超音波の性質で正しいのはどれか。
- 生体内を主に横波で伝播する。
- 波長が長いほど指向性が向上する。
- 伝播速度は媒質の密度に関係しない。
- 周波数が高いほど深部に到達しにくくなる。
- 検査で用いる周波数はおよそ 100 kHz である。
出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)
4.周波数が高いほど深部に到達しにくくなる。
解説
✔ 超音波物理の「4つの鉄則」
超音波検査(エコー)の原理を理解するために、以下の4つのルールをマスターしましょう。
- ① 生体内は「縦波」で進む
- 音波には、媒質が進行方向と同じ向きに振動する「縦波(疎密波)」と、垂直に揺れる「横波」があります。 超音波検査の対象となる「軟部組織(液体に近い性質)」の中では、横波はすぐに減衰して伝わりません。 そのため、エコー検査では基本的に「縦波」を利用します。 (※骨のような硬い固体では横波も伝わりますが、メインではありません)
- ② 「分解能」と「深達度」のトレードオフ(最重要!)
- 周波数が高い(高周波)
- メリット:波長が短くなり、細かいものが見える(分解能が良い)。指向性が鋭くなる。
- デメリット:体の中でエネルギーをすぐに使い果たしてしまい(減衰が大きい)、奥深くまで届かない。
- 周波数が低い(低周波)
- メリット:減衰しにくいので、体の奥深くまで届く。
- デメリット:波長が長くなり、細かい描写は苦手(分解能が低い)。ビームが広がりやすい。
- 周波数が高い(高周波)
- ③ 音速は「硬さ」と「密度」で決まる
- 音の伝わる速さ(音速 c)は、媒質の「硬さ(体積弾性率 K)」と「密度(ρ)」で決まります。
- c = √ (K / ρ)
- 密度は式の分母に入っているため、当然関係があります。 (一般的に、生体では密度が高い組織ほど硬い傾向があるため、骨などは音速が非常に速くなります)
- ④ 医療用は「MHz(メガ)」の世界
- 我々が検査で使う周波数は、1秒間に数百万回振動する「MHz(メガヘルツ)」帯です。 (例:腹部 3.5 MHz、表在 12 MHz)
- kHz(キロヘルツ)単位の低い周波数は、医療画像用としては使いません。
✔ 各選択肢について
1.生体内を主に横波で伝播する。
- ❌ 誤り
- 軟部組織や液体中では「縦波(疎密波)」として伝わります。
2.波長が長いほど指向性が向上する。
- ❌ 誤り
- 指向性(ビームの鋭さ)を良くするには、波長を短く(周波数を高く)する必要があります。
- 波長が長いと、回折によりビームが広がってしまいます。
3.伝播速度は媒質の密度に関係しない。
- ❌ 誤り
- 音速の公式には「密度」が含まれており、密接に関係します。
4.周波数が高いほど深部に到達しにくくなる。
- ✅ 正解
- 高周波は減衰が激しいため、深部まで届きません(深達度が低い)。
5.検査で用いる周波数はおよそ 100 kHz である。
- ❌ 誤り
- 医療用は「MHz(メガヘルツ)」です。100 kHzは魚群探知機や洗浄機のレベルです。
出題者の“声”

この問題は、超音波の物理特性を「臨床的な感覚」と結びつけられているかを試しておる。
特に選択肢4と5じゃ。 「高周波=高画質」という点ばかり覚えておると、「じゃあ高周波が最強じゃん!」と思い込んでしまう。 しかし、物理の世界には必ず「代償(減衰)」がある。 「良いこと(分解能)」を得るには「我慢すること(深達度)」が必要なんじゃ。
そして単位の「k(キロ)」と「M(メガ)」。 この1000倍の違いに気づかないようでは、現場でプローブの設定なんてできんぞ。 数字の大きさだけでなく、単位接頭辞(k, M, G, T)にも常に目を光らせるんじゃ!
臨床の“目”で読む

現場では、この「周波数」の知識を使って、プローブ(探触子)を使い分けています。
- お腹を見るなら「コンベックス(3.5 MHz)」
- 肝臓や腎臓は体の深いところにあります。 だから、画質はそこそこでも、深くまで届く「低周波(3〜5 MHz)」のコンベックスプローブを使います。扇型に広がるあれです。
- 首や血管を見るなら「リニア(12 MHz)」
- 甲状腺、乳腺、頸動脈などは、皮膚からすぐの浅い場所にあります。 「深さ」はいりません。その代わり、微細な石灰化や血管の壁を詳細に見たい。 だから、遠くへは届かないけれど画質が超きれいな「高周波(10〜15 MHz)」のリニアプローブを使います。
- 「周波数切り替え」スイッチ
- 最近の装置は、1本のプローブで周波数を切り替えられます(例:コンベックスで 3.0MHz ⇔ 5.0MHz)。 太った患者さんで肝臓の奥が見えにくい時は、スイッチ一つで周波数を下げて、深達度を稼ぐ。 逆に痩せた人なら周波数を上げて、きれいに撮る。
この問題の知識は、毎日の検査に直結しています。
今日のまとめ
- 超音波は生体内を「縦波」で進む。
- 高周波(短波長):分解能・指向性は良いが、減衰しやすく深部に届かない。
- 低周波(長波長):分解能は低いが、減衰しにくく深部まで届く。
- 医療用超音波の周波数は「MHz(メガヘルツ)」帯。
- 臨床では「深さ」に合わせてプローブ(周波数)を選ぶのが鉄則。



コメント