両耳側半盲の原因となるのはどれか。
- 白内障
- 緑内障
- 下垂体腺腫
- 重症筋無力症
- 甲状腺機能亢進症
出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)
3.下垂体腺腫
解説
✔ 「両耳側半盲」=「外側が見えない」
まず、この難しい漢字の意味をほぐしましょう。
- 両耳側(りょうじそく):両方の耳側、つまり「外側(こめかみ側)」のこと。
- 半盲(はんもう):視野の半分が見えなくなること。
つまり、「右目の右側と、左目の左側が、同時に見えなくなる(視野が狭くなる)」状態です。 まるで競走馬がつける「遮眼革(ブリンカー)」をつけたように、真ん中しか見えなくなります。
✔ 犯人は「交差点(視神経交叉)」の下にいる
なぜこんな器用な見えなくなり方をするのでしょうか? それは、目の神経の「配線ルール」に秘密があります。
- 「内側」の神経はクロスする
- 網膜の「鼻側(内側)」から出た神経は、視野の「耳側(外側)」の情報を見ています。 この神経は、脳へ向かう途中で、左右が入れ替わる「交差点(視神経交叉)」を通ります。 (※ここでX字に交差します)
- 交差点の真下に「下垂体」がある
- この重要な交差点の真下に、ちょこんとぶら下がっているのが「下垂体」です。
- 下から突き上げる!
- ここに腫瘍(下垂体腺腫)ができると、腫瘍は上へ上へと大きくなります。 すると、真上にある視神経交叉を下からググッと圧迫します。 ここで一番ダメージを受けるのが、ちょうど真ん中で交差していた「外側を見る神経(交叉線維)」なのです。
結果として、「外側を見る神経」だけがやられてしまい、「両耳側半盲」になります。
✔ 各選択肢について
1.白内障
- ❌ 誤り
- 水晶体が濁る病気。
- 全体的にかすんで見えます(霧視)。
2.緑内障
- ❌ 誤り
- 眼圧で視神経がやられる病気。
- 視野が欠けますが、典型的には「鼻側」から見えにくくなったり、ランダムな欠損になります。
4.重症筋無力症
- ❌ 誤り
- 筋肉が疲れやすくなる病気。
- 「まぶたが下がる(眼瞼下垂)」や「物が二重に見える(複視)」が起きますが、半盲にはなりません。
5.甲状腺機能亢進症
- ❌ 誤り
- 眼球が突出することはありますが、特有の視野欠損(半盲)は起きません。
出題者の“声”

この問題は、知識量ではなく「技師としての思考回路」を試しておる。ロジックは至ってシンプルじゃ。
- 「両耳側半盲」がある
- つまり「視交叉」がやられている
- そこを圧迫する代表疾患は?
- 「下垂体腺腫」だ
この「症状 ➡ 解剖 ➡ 疾患」のパスが繋がるか。「同名半盲」などの単語を丸暗記しても、この位置関係(解剖)が頭になければ意味がない。
「なぜ見えにくいのか」という理由(解剖)を知っている技師と、知らない技師では、撮る画像の質が全く違う。 医師のような診断学ではなく、「画像診断のプロ」としての基礎力を問うているんじゃよ。
臨床の“目”で読む

この知識は、脳MRI(特に下垂体検査)において極めて重要です。
- 「スノーマン(雪だるま)」サイン
- 下垂体腺腫が大きくなると、トルコ鞍という骨のくぼみから溢れ出し、くびれのある「雪だるま(Snowman)」のような形に見えることがあります。 この雪だるまの「頭」の部分が視神経交叉を持ち上げている画像を見た時、「あ、これは視野障害が出ているかも」と予測します。
- 安全管理の視点
- 両耳側半盲の患者さんは、「横から人が来ても気づかない」という特徴があります。 MRI室への誘導中や、検査台への移乗中、横から急に機材を出したりすると、患者さんは驚いたりぶつかったりしてしまいます。 「この患者さんは視野が狭いかもしれない」と想定し、必ず「真正面」から声をかけ、誘導する。 これが、この病態を知っている技師ならではの「優しさ」であり「安全管理」です。
今日のまとめ
- 両耳側半盲 = 両側の「外側(耳側)」が見えなくなる。
- 原因は、視神経交叉(交差点) の圧迫。
- その犯人は、交差点の真下にある「下垂体腺腫」。
- 「内側の神経(外を見る)」が交差部でやられるため、外が見えなくなる!


コメント