【第76回 午前 14】エコー画像の嘘を見抜け!アーチファクト完全攻略!

第76回

超音波検査のアーチファクトと関連事項の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 折り返し ―――― パワードプラ法
  2. 音響陰影 ―――― 嚢胞
  3. 鏡面効果 ―――― 横隔膜
  4. 多重反射 ―――― コメット様エコー
  5. サイドローブ ―――― 脂肪肝

出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)


3.鏡面効果 ―――― 横隔膜

4.多重反射 ―――― コメット様エコー


解説

✔ アーチファクトは「物理現象のいたずら」

超音波診断装置は、「音は真っ直ぐ進んで、一定の速さで帰ってくる」という前提で画像を作っています。 しかし、実際には体の中で音が反射したり、屈折したり、回り込んだりします。この「想定外の動き」が画像上に変な影や光として現れるのがアーチファクトです。

主要なアーチファクトを「3つのグループ」で整理しましょう。

  • ① 強く反射して起きるタイプ(多重反射・鏡面など)
    • 多重反射:プローブと臓器(あるいは臓器同士)の間で音が何度も行ったり来たりすることで、等間隔のハシゴのような像が出ます。
    • コメット様エコー:多重反射の一種。金属、結石、微小な気泡などで発生し、彗星の尾のようにキラキラと尾を引く像です。
    • 鏡面効果横隔膜のような強い反射体が「鏡」の役割をし、反射体の奥(肺の中など)にあるはずのない肝臓などが映り込む現象です。
  • ② 音の強さが変わるタイプ(減衰・増強)
    • 音響陰影(Acoustic Shadow):結石や骨などの硬いものが音を遮り、その後方が真っ黒な影になる現象。「ここに石があるぞ!」という証拠になります。
    • 側方陰影:嚢胞などの球体の「フチ(接線方向)」で音が屈折・散乱し、両脇に影ができる現象です。
    • 後方エコー増強:嚢胞(水)などは音をあまり減衰させずに通すため、周りの組織よりも音が強く残り、後方が白く明るく光る現象です。「中身が水である」ことの証明になります。
  • ③音の進み方がズレるタイプ(屈折・ビーム厚など)
    • レンズ効果腹直筋などで音が屈折し(レンズのように曲がり)、実際とは違う場所に像ができたり、1つのものが2つに見えたりする現象です(大動脈がダブルに見えるなど)。
    • 断面像の厚み:超音波ビームには厚み(幅)があるため、狙った断面だけでなく、その手前や奥にある組織も一緒に拾ってしまい、嚢胞の中にモヤモヤ(偽像)が出る現象です。
    • サイドローブ:メインのビームの横に出る弱いビーム(副極)が、強い反射体からのエコーを拾ってしまい、本来何もない場所にノイズが出る現象です。

✔ 各選択肢について

1.折り返し ―――― パワードプラ法

  • 誤り
  • 折り返し現象は、血流速度が速すぎて測定限界(ナイキスト周波数)を超えた時に、血流方向や色が反転して表示される現象です。
  • これは「カラードプラ法」「パルスドプラ法」で問題になりますが、「パワードプラ法」は血流のエネルギー(量)を表示するもので、方向や速度の情報を持たないため、原理的に折り返し(エイリアシング)の影響を受けにくい(または表示されない)のが特徴です。

2.音響陰影 ―――― 嚢胞

  • 誤り
  • 嚢胞(液体)の後方に出るのは、「後方エコー増強(白くなる)」です。 音響陰影(黒い影)が出るのは、結石石灰化です。

3.鏡面効果 ―――― 横隔膜

  • 正解
  • 横隔膜は、肺(空気)との境界であり、生体内で最強クラスの反射源です。これが鏡となり、肝臓の腫瘍などが肺の中に写っているように見えることがあります。

4.多重反射 ―――― コメット様エコー

  • 正解
  • コメット様エコーは、多重反射の特殊な形(非常に短い間隔での反射の繰り返し)です。 胆嚢腺筋腫症(RAS)や、消化管内のガスなどで観察されます。

5.サイドローブ ―――― 脂肪肝

  • 誤り
  • サイドローブは、胆嚢や膀胱などの「液体の部分」に、周囲からの反射が紛れ込んでモヤモヤ(偽像)を作るのが典型的です。 脂肪肝に関連するのは、肝腎コントラストの上昇や、深部減衰(深部からのエコーが返ってこない)などです。

出題者の“声”

この問題は、単に名前を覚えているかではなく、「何が原因で、どんな絵が出るか」をリンクできているかを試しておる。

特に「嚢胞」を見たとき、 「液体だから音を通す」→「後ろの音が減らない」→「周りより白く見える(後方エコー増強)」 という理屈が浮かぶかじゃ。 逆に「結石」なら、 「硬くて音を跳ね返す・吸収する」→「後ろに音が届かない」→「黒い影になる(音響陰影)」 となる。

アーチファクトは、単なるノイズではない。 「白く光ったから水だ!」「黒い影が出たから石だ!」 と、病変の正体を暴くための「証拠」になるんじゃよ。


臨床の“目”で読む

現場では、アーチファクトは「邪魔者」であると同時に「強力な味方」でもあります。

1. 邪魔なアーチファクト(騙されるな!)

  • 多重反射・サイドローブ
    • 胆嚢の中にモヤモヤした影が出ることがあります。「お、胆泥か?」と思ってしまいがちですが、体位変換しても動かなかったり、設定を変えて消えるなら、それはアーチファクト(偽像)です。
  • 鏡面効果
    • 横隔膜の奥に腫瘍が見えた時、「肺に転移してる!?」と焦ってはいけません。まずは鏡面効果を疑い、角度を変えて確認します。

2. 味方のアーチファクト(診断に使え!)

  • 音響陰影(シャドウ)
    • 胆石かポリープか迷った時、後ろに黒い影(シャドウ)があれば「間違いなく石だ!」と断定できます。
  • コメット様エコー
    • 胆嚢の壁にキラキラした彗星の尾が見えたら、「胆嚢腺筋腫症」という病気の特有サインです。
  • 後方エコー増強
    • 乳腺や甲状腺の腫瘤で、後ろが白く光っていれば、悪いがん(硬くて減衰する)ではなく、良性の嚢胞(水)である可能性が高まります。

アーチファクトの特性を知り尽くしいれば、あえてアーチファクトが出るようにプローブを当てて、診断の確信を得るのです。


今日のまとめ

  1. 鏡面効果:横隔膜が鏡になり、虚像を作る。
  2. 多重反射:音が反復横跳びする。コメット様エコーはその一種。
  3. 音響陰影(シャドウ):石や骨の後ろに出る黒い影。
  4. 後方エコー増強:水(嚢胞)の後ろに出る白い輝き。
  5. サイドローブ・ビーム厚:本来ない場所にモヤモヤ(偽像)を出す。

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