NEW!【第76回 午前 61】縦隔の境界線?CTを見る前に知っておきたい隙間の話

基礎医学大要

縦隔に存在する構造物はどれか。

  1. 甲状腺
  2. 大胸筋
  3. 上大静脈

出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)


5.上大静脈


解説

✔ 「縦隔」とは、左右の肺に挟まれた「隙間」のこと

まず、言葉の定義をはっきりさせましょう。 胸の中(胸郭)には、左右に大きな「肺」があります。 この「右の肺」と「左の肺」に挟まれた、中央のスペースのことを「縦隔」と呼びます。

✔ 縦隔の中身は?

縦隔には、生きるために重要な臓器がギチギチに詰まっています。

  • 循環器系:心臓、上大静脈、下大静脈、大動脈、肺動脈・肺静脈
  • 消化器系:食道
  • 呼吸器系:気管、気管支
  • 免疫・リンパ系:胸腺、胸管、リンパ節
  • 神経系:迷走神経、横隔神経、交感神経幹

✔ 各選択肢について

1.

  • 誤り
  • 腹腔
  • 横隔膜より下にあります。(※食道裂孔ヘルニアで縦隔に脱出することはありますが、正常解剖ではお腹です)

2.

  • 誤り
  • 胸腔(縦隔の両脇)
  • 前述の通り、縦隔を挟む「壁」の役割です。

3.甲状腺

  • 誤り
  • 頸部
  • 喉仏の下にあります。(※縦隔まで垂れ下がる「縦隔内甲状腺腫」という病気はありますが、正常位置は首です)

4.大胸筋

  • 誤り
  • 胸壁(胸の外側)
  • 肋骨の外側にある筋肉です。

出題者の“声”

この問題は、縦隔というものを「空間」として理解しているかを試しておる。

多くの者は「胸にある=縦隔」と安直に考えがちじゃ。 しかし、 縦隔とは場所の名前ではなく、「心臓や大血管といった特定の臓器が収まる空間」のこと。

なぜこれにこだわるかと言えば、これがCT読影力の基礎そのものだからじゃ。 「前縦隔腫瘍」「中縦隔リンパ節腫大」…臨床では当たり前に出てくるこれらの病変も、「その区画に本来何があるか」を知らなければ、異常に気づくことすらできん。

近年の国試は、単発の知識ではなく、こうした「画像解剖に応用できる空間的理解」を重視しておる。 「縦隔=どこ?」ではなく「縦隔=何が入る場所?」 この違いを答えられる技師であってほしいんじゃ。


臨床の“目”で読む

縦隔は、画像診断において「4つのエリア」に分けて考えます。これを知っていると、病気の予測がつきます。

  1. 上縦隔
    • 場所:心臓より上の部分。
    • あるもの:甲状腺の下端、大血管、気管。
    • 病気:甲状腺腫がここまで降りてくることがあります
  2. 前縦隔
    • 場所:心臓の前側(胸骨の裏)。
    • あるもの胸腺
    • 病気:ここにしこりがあったら、まず「胸腺腫」を疑います。
  3. 中縦隔
    • 場所:心臓そのものがある場所。
    • あるもの心臓、大血管、気管、リンパ節。
    • 病気悪性リンパ腫や、肺がんのリンパ節転移はここに出やすいです。
  4. 後縦隔
    • 場所:心臓の後ろ(背骨の前)。
    • あるもの:食道、大動脈、交感神経幹。
    • 病気:ここに腫瘍ができたら、神経原性腫瘍(神経のコブ)を疑います。

「縦隔のどこに病変があるか?」 これだけで、病名がある程度絞れるのです。 「縦隔にある=上大静脈や心臓の仲間」という感覚を、ぜひCT画像とリンクさせて覚えておいてください。


今日のまとめ

  1. 縦隔 = 左右の肺に挟まれた「真ん中の空間」
  2. そのものは縦隔には含まれない。
  3. 大胸筋は胸の壁(外側)、はお腹、甲状腺は首。
  4. 縦隔の中身は、心臓・大血管・食道・気管・胸腺など。

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