【第76回 午前 32】飲む・打つ・吸う・刺す! 核医学「投与ルート」完全攻略

核医学診療技術学

吸入させる放射性医薬品はどれか。

  1. 81mKr
  2. 99mTc-GSA
  3. 111In-DTPA
  4. Na123I
  5. 131I-アドステロール

出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)


1.81mKr


解説

✔ 「気体」は吸うしかない!

この問題を解くカギは、薬品の「状態(気体・液体・固体)」を知っているかどうかです。


✔ 各選択肢について

1.81mKr

  • 正解
  • クリプトン(Kr)は、ヘリウムやネオンと同じ「希ガス(不活性ガス)」です。
  • 「ガスを吸い込んで」肺の空気の通り道(換気状態)を見ます。 これを「肺換気シンチグラフィ」と言います。
  • 半減期が13秒と極めて短いため、親核種(81Rb:ルビジウム)が入ったジェネレータから発生したガスを、マスクを通して直接患者さんに吸入させながら撮影します。

2.99mTc-GSA

  • 誤り
  • 肝臓の受容体を見る薬です。血液に乗って肝臓に運ばれるので、静脈注射です。

3.111In-DTPA

  • 誤り
  • これは「脳槽シンチグラフィ」で使う薬です。 髄液の流れや漏れ(髄液漏)を見るため、背骨の隙間から「髄腔内(くも膜下腔)」に直接針を刺して注入します(ルンバール)。
  • 静脈注射をすると腎臓から排泄されてしまい、髄液には入りません(血液脳関門を通れないため)。

4.Na123I

  • 誤り
  • 甲状腺の検査薬です。 ヨウ素は食事(昆布など)と同じように、口から摂取して吸収され、甲状腺に集まります。 実際の検査薬は「カプセル」の形をしており、水で飲み込みます。

5.131I-アドステロール

  • 誤り
  • 副腎皮質シンチの薬です。 コレステロールの親戚のような物質ですが、そのまま血管に入れないと届かないため、静脈注射します。 (ゆっくり静注しないと顔面紅潮が起きます。)

出題者の“声”

この問題は、放射性医薬品の「物理的・化学的性質」を理解しているかを試しておる。

クリプトンはガス(気体)じゃ。 気体を体に入れるにはどうするか? 呼吸して吸い込むしかないじゃろ。

逆に、甲状腺のヨウ素は「食べる(カプセル)」、脳槽シンチは「髄液に入れる(腰椎穿刺)」。 それぞれの薬が、「どうやって目的地までたどり着くか」というストーリーを想像できていれば、選択肢を見るだけで瞬時に正解できるサービス問題じゃよ。


臨床の“目”で読む

現場では、この81mKrを使った検査は非常にユニークです。

  • 半減期13秒との戦い
    • 81mKrの半減期はたったの13秒です。 作り置きなんてできません。 そのため、患者さんのそばに「ジェネレータ(発生装置)」を置き、そこから伸びたホースを患者さんのマスクに直結します。 ジェネレータに空気を送り込むと、新鮮なKrガスが発生し、それを患者さんが吸い続けている間だけ、肺が光ります。 送気を止めると、あっという間(数十秒)に消えてなくなります。
  • 時短テクニック「同時収集」
    • 肺の検査には、血流を見る「99mTc-MAA」と、換気を見る「81mKr」の2つがあります。 通常、2つの検査をするなら2回撮影が必要ですが、この2つは「同時に」行えます。
    • エネルギーが違う(Tcは141keV、Krは190keV)ので、カメラの設定で別々の画像として収集する。 これにより、患者さんは一度寝ているだけで、血流と換気の両方の画像が撮れるのです。 これを「デュアルアイソトープ(二核種)同時収集」と言い、肺塞栓の診断には欠かせないテクニックです。

今日のまとめ

  1. 81mKr(クリプトン)は気体。だから吸入(肺換気シンチ)。半減期は13秒
  2. Na123I(甲状腺)はカプセル。だから経口投与
  3. 111In-DTPA(脳槽)は髄腔内投与(腰椎穿刺)。
  4. 99mTc-GSA131I-アドステロールなどは静脈注射

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