホウ素集積の事前評価など、核医学や薬理学の知識も総動員して治療を行います。
「 (n, α) 反応」という基礎知識は、この最先端治療を安全に行うための第一歩なのです。
今日のまとめ
- BNCTの核反応は ¹⁰B (n, α)⁷Li。
- 中性子(n)を取り込んで、破壊力の高いアルファ線(α)を放出する。
- アルファ線の飛程は「細胞1個分」。だから正常組織を守りつつ、がん細胞だけを破壊できる。



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