【第76回 午前 15】重T2強調の世界へようこそ!動かない水だけが主役の理由

第76回

MRCP で高信号に描出されるのはどれか。

  1. 門 脈
  2. 肝嚢胞
  3. 膵実質
  4. 総胆管結石
  5. 腸間膜脂肪

出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)


2.肝嚢胞


解説

✔ MRCPは「止まっている水」の独壇場

MRCP(Magnetic Resonance Cholangiopancreatography)の画像は、「重T2強調画像(Heavily T2WI)」と呼ばれる特殊な撮像法で作られます。

通常のT2強調画像よりも、さらにエコー時間(TE)を超・長く設定することで、

  • T2値が非常に長い「液体(水、胆汁、膵液)」 → 信号が残る(真っ白)
  • T2値が短い「筋肉・実質臓器」 → 信号が消える(真っ黒)

という極端なコントラストを作り出します。 さらに、脂肪抑制法を使って脂肪の信号も消してしまうため、画面上には「水っぽいもの」だけが白く浮き上がります

✔ 各選択肢について

1.門 脈

  • 誤り
  • 血管の中を流れる血液は、フローボイド効果(信号消失)により「無信号(真っ黒)」になります。 また、もし流れが遅くても、周囲の臓器と同様に信号は抑制されます。

2.肝嚢胞

  • 正解
  • 嚢胞(のうほう)とは、中に液体(水成分)が溜まった袋のことです。 胆汁と同じく、水成分はT2緩和時間が非常に長いため、MRCPでは極めて高い信号(真っ白)として描出されます。

3.膵実質

  • 誤り
  • 膵臓そのもの(実質)は固形の臓器であり、液体ではありません。 重T2強調画像では信号が減衰してしまい、低信号(黒〜灰色)となり、背景に沈んでしまいます。 白く写るのは、膵臓の中を通る「膵管(膵液)」だけです。

4.総胆管結石

  • 誤り
  • 胆石は固形物(石)であり、水を含みません。 そのため、MRCPでは「無信号(真っ黒)」になります。 真っ白な胆汁の中に、ポカリと黒い穴(欠損像)が開いているように見えるのが、結石の所見です。

5.腸間膜脂肪

  • 誤り
  • 脂肪は本来T2強調画像で白く写りやすい組織ですが、MRCPでは胆管を見やすくするために、必ず「脂肪抑制」を併用します。 そのため、脂肪の信号は意図的に消去され、低信号(黒)になります。

出題者の“声”

この問題は、MRCPの原理である「水強調」の意味を理解しているかを問うておる。

MRCPは、いわば「水のマッピング」じゃ。 選択肢の中で、純粋な「液体の塊」はどれか? 門脈は血流、膵臓は肉、結石は石、脂肪は油。 これらはすべて、MRCPというフィルタを通すと黒く消える運命にある。 唯一、水風船である「肝嚢胞」だけが、胆汁と同じように白く輝き続けるんじゃ。

特に「結石」のイメージには注意じゃぞ。 X線CTでは石は白いが、MRIでは「黒い穴」として見つかる。 モダリティ(装置)が変われば、見え方も180度変わる。頭を柔らかく切り替えるんじゃ!


臨床の“目”で読む

現場では、この「白と黒」のコントラストをきれいに作るために、技師が細かく調整しています。

  • 脂肪抑制が命!
    • 解説にもあった通り、MRCPでは「脂肪」を消すことが極めて重要です。 もし脂肪抑制が上手くいかないと、お腹の脂肪が白く残ってしまい、それをMIP処理(3D化)した時に、胆管と重なって「どれが胆管でどれが脂肪かわからない!」という失敗画像になってしまいます。
  • 膵臓の「白い影」にも要注意(膵嚢胞性腫瘍)
    • 今回の正解は「肝嚢胞」でしたが、臨床では膵臓の中にも「白い丸」が見つかることがよくあります。 これは「膵嚢胞性腫瘍(IPMNやMCNなど)」の可能性があります。 これらは腫瘍ですが、中にネバネバした液体(粘液)を溜め込んでいるため、MRCPでは「真っ白(高信号)」に写るのです。 「膵臓に白いものがあったら、ただの水(嚢胞)か、それとも腫瘍か?」 MRCPは、膵管とのつながりや形を映し出し、その鑑別を行うための強力な武器でもあります。
  • 「黒い影」の正体を見極める
    • 逆に、胆管の中に「黒い影」を見つけた時。 これが「結石」なのか、単なる「気泡」なのか、あるいは「ポリープ」なのか。 それを鑑別するために、私たちは患者さんに体位変換(うつ伏せになってもらうなど)をお願いすることがあります。 石なら重力で動きますが、ポリープなら動きません。 MRIはただ撮るだけでなく、動かして診断に迫ることもあるのです。

今日のまとめ

  1. MRCPは「重T2強調画像」で、動かない液体(水)のみを高信号(白)にする。
  2. 肝嚢胞膵嚢胞性腫瘍(IPMN)は液体貯留なので、高信号になる。
  3. 結石は、白い胆汁の中の「黒い欠損像(低信号)」として見える。
  4. 脂肪は脂肪抑制によって信号を消去される。
  5. 血管(門脈)はフローボイドにより無信号になる。

コメント