ノンコプラナ照射で正しいのはどれか。
- 脳定位照射時に用いられる。
- ハーフフィールドが用いられる。
- 治療寝台回転中に照射を行う手法である。
- ガントリは患者体軸に対して同一平面上を回転する。
- ターゲット周囲の正常組織への線量付与はコプラナ照射と同じである。
出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)
1.脳定位照射時に用いられる。
解説
✔ そもそも「ノンコプラナ」って何?
まず、普通の治療(コプラナ照射)を思い浮かべてください。 患者さんは寝台にまっすぐ寝ていて、ガントリ(機械)だけが患者さんの周りをグルグル回りますよね? これは、金太郎飴のように「輪切り(2次元的)」にビームを入れている状態です。すべてのビームは同じ平面(Co-planar)を通ります。
一方、ノンコプラナ照射(Non-coplanar)は、「寝台(カウチ)を回転」させます。 寝台を横に30度、90度と振った状態でガントリを回すと、ビームは患者さんの頭のてっぺんから入ったり、斜め後ろから入ったりします。 つまり、「球体的(3次元的)」にあらゆる方向からビームを入れることができます。
✔ なぜ「脳」で使うの?
脳には、視神経や脳幹など、絶対に当てたくない重要臓器が密集しています。 普通の輪切り照射(コプラナ)だと、どうしてもビームの通り道が重なってしまい、通り道にある正常脳にたくさん放射線が当たってしまいます。
そこで、ノンコプラナの出番です。 「頭頂部」や「斜め上」など、空いているスペース全部を使ってビームを分散させることで、一点(腫瘍)だけに線量を集中させ、周りの正常脳への被ばくを極限まで薄めることができます。 これが、小さな脳転移などを狙い撃つ「脳定位照射(SRS / SRT)」の基本テクニックです。
✔ 各選択肢について
1.脳定位照射時に用いられる。
- ✅ 正解
- これが最大の用途です。 ガンマナイフ(ヘルメットのような装置)も、サイバーナイフ(ロボットアーム)も、リニアックによるSRSも、すべて原理は「ノンコプラナ(多方向からの集中)」です。
2.ハーフフィールドが用いられる。
- ❌ 誤り
- ハーフフィールド(ノンディバージェント照射)は、乳がんや全脳照射などで、隣り合う照射野をつなぐ時に使うテクニックです。ノンコプラナとは直接関係ありません。
3.治療寝台回転中に照射を行う手法である。
- ❌ 誤り
- 一般的なノンコプラナ照射は、 「寝台を動かす ➡ 止める ➡ 照射する ➡ 止める ➡ 寝台を動かす…」 の繰り返しです。
- 最近は「ハイパーアーク」などのように動きながら撃つ技術も登場していますが、国試的な定義(基本)としては「静止状態で照射」です。
4.ガントリは患者体軸に対して同一平面上を回転する。
- ❌ 誤り
- それは「コプラナ(同一平面)」の定義です。 ノンコプラナは、寝台を振ることで、ガントリの回転軌道が患者体軸に対して斜めや垂直になります。
5.ターゲット周囲の正常組織への線量付与はコプラナ照射と同じである。
- ❌ 誤り
- ノンコプラナにする目的は、ビームの入り口を分散させて、正常組織への線量を「低減」させることです。コプラナよりも周囲へのダメージを減らせます。
出題者の“声”

この問題は、高精度放射線治療の「基本中の基本」を知っているかを試しておる。
「リニアックだけが回る」という固定観念を捨てて、「寝台(ベッド)も回る」ことを押さえておくんじゃ。
なぜわざわざ面倒なことをして寝台を回すのか? それは、脳というデリケートな臓器を守りながら、がんだけを焼き尽くすためじゃ。
「脳=SRS=ノンコプラナ」。この3点セットは、放射線治療に携わるなら常識として持っておいてほしいのう。
臨床の“目”で読む

ノンコプラナ照射はガントリと寝台が複雑に動くため、「衝突」のリスクがあります。 しかし、現場ではこれを防ぐために安全対策をとっており、実際に事故が起きることはごく稀なんです。
- 計画段階での「衝突マップ」
- まず、治療計画装置でシミュレーションを行います。 「この角度に寝台を振ったら、ガントリとぶつからないか?」を計算し、危険な角度があれば、そのプランは採用しません。この時点で安全なルートしか選ばないようになっています。
- 実機での「ドライラン」
- 治療当日、患者さんを乗せる前に、あるいは照射前に、実際に機械を動かしてみる「リハーサル」を行います。 計画通りに動かしても本当にぶつからないか、目で見て確認をします。
- 最後の砦「衝突センサー」
- 万が一、ヒューマンエラーがあっても大丈夫なように、装置の先端には接触を感知する「タッチガード(インターロック)」が付いています。 何かに軽く触れた瞬間に、機械が自動で緊急停止する仕組みになっています。
このように、現場では「予測・確認・安全装置」で、高度な治療を安全に行っているのです。
今日のまとめ
- コプラナ = 輪切り(2次元)。寝台は回さない。
- ノンコプラナ = 集中砲火(3次元)。寝台を回す。
- 脳定位照射(SRS)で必須。正常脳への線量を分散・低減させる。



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