人体の方向で正しいのはどれか。
- 手掌は前面である。
- 足背は後面である。
- 上腕伸側は前面である。
- 大腿伸側は後面である。
- 前腕は上腕より近位にある。
出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)
1.手掌は前面である。
解説
✔ すべての基準は「解剖学的立位肢位」
解剖学において、「前・後・上・下」を決める絶対的なルールがあります。 それが「解剖学的立位肢位」です。
これは、ただ立っているだけではありません。重要なのは一点だけ。 「手のひら(手掌)を正面(前)に向けて立つ」 ことです。
普段、リラックスして立っている時、手のひらは「体側(内側)」を向いていますよね? しかし、解剖学では「手のひらを前に向けた状態」を基準とします。 したがって、「1.手掌は前面である」が正解となります。これだけは理屈抜きで覚える「定義」です。
✔ 「伸側」に注意!
「伸側(伸ばす側)」と「屈側(曲げる側)」は、腕と足で逆転するので注意が必要です。
- 上肢(腕)の場合
- 肘を曲げる筋肉(力こぶ=上腕二頭筋)は「前」にあります。 ➡ 屈側は「前」
- 肘を伸ばす筋肉(二の腕=上腕三頭筋)は「後ろ」にあります。 ➡ 伸側は「後ろ(後面)」
- 下肢(足)の場合
- 膝を曲げる時、足は後ろに行きますよね? ➡ 屈側は「後ろ(ハムストリングス)」
- 膝を伸ばす筋肉(大腿四頭筋)は「前」にあります。 ➡ 伸側は「前(前面)」
✔ 各選択肢について
2.足背は後面である。
- ❌ 誤り
- 足背とは「足の甲」のことです。立っている時、足の甲は「上」を向いています(強いて言えば前面側)。
- 後面(底)にあるのは「足底(足の裏)」です。
5.前腕は上腕より近位にある。
- ❌ 誤り
- 近位:心臓に近い方。
- 遠位:心臓から遠い方。
- 上腕の方が心臓に近く、前腕の方が遠いので、前腕は「遠位」です。
出題者の“声”

この問題の狙いは極めてシンプルじゃ。 君たちが方向用語を、なんとなくの「感覚」で使っているか、明確な「基準」で使っているか。
多くの者は、「手は体の横にあるもの」「背という字がつけば後ろ」といった日常感覚や漢字の雰囲気で答えようとする。 現場で飛び交う「近位・遠位」や「前面・後面」は、実務のための座標言語じゃ。
「解剖学的立位肢位」という絶対的な定規を脳内に持ち、頭の中に正しい人体の3Dモデルが構築できているか。 解剖を「覚えている」段階を卒業し、「使える」段階に達しているか。 それを、この基礎的な選択肢を通して厳しくジャッジしているんじゃよ。
臨床の“目”で読む

この知識は、CTやMRIで「MPR(多断面再構成)」を作る時に必須となります。
- コロナル(冠状断)を作る時のルール
- CTの輪切り画像(アキシャル)から、冠状断(コロナル)を作る時、 通常は「Back to Front(後ろから前へ)」という基準で画像を作成します。 この時、「どっちが前(Anterior)で、どっちが後ろ(Posterior)か」の定義が頭に入っていないと、「前後が反転した画像」を作ってしまうかもしれません。 特に手足の整形領域のMPRでは、この「解剖学的肢位」を基準に前後を決定するため、重要です。
- 「伸側」という言葉
- 正直、臨床現場の会話で「上腕の伸側が~」と言うことはあまりありません(私の職場では)。「上腕の後面」や「三頭筋側」と言うことが多いです。 しかし、カルテやリハビリの指示書には「伸展制限あり」といった記載がよく出てきます。
今日のまとめ
- 解剖学的立位肢位 = 「手のひらを前に向けて立つ」。
- だから、手掌は「前面」、親指は「外側」。
- 腕:曲がるのが前(屈側=前)、伸ばすのが後ろ(伸側=後)。
- 足:曲がるのが後ろ(屈側=後)、伸ばすのが前(伸側=前)。
- この「前後」の感覚がないと、正しいMPR画像は作れない!


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