日本における、ある悪性腫瘍の病期別の生存率の図を示す。 この悪性腫瘍はどれか。

- 膵癌
- 乳癌
- 膠芽腫
- 小細胞肺癌
- 甲状腺未分化癌
出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)
2.乳癌
解説
✔ グラフの「青い線(Ⅰ期)」を見ろ!
この問題を解くために見るべきポイントはたった一つ。 一番上の「臨床病期Ⅰ期(青い線)」です。
- 0年(スタート):100%
- 5年後(ゴール):ほぼ100%(真横に近い!)
これは何を意味しているでしょうか? 「早期(ステージⅠ)で見つければ、5年以内にがんで死ぬことはほぼない」 ということです。 これほど予後が良い(治りやすい)がんは、選択肢の中で「乳がん」しかありません。
✔ 他の選択肢は「絶壁」のように落ちる
他の選択肢(1, 3, 4, 5)は、いずれも「難治性(タチが悪い)」がんで有名です。もしこれらのがんのグラフなら、青い線(Ⅰ期)ですら、もっと急激に右肩下がりになります。
- 1. 膵癌
- がんの王様(最凶)。ステージⅠで見つかっても、5年生存率は50%程度まで落ち込みます(もっと低いデータもあります)。
- 3. 膠芽腫(グリオブラストーマ)
- 脳腫瘍の中で最悪のもの。5年生存率は10%前後と言われます。Ⅰ期という概念自体が当てはまりにくいですが、グラフは急降下します。
- 4. 小細胞肺癌
- 進行が極めて速い。早期で見つかること自体が稀ですが、見つかっても予後は厳しく、グラフは急な下り坂になります。
- 5. 甲状腺未分化癌
- 進行スピードはがんの中でトップクラス。週単位で大きくなります。1年生存率すら極めて低く、グラフは「崖から落ちるように」ゼロに近づきます。
対して、今回のグラフは:
- Ⅰ期・Ⅱ期:ほぼ水平(生存率90〜100%)。
- Ⅲ期:少し下がるが、それでも高い(70〜80%)。
- Ⅳ期(緑):転移がある状態でも、5年後に半分近くの人が生きている。
この「なだらかなカーブ(長期生存が可能)」という特徴こそが、乳がんの性格そのものなのです。
出題者の“声”

この問題は、単なる数字の暗記ではなく、「がんのキャラクター」を知っているかを試しておる。
このグラフを見たとき、一番下の緑の線(Ⅳ期)に目が行きがちじゃ。Ⅳ期で生存率が急激に下がっているじゃないか?これは極めて凶暴な癌か?と思ったものはまんまと罠にはまっておる!
世の中には「見つかったら即、命に関わるがん(膵・未分化・小細胞)」と、「見つけて適切に治療すれば、天寿を全うできるがん(乳・前立腺・分化型甲状腺)」がある。 このグラフは、後者の典型例じゃ。
マンモグラフィで必死に見つけようとしている「早期乳がん」は、このグラフの「青い線(Ⅰ期)」なんじゃよ。 「ここ(Ⅰ期)で見つければ、患者さんは助かる」。 その事実を、この一本の線から読み取ってほしいんじゃ。
臨床の“目”で読む

このグラフは、我々放射線技師の仕事の意義を証明しています。
- 検診(マンモグラフィ)の重要性
- 青い線(Ⅰ期)と緑の線(Ⅳ期)を見てください。
- Ⅰ期ならほぼ100%助かる。
- Ⅳ期だと50%を切る。 この差を生むのが「検診」です。 我々が撮影するマンモグラフィで、石灰化や小さな腫瘤を見つけることが、患者さんを「青い線の人生」へと導くことになるのです。
- Ⅳ期でも「共存」できる時代
- 緑の線(Ⅳ期)が、すぐにはゼロにならず、なだらかに推移していることにも注目です。 乳がんは、たとえ骨や肺に転移(Ⅳ期)があっても、ホルモン療法や新しい分子標的薬、そして放射線治療(骨転移の緩和照射など)を組み合わせることで、長く生きられる病気になってきています。
- 骨シンチグラフィやPET検査に何度も来られる乳がんの患者さんが、元気にお話しされている姿を現場でよく見かけます。 それは、乳がんが「治す病気」から「共存できる慢性疾患」へと変わりつつあることを表しているのです。
今日のまとめ
- グラフの読み方:「Ⅰ期(青線)」の高さを見る!
- 水平に近い(〜100%) ➡ 予後が良いがん(乳がん、前立腺がんなど)。
- 急降下している ➡ 予後が悪いがん(膵がん、肺がん、膠芽腫など)。
- 乳がんは早期発見(Ⅰ期)すれば、ほぼ命に関わらない。
- Ⅳ期であっても、比較的長期生存が可能ながんである。



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