画像誘導放射線治療のコーンビーム CT システムの精度管理で最も高頻度に評価するのはどれか。
- 被ばく線量
- CT 値の不変性
- 幾何学的な歪み
- 空間分解能の定常性
- 照合系と照射系座標の一致
出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)
5.照合系と照射系座標の一致
解説
✔ 「目」と「銃口」がズレていたらどうなる?
IGRT(画像誘導放射線治療)とは、治療直前にCBCT(コーンビームCT)を撮影して、がんの位置を確認し、ミリ単位で位置を修正してから放射線を照射する技術です。
ここで、装置を「スナイパー(狙撃手)」に例えてみましょう。
- 照合系(CBCT) = ライフルについている「スコープ(照準器)」
- 照射系(治療ビーム) = ライフルの「銃口」
もし、スコープの中心(見ている場所)と、銃口の向き(弾が飛ぶ場所)がズレていたらどうなるでしょうか? いくらスコープのレンズが綺麗でも(画質が良くても)、絶対に弾は当たりません。これは治療として致命的です。
機械は重力や温度変化で微妙に歪むため、この「スコープと銃口のズレ(アイソセンタの不一致)」は毎日起こり得ます。 だからこそ、これだけは「毎日(毎朝)」確認しなければならないのです。
✔ 画質チェックは「月イチ」で十分?
他の選択肢(1〜4)は、すべて「画像の質」や「線量」に関する項目です。
- 被ばく線量
- CT値の正確さ
- 歪み、分解能
これらは、装置の性能そのものなので、今日と明日で急激に変わることは稀です(故障しない限り)。 ガイドライン(AAPM TG-179など)でも、これら画質特性のチェックは「月1回」や「年1回」の頻度で十分とされています。
✔ 頻度のピラミッド
- 毎日:安全性・幾何学的精度(座標の一致) ⬅ 今回の正解!
- 毎月:画質(CT値、コントラスト、ノイズ)、出力チェック
- 毎年:詳細な線量測定、機械的な許容誤差の精密検査
✔ 各選択肢について
1.被ばく線量
- ❌ 誤り
- 年1回(または月1回) CBCTの撮影線量は、治療線量に比べれば微々たるものです。毎日は測りません。
2.CT 値の不変性
- ❌ 誤り
- 月1回 CBCTは診断用CTほど厳密なCT値を求められません(位置合わせができれば良い)。月一回のファントム測定で推移を見ます。
3.幾何学的な歪み
- ❌ 誤り
- 月1回 画像がグニャッと歪んでいないか。これも毎日急激に変わるものではありません。
4.空間分解能の定常性
- ❌ 誤り
- 月1回 どれくらい細かく見えるか。これも月次点検項目です。
5.照合系と照射系座標の一致
- ✅ 正解
- いわゆる「アイソセンタ照合」です。
- 毎朝、治療開始前に専用のファントムを撮影し、「CBCTの中心」と「治療ビームの中心」が1mm以内(SRSならもっと厳しく)で合っているかを確認します。
出題者の“声”

この問題は、丸暗記ではなく「現場のリスク管理感覚」を持っておるかを試す良問じゃ。
全部大事なQC項目じゃよ? それは間違いない。 じゃが、「今日ズレていたら、今日患者さんに誤照射してしまう項目はどれか?」と考えるんじゃ。
画質がちょっと悪くても、がんの位置さえ分かれば治療はできる。 しかし、座標がズレていたら、完璧な画像で見えていても、放射線は正常組織に突き刺さる。
「最優先事項は何か」。 この思考プロセスこそが、医療技術者に求められる資質なんじゃ。
臨床の“目”で読む

現場の朝は、このチェックから始まります。
- 「朝の儀式」デイリーQA
- リニアック担当の技師は、朝一番に装置を立ち上げると、まず「Daily QA」を行います。 ファントムを台の上に置いて、CBCTを撮ります。 そして解析ソフトにかけて、 「CBCTのセンター」と「レーザーのセンター」と「放射線のアイソセンタ」 この3つがピッタリ重なっているかをチェックします。
- IGRTの信頼性を支える
- 最近は「2mmのマージンで攻める」ような高精度治療が増えています。 もし座標が2mmズレていたら、マージンが全部食いつぶされて、腫瘍の端っこに当たらないことになります。 「機械はズレるものである」。 この前提に立って、毎日スコープを調整する(座標を合わせる)。これがIGRTを成功させる唯一の道です。
今日のまとめ
- 座標の一致(アイソセンタ)は、治療の命綱。毎日(Daily)チェックする。
- 画質・線量(CT値、分解能など)は、性能評価。月1回(Monthly)でOK。
- 「今日ズレたら事故になるもの」が最優先。



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