後腹膜臓器はどれか。
- 胃
- 回腸
- 空腸
- S状結腸
- 下行結腸
出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)
5.下行結腸
解説
✔ お腹の中での役割(動き)を考える
- 腹膜内臓器
- 役割:食べ物を消化したり、便を溜めたりするために、グネグネ動いたり膨らんだりする必要がある。
- 状態:腹膜という膜に包まれて、お腹の中でぶら下がっている(可動性がある)。
- 代表:胃、空腸、回腸、横行結腸、S状結腸、肝臓、胆嚢、脾臓、卵巣
- 後腹膜臓器
- 役割:血管や尿路、あるいは消化管の「土台」として、位置がズレてはいけない。
- 状態:背中側の壁にベタリと張り付いて固定されている(動かない)。
- 代表:十二指腸、膵臓、腎臓、上行結腸、下行結腸、大血管
✔ 大腸を「四角い枠」で考える
今回の問題のポイントは「大腸(結腸)」の分類です。 お腹の中をグルっと回る大腸を想像してください。
- 上行結腸(右側):お腹の右端を垂直に登る 「右の柱」 ➡ 壁に固定(後腹膜)
- 横行結腸(上側):右から左へ渡る 「橋」 ➡ 胃の下でぶら下がって動く (腹膜内)
- 下行結腸(左側):お腹の左端を垂直に降りる 「左の柱」 ➡ 壁に固定(後腹膜)
- S状結腸(左下):便を溜めるタンク。S字に曲がる 「遊び部分」 ➡ ぶら下がって動く (腹膜内)
つまり、大腸の「縦のライン(上行・下行)」は動かないように壁に固定されており、「横とS字」は動けるようになっているのです。 この構造のおかげで、私たちは走ってもジャンプしても、腸が捻れずにいられるのです。
✔ 各選択肢について
1.胃
- ❌ 誤り
- 食べ物が入ると大きく膨らむ必要があるため、固定されていません。(腹膜内)
2.回腸
- ❌ 誤り
- 小腸は消化吸収のために絶えず動き回る必要があります。(腹膜内)
3.空腸
- ❌ 誤り
- 同上。(腹膜内)
4.S状結腸
- ❌ 誤り
- 便を溜めて形を変えるため、可動性があります。(腹膜内)
5.下行結腸
- ✅ 正解
- お腹の左側を走る「固定された柱」です。これが後腹膜臓器です。
出題者の“声”

この問題は、「CT画像を見た時の違和感」に気づけるかどうかの基礎を試しておる。
腹部CTを見た時、小腸や横行結腸は人によって場所がバラバラじゃ。 しかし、腎臓や下行結腸は、誰でも必ず「背中側の決まった位置」にある。 なぜなら、後腹膜臓器として壁に固定されておるからじゃ。
「この臓器は動くのか、動かないのか」。 この感覚があれば、CTで臓器を同定するスピードが格段に上がるはずじゃよ。
臨床の“目”で読む

この知識は、患者さんの「痛みの訴え」を理解するのに役立ちます。
- 膵炎は「背中」が痛い
- 「お腹が痛い」と言わずに「背中が痛い!」と言って救急車で運ばれてくる患者さんがいます。 これは、膵臓や腎臓が後腹膜(背中側)にあるからです。 炎症が背中の神経を刺激するため、背部痛として現れるのです。 「背中が痛い? じゃあ整形外科かな?」と思わず、技師なら「いや、膵炎や尿管結石(後腹膜臓器)、もしかしたら大血管(大動脈解離)かも!」と疑って、CTの見るべき箇所を判断できます。
- FAST(外傷のエコー)
- 交通事故などで内臓破裂をした時、お腹の中に血が溜まります(腹腔内出血)。 しかし、腎臓などの後腹膜臓器が損傷した場合は、血がお腹の中(腹腔)ではなく、後腹膜腔という別のスペースに広がります。 「どこに血が溜まるか」が違うので、エコーやCTを見るポイントも変わってくるのです。
今日のまとめ
- 後腹膜臓器 = 「壁に張り付いて固定された臓器」。
- 腹膜内臓器 = 「膜に包まれてぶら下がっている(動く)臓器」。
- 大腸の縦ライン(上行・下行)は固定(後腹膜)、横とS字は動く(腹膜内)。


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