PET の空間分解能で正しいのはどれか。
- 陽電子の飛程が長いと高い。
- ガントリ径が大きいほど高い。
- 3D 収集では 2D 収集より高い。
- シンチレータが小さいほど高い。
- 視野中心より視野辺縁の方が高い。
出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)
4.シンチレータが小さいほど高い。
解説
✔ PETの「眼」は細かいほどよく見える
PET装置は、リング状に並べた小さな「検出器(シンチレータ)」で、体内から出てくるガンマ線をキャッチします。 この検出器の一つひとつが、デジカメでいう「画素(ピクセル)」にあたります。
- 大きな検出器:画素が粗いので、画像はボヤけます(モザイク画のようになります)。
- 小さな検出器:画素が細かいので、細かい構造までくっきり見えます。
つまり、「シンチレータ(検出器)のサイズを小さくすればするほど、空間分解能は高く(良く)なる」。これがPETの解像度を決める最も基本的なルールです。
✔ 分解能を下げる「3つの邪魔者」
- 陽電子の飛程
- 現象:放射性核種から飛び出した陽電子は、すぐに消滅するわけではなく、少しふらふらと走って(飛程)、止まってからガンマ線を出します。
- 影響:本来の「がんの位置」と「光った位置」にズレが生じます。
- 結論:飛程が長いほど、ズレが大きくなり、分解能は低く(悪く)なります。
- 不対消滅
- 現象:消滅放射線(2本のガンマ線)は、厳密には180度ちょうどではなく、わずかに(約0.25度)ズレて飛び出します。
- 影響:距離が離れれば離れるほど、この角度のズレによる誤差が広がります。
- 結論:検出器までの距離(ガントリ径)が大きいほど、誤差が拡大し、分解能は低くなります。
- 深さ方向の相互作用
- 現象:視野の「端っこ(辺縁)」から斜めに入ってきたガンマ線は、隣の検出器に突き抜けて反応してしまうことがあります(斜め読みの誤読)。
- 影響:位置を読み間違えて画像がボケます。
- 結論:視野の辺縁ほど分解能は低くなります(中心が一番キレイ)。
✔ 各選択肢について
1.陽電子の飛程が長いと高い。
- ❌ 誤り
- 飛程が長い(例:82Rbなど)と、本来の場所から離れたところで光るため、画像はボケて分解能は低くなります。18Fは飛程が短いので高画質です。
2.ガントリ径が大きいほど高い。
- ❌ 誤り
- 径が大きいと、180度からのわずかな角度ズレ(不対消滅)の影響が距離によって増幅されるため、分解能は低くなります。
3.3D 収集では 2D 収集より高い。
- ❌ 誤り
- 2D収集の方が、斜めからの散乱線を物理的にカットできるため、一般的に分解能やコントラストは良好です。
- 3D収集は感度を上げるためのモードですが、散乱線が増えるため、補正が不十分だと画質は低下しやすい傾向にあります(※現代の装置は3Dが主流ですが、原理的には2Dの方が良い)。
4.シンチレータが小さいほど高い。
- ✅ 正解
- デジカメの画素数と同じです。検出素子を細かくすればするほど、位置特定が正確になり、分解能は向上します。
5.視野中心より視野辺縁の方が高い。
- ❌ 誤り
- 斜め入射による位置ズレにより、PETは中心部が最も分解能が高く、辺縁に行くほどボケて(楕円形に歪んで)しまいます。
出題者の“声”

この問題は、PETの画質が「何によって決まるか」を物理的に理解しているかを試しておる。
「画質を良くしたいなら、カメラ(検出器)を細かくすればいいじゃん!」 それは正解じゃ。それが選択肢4じゃな。
しかし、PETにはどうしようもない「物理の壁」がある。 「陽電子が勝手に走り回る(飛程)」 「180度ピッタリに飛ばない(不対消滅)」 これらは自然現象じゃから、どんなに機械を進化させてもゼロにはできん。
この「機械の性能」と「物理の限界」の両方を知っていることが重要なんじゃよ。
臨床の“目”で読む

現場では、この「限界」と戦いながら検査をしています。
- 「小さい=高い」のジレンマ
- 「シンチレータを小さくすれば高画質」なら、極限まで小さくすればいいのでは? と思いますよね。 でも、小さくしすぎると、今度は「感度(ガンマ線をキャッチする効率)」が落ちて画像がザラザラになったり、装置の値段が跳ね上がったりします。 臨床機では、4mm角程度の結晶サイズが、画質と感度とコストのバランスが良い「最適解」として採用されています。
- 端っこボケへの対策
- 解説にもあった通り、PETは画像の端っこがボケやすいです。 だから、脳や心臓など、詳細に見たい臓器はできるだけ「視野の中心(ど真ん中)」に来るように位置合わせ(ポジショニング)をします。 「真ん中が一番よく見える」。これはPET検査の鉄則です。
- 核種による画質の違い
- 普段よく使う18F(FDG)は、陽電子の飛程が短く(約0.6mm)、非常にきれいな画像が撮れます。 しかし、心臓PETで使う82Rb(ルビジウム)などは、飛程が長い(数mmある)ため、どうしても画像が少しボヤッとしてしまいます。 「薬によって画質の限界値が違う」というのも重要です。
今日のまとめ
- PETの空間分解能は、シンチレータ(検出器)が小さいほど高くなる。
- 陽電子の飛程が長いと、位置ズレで分解能は下がる。
- ガントリ径が大きいと、角度ズレの影響で分解能は下がる。
- 視野辺縁は、斜め入射で分解能が下がる。
- PETは「中心」が一番よく見える!



コメント