【第76回 午前 42】リニアック解体新書!○○が治療の命綱である理由

放射線治療技術学

リニアックの構造で正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. クライストロンは自励発振管である。
  2. モニタ線量計で線量率を監視することができる。
  3. 散乱箔の選択は電子線のエネルギーに依存しない。
  4. 平坦化フィルタの形状は X 線エネルギーに依存する。
  5. 加速電子ビームの取り出しには 90 度偏向方式が用いられる。

出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)


2.モニタ線量計で線量率を監視することができる。

4.平坦化フィルタの形状は X 線エネルギーに依存する。


解説

✔ モニタ線量計は「安全の最後の砦」

治療ビームが出る出口付近(ヘッドの中)には、モニタ線量計という監視役がいます。 このセンサーは、単に「合計で何MU出たか(積算線量)」を測るだけではありません。

  • 線量:予定の量が出たらビームを止める。
  • 線量率:ビームの強さが安定しているか監視する。
  • 平坦度・対称性:ビームが上下左右に偏っていないか監視する。

もし「線量率」が異常に高くなったり、ビームが右に偏ったりしたら、このモニタ線量計が即座に異常を検知して、インターロック(緊急停止)を作動させます。 つまり、「線量率の監視」も重要な任務の一つです。

✔ エネルギーが高いほど、山は尖る

平坦化フィルタ(フラットニングフィルタ)は、X線治療において「ビームの強度を均一にする(フラットにする)」ためのパーツです。

リニアックから発生した高エネルギーX線は、そのままでは「中心が強く、端っこが弱い(前方鋭利性)」という性質があります。 しかも、この「中心の強さ(山の尖り具合)」は、エネルギーが高くなればなるほど鋭くなります(10MVは4MVより尖っている)。

そのため、その尖りを削って平らにするためには、エネルギーごとに「山頂(中心部分)の厚み」を変えた専用のフィルタが必要です。

  • 4MV用 ➡ ちょっと厚いフィルタ
  • 10MV用 ➡ すごく分厚いフィルタ

このように、フィルタの形状はエネルギーに依存します。


✔ 各選択肢について

1.クライストロンは自励発振管である。

  • 誤り
  • マイクロ波を作る装置には2種類あります。
  • マグネトロン:自分でマイクロ波を作り出す(自励発振)。電子レンジと同じ原理。
  • クライストロン:微弱なマイクロ波を「増幅」する(増幅管)。ギターアンプのようなもの。 リニアックで使われる高出力のクライストロンは「増幅管」です。

3.散乱箔の選択は電子線のエネルギーに依存しない。

  • 誤り
  • 散乱箔(スキャッタリングフォイル)は、細い電子ビームを広げて均一にするための薄い金属板です。
  • 電子線のエネルギーが変われば、物質中での散乱のしやすさ(広がり方)も変わります。 したがって、エネルギーごとに最適な厚さや材質の散乱箔に切り替える必要があります(依存します)。

5.加速電子ビームの取り出しには 90 度偏向方式が用いられる。

  • 誤り
  • 電子ビームを曲げる際、単純に90度曲げると、エネルギーのばらつきによってビームが広がってしまいます(プリズムで光が分かれるのと同じ原理)。 これを防ぎ、ビームを一点に収束させる(色消し効果)ために、現代のリニアックでは「270度偏向」「スラローム型」といった複雑な軌道を描かせる磁石システムが採用されています。

出題者の“声”

この問題は、リニアックの「ビーム品質管理」に関わる重要パーツを知っているかを試しておる。

特に選択肢4のフラットニングフィルタ。 最近は「FFF(Flattening Filter Free)」という、あえてフィルタを使わない高線量率ビームも流行っておるが、基本を知らなければ応用は効かん。

「エネルギーが高いとビームが尖る。だから厚いフィルタがいる」。 この物理現象とハードウェアの関係を理解している技師は、ビームデータを見た時の理解度が段違いなんじゃよ。


臨床の“目”で読む

現場でのトラブル対応に、この知識がどう生きるか見てみましょう。

  • 「Dose Rate Interlock」が出たとき
    • 治療中に装置が止まり、画面に「Dose Rate High」と出たとします。 構造を知っている技師なら、「モニタ線量計がビームの不安定性を感知して止めてくれたのかな?」と分かります。 そして、「マグネトロンやAFC(周波数制御)の調子が悪いのかも?」と推測してエンジニアに連絡できます。
  • 電子線のエネルギー切り替え
    • 電子線治療で「6MeV」から「12MeV」に変えるとき、ヘッドの中でカシャカシャと音がします。 これは、カルーセル(回転台)が回って、最適な「散乱箔」を選んでいる音です。 構造が分かると、機械のなかで何が起こっているのか想像することができます。
  • クライストロンの交換費用
    • もしあなたの施設の装置が「クライストロン方式」だった場合、数年ごとの交換で数百万円〜一千万円近いコストがかかります。 「ただの増幅管なのに高いなぁ…」と思うかもしれませんが、これがないと高エネルギーX線は出せません。病院経営にも関わる重要パーツなんです。

今日のまとめ

  1. モニタ線量計:線量だけでなく、線量率対称性も監視する安全装置。
  2. 平坦化フィルタ:X線エネルギーが高いほど中心が厚い形状になる(依存する)。
  3. クライストロン増幅管。(マグネトロンは発振管)。
  4. 散乱箔:電子線のエネルギーに依存する(切り替えが必要)。
  5. 偏向磁石:90度ではなく、収束できる270度偏向が一般的。

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