NEW!【第76回 午前 64】左右非対称の謎!リンパの不思議な分布とは?

基礎医学大要

リンパ系で正しいのはどれか。

  1. 胸管の起始部を脈絡叢という。
  2. リンパ管には血液が流入する。
  3. 胸管は右上半身のリンパ液を集める。
  4. リンパ系は心臓の拍動により流れる。
  5. 右下半身のリンパ液は左の静脈角に注ぐ。

出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)


5.右下半身のリンパ液は左の静脈角に注ぐ。


解説

✔ リンパの分布は超・不公平!

リンパ液が最終的に静脈へ戻るルートは、左右で全く広さが違います。ここが最大のポイントです。

  • ① 右リンパ本幹(右の静脈角へ)
    • 担当エリア:「右上半身」だけ。
    • (右の頭・首、右腕、右胸だけ)
    • 全体の約1/4しかありません。
  • 胸管(左の静脈角へ)
    • 担当エリア:「残り全部」。
    • (左上半身 + 両方の下半身全部 + お腹全部)
    • 全体の約3/4という広大なエリアを担当します。

今回の問題の選択肢 5. 右下半身のリンパ液 は、この広大な「胸管(②)」のエリアに含まれます。 胸管は、最終的に「左」の静脈角(鎖骨の下)に注ぎ込むため、「右」の足から来たリンパでも「左」へ戻るのです。


✔ 各選択肢について

1.胸管の起始部を脈絡叢という。

  • 誤り
  • 正しくは「乳糜槽(にゅうびそう)」です。お腹にあるリンパの溜まり場です。
  • 脈絡叢(みゃくらくそう)は、脳室にあって脳脊髄液を作る場所です。

2.リンパ管には血液が流入する。

  • 誤り
  • 流れるのは組織液(リンパ液)です。血液が逆流してきたら大惨事です。

3.胸管は右上半身のリンパ液を集める。

  • 誤り
  • 前述の通り、右上半身だけは「右リンパ本幹」という別ルートです。胸管は「それ以外全部」です。

4.リンパ系は心臓の拍動により流れる。

  • 誤り
  • リンパ管には心臓のような強力なポンプはありません。
  • 周り「筋肉の動き(筋ポンプ)」や「呼吸運動」、「リンパ管自体の収縮」によって、ゆっくりと押し流されます。だから、ずっと立っていると足がむくむ(リンパが戻らない)のです。

出題者の“声”

この問題は、君たちが「体の中の物流ルート」を把握しているか試しておる。

「右の足だから、右の静脈に戻るんだろう」 そんな単純な思考をしていると、臨床で必ず痛い目を見る。 人体において、リンパ系は「左側一極集中」という変わった構造をしておるんじゃ。

「足もお腹も左腕も、みんなまとめて『左の首(静脈角)』に集合する」。 この流れを知っていることは、がんの転移や、中心静脈カテーテルのリスク管理において必須の知識なんじゃよ。


臨床の“目”で読む

この「リンパの左右差」の知識は、がん診療において非常に有名なサインにつながります。

  • ウィルヒョウのリンパ節転移
    • 胃がんや膵臓がんの患者さんで、「左の鎖骨の上(首)」にクリッとした硬いしこりが触れることがあります。 「えっ? 胃がんはお腹なのに、なんで首?」と思いますよね。 これは、お腹のリンパ液が「胸管」を通って、最終的に「左の静脈角」に戻ってくるからです。 つまり、お腹のがん細胞がリンパ流に乗って、ゴール地点である左の首まで運ばれてきた証拠なのです。 「お腹のがんは左の首に出る」。この事実は、今回の解剖学(右下半身→左静脈角)を知らないと理解できません。
  • カテーテル挿入のリスク
    • 中心静脈カテーテルなどを首から入れる際、左側で行うと「胸管損傷」のリスクがあります。 太いリンパの本幹(胸管)を誤って傷つけると、胸の中にリンパ液が漏れ出す「乳び胸(にゅうびきょう)」という合併症になります。 右側には胸管がない(細い右リンパ本幹しかない)ため、左側に比べてそのリスクは低いです。 解剖学的な理由で、手技のリスクが変わる良い例です。

今日のまとめ

  1. リンパのゴールは左右で不公平!
  2. 右上半身リンパ本幹へ。
  3. それ以外全部(両下半身含む)胸管を通って静脈角へ。
  4. 始まりは乳糜槽(にゅうびそう)、ポンプは筋肉

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