NEW!【第76回 午前 29】写真か動画か?核医学の指標を決める決定的な違いとは?

核医学診療技術学

算出にダイナミック収集が必要な指標はどれか。

  1. 18F-FDG を用いた SUV
  2. 99mTc-GSA を用いた LHL15
  3. 99mTc-MAA を用いた右左シャント率
  4. 123I-イオフルパンを用いた specific binding ratio〈SBR〉
  5. 123I-MIBG を用いた H/M

出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)


2.99mTc-GSA を用いた LHL15


解説

✔ 「ダイナミック(動態)」収集とは?

核医学検査の撮像法は、大きく2つに分けられます。

  • 静態(スタティック)収集
    • ある決まった時間にパシャリと撮る「写真」
    • 薬が「最終的にどこに、どれくらい集まったか」を見ます。
  • 動態(ダイナミック)収集
  • 注射した瞬間から連続して撮り続ける「動画」
  • 薬が「どうやって移動し、どう変化したか(スピード)」を見ます。
  • 時間放射能曲線(タイム・アクティビティ・カーブ:TAC)というグラフを作れるのが最大の特徴です。

✔ GSAシンチは「肝臓の競走」を見る!

99mTc-GSA(LHL15): GSA(アシアロシンチ)は、肝臓の「予備能(余力)」を調べる検査です。 注射すると、血液中(心臓)にある薬が、どんどん肝臓の受容体に取り込まれていきます。

  • 心臓(Heart):薬がっていく
  • 肝臓(Liver):薬がえていく

この「減り具合」と「増え具合」のスピードをグラフにして解析するために、注射直後から約20分間、休まず撮り続けるダイナミック収集が必須となります。 LHL15(15分値の肝摂取率)やHH15(15分値の心プール血中停滞率)は、この動態データ(グラフ)から算出される指標です。

✔ 他の選択肢はなぜ「静態」?

他の選択肢は、基本的に「ある時点でどれくらい集まったか」を見る検査なので、静態収集(または1回のSPECT/PET収集)で計算可能です。

1.18F-FDG の SUV

  • SUV(Standardized Uptake Value):注射してから1時間後などに撮像したPET画像から、「その場所にどれくらい集積しているか」を数値化したものです。一点の計測値があれば計算できます。

3.99mTc-MAA の 右左シャント率

  • 肺に詰まるはずのMAAが、シャントを通って脳や腎臓(全身)に行ってしまった割合を見ます。全身をスキャン(Whole Body収集)して、「肺のカウント」と「全身のカウント」を比べるだけなので、動きを見る必要はありません。

4.123I-イオフルパン の SBR

  • SBR(Specific Binding Ratio):線条体にどれくらい集まったかを、後頭葉などのバックグラウンドと比較する指標です。注射後3〜4時間のSPECT画像(静止画)から計算します。

5.123I-MIBG の H/M

  • H/M比(Heart / Mediastinum ratio):心臓(H)と縦隔(M)のカウント比です。注射後15分(早期像)と3〜4時間(後期像)にそれぞれ撮って計算します。動画である必要はありません。

出題者の“声”

この問題は、指標の名前を知っているかだけでなく、「検査のプロセス(流れ)」が頭に入っているかを試しておる。

GSAシンチは、注射した瞬間からカメラを回し、「心臓から肝臓へ薬が移っていく様子」をじーっと観察する検査じゃ。 一方で、FDGやMIBG、ダットスキャン(イオフルパン)は、注射してしばらく待機してから、「はい、撮りますよー」と撮像室に入って撮影するじゃろ?

「待ってから撮る=静態」 「注射と同時に撮る=動態」 この現場のイメージがあれば、LHL15だけが異質だとすぐに気づけるはずじゃよ。


臨床の“目”で読む

GSAシンチ(受容体シンチ)は、肝臓外科医にとっての手術前の「羅針盤」です。

  • グラフ(TAC)が命!
    • GSAの検査が終わると、ワークステーションで解析を始めます。 心臓と肝臓にROI(関心領域)を囲むと、きれいなX字型のグラフが出てきます。
    • 右下がりの線:心臓(血液中から薬が消えていく)
    • 右上がりの線:肝臓(薬を取り込んでいく)
    • このグラフの形を見るだけで、「お、この肝臓は元気だな(クロスが早い)」とか「弱ってるな(なかなかクロスしない)」と分かります。LHL15はその結果としての数値に過ぎません。
  • 失敗できない「ボーラス注入」
    • ダイナミック収集の検査では、薬を「一気に」静脈注射(ボーラス投与)することが重要です。 ちんたら入れていると、グラフがなまってしまい、正確なLHL15やHH15が計算できません。 「カメラスタート!」「はい、注入!」 このタイミング合わせが、重要なんです。

今日のまとめ

  1. ダイナミック(動態)収集が必要なのは、時間経過による変化(グラフ)を見る検査。
  2. 99mTc-GSA(LHL15, HH15)は、肝臓への取り込み速度を見るためダイナミック収集が必須。
  3. SUV, SBR, H/Mなどは、ある時点での分布を見る静態(またはSPECT/PET)収集でOK。
  4. GSAは「心臓から肝臓へのバトンタッチ」を動画で見る検査!

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