【第76回 午前 35】2つ選べは難問の予感? 治療計画のマージンと線量評価

放射線治療技術学

放射線治療で正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 腎臓は直列臓器である。
  2. 術後予防照射の場合、肉眼的腫瘍体積は定義できない。
  3. 計画標的体積には照射中の体内の動きは考慮されていない。
  4. セットアップマージンはリニアック装置が同じものであれば共通である。
  5. 線量体積ヒストグラムにおける Dmax とは、その臓器が被ばくする最大線量である。

出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)


2.術後予防照射の場合、肉眼的腫瘍体積は定義できない。

5.線量体積ヒストグラムにおける Dmax とは、その臓器が被ばくする最大線量である。


解説

✔ 手術で取ったんだから、GTVはない!

GTV(Gross Tumor Volume:肉眼的腫瘍体積)とは、画像(CTやMRI)や触診で「目に見える腫瘍の塊」のことです。

「術後予防照射」とは、手術で腫瘍をきれいに取り除いた後、目に見えない顕微鏡レベルの残り(微小転移)を叩くために行う治療です。 手術が成功していれば、画像に写る腫瘍(GTV)はもう体の中にありません。 したがって、「GTVは定義できない(存在しない)」が正解となります。 この場合、腫瘍があった場所(腫瘍床)を含めてCTV(臨床標的体積)を設定するところから治療計画がスタートします。

✔ 線量体積ヒストグラムDVH)の「D」はDose(線量)

線量体積ヒストグラムは、治療計画の良し悪しを評価するグラフです。 用語の定義をしっかり覚えましょう。

  • Dmax(Maximum Dose):その臓器の中で最も高い線量が当たっている点の線量(最大線量)。
  • Dmean(Mean Dose):臓器全体の平均線量。
  • D95%:体積の95%が受けている線量。
  • V20Gy:20Gy以上の線量が当たっている体積(%またはcc)。

✔ 各選択肢について

1.腎臓は直列臓器である。

  • 誤り
  • 臓器には、放射線ダメージの受け方によって2つのタイプがあります。
  • 直列臓器:脊髄、脳幹、食道など。
    • どこか一箇所でも切断されると、全体の機能が止まる(ケーブルのような臓器)。一部でも高線量が当たると致命的。
  • 並列臓器腎臓、肝臓、肺など。

3.計画標的体積には照射中の体内の動きは考慮されていない。

  • 誤り
  • PTV(Planning Target Volume:計画標的体積)は、最終的に放射線を当てる範囲です。 ここには、以下の2つのマージンが含まれています。
    • Internal Margin(IM):呼吸や生理的な「体内の動き」の分。
    • Setup Margin(SM):毎回の位置合わせの「ズレ(誤差)」の分。

4.セットアップマージンはリニアック装置が同じものであれば共通である。

  • 誤り
  • セットアップマージン(SM)は、「どれくらい正確に位置合わせができるか」で決まります。 同じ装置を使っていても、
    • 「頭部」(シェルでガチガチに固定)なら、ズレは少ないのでマージンは小さく(2〜3mm)。
    • 「前立腺」(体幹部で動きやすい)なら、ズレやすいのでマージンは大きく(5〜10mm)。
  • このように、部位や固定具、患者さんの協力度によって変わるため、共通ではありません

出題者の“声”

この問題は、治療計画の「基礎定義」をちゃんと理解しているかを試しておる。

特に選択肢2は、「GTV=腫瘍」と丸暗記しているだけでは迷うかもしれん。 「術後」という状況を想像できるか? 手術で取ったのに、まだGTVがあるとしたら、それは手術失敗(取り残し)じゃろ? 「予防照射」という言葉の裏にある臨床のストーリーを読み取る力が必要なんじゃよ。

それと、腎臓が直列か並列か。 「腎臓は2つあるから並列」と覚えてもいいが(厳密には違うがイメージとして)、機能単位(ネフロン)が無数にあって、一部がダメでも他が頑張れる臓器は「並列」じゃ。これも放射線生物学の基本じゃぞ。


臨床の“目”で読む

現場では、この「マージン」と「DVH」との戦いです。

  • PTVを攻めるか、リスクを守るか
    • 腫瘍(CTV)にマージンを足してPTVを作りますが、マージンを大きくすればするほど、正常組織(直腸や膀胱など)にも放射線が当たってしまいます。 「呼吸で動くからマージンを足したい…でも、そうすると腎臓のDmaxやV20が基準を超えてしまう…」 このジレンマの中で、固定具を工夫したり、IGRT(画像誘導)を使ってマージンを削ったりするのが、医学物理士や技師の腕の見せ所です。
  • 術後照射の難しさ
    • 術後照射ではGTV(見える敵)がいません。 手術前の画像や、外科医の手術記録を頼りに、「この辺にがん細胞が潜んでいるはずだ」と想像しながらCTV(見えない敵の潜伏場所)を描きます。 ここには解剖学の知識が不可欠です。

今日のまとめ

  1. GTV(肉眼的腫瘍体積)術後照射では腫瘍がないため定義できない
  2. DVHのDmax:その臓器の最大線量(ホットスポット)。
  3. 腎臓並列臓器(一部が壊れても他が補う)。脊髄は直列臓器。
  4. PTVには、「体内の動き(IM)」「セットアップ誤差(SM)」の両方が含まれる。
  5. マージンは部位や固定法によって変わる(共通ではない)。

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