【第76回 午前 44】CTとMRIの役割分担!治療計画システムの基礎知識

放射線治療技術学

放射線治療計画システムで正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 相対電子濃度は MR 像から計算される。
  2. 線量計算には複数のアルゴリズムが存在する。
  3. 計算マトリクスの間隔を大きくすると計算時間が増加する。
  4. 計算した線量分布は CT 像や MR 像上に重ねて表示される。
  5. DVH は標的体積やリスク臓器の線量と表面積の関係を示している。

出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)


2.線量計算には複数のアルゴリズムが存在する。

4.計算した線量分布は CT 像や MR 像上に重ねて表示される。


解説

✔ 各選択肢について

1.相対電子濃度は MR 像から計算される。

  • 誤り
  • 放射線が体の中でどれくらい吸収されるか(散乱・減弱するか)を計算するには、「電子密度(相対電子濃度)」の情報が必要です。
  • CT値(ハンスフィールド単位)は電子密度と比例関係にあるため、CT画像を使えば「ここは骨だから密度が高い」「ここは肺だから密度が低い」と計算機に教えることができます。 一方、MRIは「プロトン密度」「緩和時間」を画像化したもので、電子密度情報は直接持っていません。
  • ※最近はMRIから擬似CTを作る技術もありますが、国試的な基本は「電子密度=CT」です。

2.線量計算には複数のアルゴリズムが存在する。

  • 正解
  • ペンシルビーム法(PB):計算は速いが、肺などの不均質補正が苦手。
  • 重畳積分法(Convolution / Superposition):精度が良い標準的な手法。
  • モンテカルロ法:最も精度が高いが、計算時間がかかる。 治療計画装置にはこれらが複数搭載されており、症例や目的に応じて使い分けます。

3.計算マトリクスの間隔を大きくすると計算時間が増加する。

  • 誤り
  • マトリクス間隔(グリッドサイズ)とは、計算する「網の目の大きさ」です。
  • 間隔を大きくする(例:2mm ➡ 4mm):計算する点の数が減るので、計算時間は短縮されます(その分、分布は粗くなります)。
  • 間隔を小さくする(例:4mm ➡ 1mm):計算する点が爆発的に増えるので、計算時間は増加します。

4.計算した線量分布は CT 像や MR 像上に重ねて表示される。

  • 正解
  • これぞ治療計画の画面そのものです。 患者さんの輪切りの画像(CT/MRI)の上に、赤や青の等線量曲線(アイソドーズライン)やカラーウォッシュが表示され、「どこに強く当たっているか」を視覚的に評価します。

5.DVH は標的体積やリスク臓器の線量と表面積の関係を示している。

  • 誤り
  • DVHは Dose-Volume Histogram(線量体積ヒストグラム) の略です。
  • 関係を示しているのは「線量」と「体積(Volume)」です。「表面積」ではありません。
  • 「体積の何%に、どれくらいの線量が当たっているか」をグラフ化したものです。

出題者の“声”

この問題は、治療計画の「画面の中」で何が行われているかを知っているかを試しておる。

「CTを撮って、線量を計算する」。口で言うのは簡単じゃ。 しかし、なぜMRIじゃなくてCTなのか? 計算ボタンを押した後、PCが重くなるのはどんな設定の時か? それらを理解せずに、ただボタンを押すだけの技師になってはいかん。

「電子密度」と「グリッドサイズ」。この2つは計画精度のキモじゃから、しっかり押さえておくように。


臨床の“目”で読む

現場では、この「アルゴリズム」と「グリッド」の選択が重要となります。

  • 肺がんには「モンテカルロ」か「Acuros」
    • 通常の計算(ペンシルビームなど)だと、肺のような「スカスカの臓器(低密度)」の中で、放射線が思ったより遠くまで飛んでしまう現象(電子非平衡)を正しく計算できません。 その結果、「腫瘍にしっかり当たっているつもりだったのに、実は足りてなかった」ということになりかねません。 だから、肺がんのSBRT(定位照射)などでは、必ず精度の高いモンテカルロ法Acuros XBなどの高度なアルゴリズムを選択します。
  • 計算時間のジレンマ
    • 「じゃあ全部、一番細かい1mmグリッドで、モンテカルロ計算すればいいじゃん!」と思いますよね? でも、それをやると計算完了まで数十分〜数時間かかってしまい、業務が回りません。 「全脳照射のような単純なプランなら、3mmグリッドでペンシルビームで十分(数秒で終わる)」 「複雑なIMRTなら、2mmグリッドでSuperpositionを使う」 といった具合に、「必要な精度」と「業務効率」のバランスを見極めるのも、重要なスキルです。

今日のまとめ

  1. 相対電子濃度(密度情報)を得るために CT が必須。
  2. マトリクス間隔を大きく(粗く)すると、計算点は減り、時間は短縮される。
  3. 線量計算には、精度と速度が異なる複数のアルゴリズム(PB, Superposition, Monte Carloなど)がある。
  4. DVH の V は Volume(体積)

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