横隔膜の大動脈裂孔を通るのはどれか。2つ選べ。
- 胸 管
- 食 道
- 奇静脈
- 下大静脈
- 迷走神経
出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)
1.胸 管
3.奇静脈
解説
✔ 横隔膜の「3つのトンネル」を整理せよ
横隔膜には、お腹と胸をつなぐための大きな穴(トンネル)が3つ空いています。
高さ(胸椎レベル)と通過物をセットで覚えるのが鉄則です。
- ① 大静脈孔(T8レベル:一番高い)
- 通過物:下大静脈
- 覚え方:一番右側にある。心臓に一番近いので高い位置にある。
- ② 食道裂孔(T10レベル:真ん中)
- 通過物:食道、迷走神経
- 覚え方:食道= T10(とう)。胃につながるために真ん中を通る。迷走神経は食道に巻き付いて一緒に通る。
- ③ 大動脈裂孔(T12レベル:一番低い)
- 通過物:下行大動脈、胸管、奇静脈
- 覚え方:背骨のすぐ前、一番深いところにある頑丈なトンネル。
✔ なぜ「奇静脈」と「胸管」なのか?
大動脈裂孔は、横隔膜の筋肉が動いても潰れないように、背骨(脊椎)と脚(横隔膜脚)で作られた「骨組みのトンネル」になっています。 ここは一番安全な場所なので、人体にとって超重要なライフラインが集中して通ります。
- 大動脈:血液を送るメインパイプ。
- 奇静脈:脊椎の横を走る、静脈のバイパス路。
- 胸管:下半身からのリンパ液を全部集めて運ぶ、極太のリンパ本幹。
この3本は、「背骨の前で、仲良く並んで走っている」とイメージしてください。
一方、迷走神経は脳から来て、胃や腸を支配するために降ります。食道は胃につながりますね? だから迷走神経は食道とペアで「食道裂孔」を通ります。
出題者の“声”

この問題は、「主要な動脈以外」に目を向けているかを試しておる。
「大動脈裂孔を通るのは大動脈!」 そんなことは誰でも答えられる。 知りたいのは、「その大動脈の背後や横に、何があるか知っていますか?」ということじゃ。
CT画像を見たとき、大動脈の脇に小さな丸い影がある。「リンパ節腫大か?」と慌てる前に、「いや、これは奇静脈だ」「これは胸管だ」と正常解剖として認識できるか。 その基礎力がないと、異常と正常の区別がつかないんじゃよ。
臨床の“目”で読む

この知識は、CT読影において「側副血行路」を見つけるために必須です。
- 下大静脈が詰まったら?
- もし、血栓や腫瘍で「下大静脈」が詰まってしまったら、下半身の血液はどうやって心臓に戻ればいいでしょうか? その時、迂回路として大活躍するのが「奇静脈」です。 普段は細くて目立たない奇静脈が、下大静脈の代わりをするためにパンパンに膨らみます。 大動脈裂孔のレベルで、大動脈の右後ろにある血管がやたら太くなっていたら、「あ、これは奇静脈が頑張っているんだな(IVC閉塞があるかも)」と推測できるのです。
- 「胸管」は見えますか?
- 胸管はリンパ液の通り道ですが、脂肪分を多く含むため、CTでは水と脂肪の中間くらいの濃度で見えます。 大動脈と奇静脈の間に挟まれるように存在しており、外傷などでここが傷つくと「乳び胸」という、胸の中にリンパ液が漏れ出す厄介な状態になります。 「ただの隙間」に見える場所にも、大切な管が通っていることを意識してください。
今日のまとめ
- T8:大静脈孔 ➡ 下大静脈
- T10:食道裂孔 ➡ 食道 + 迷走神経
- T12:大動脈裂孔 ➡ 大動脈 + 奇静脈 + 胸管


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