リンパ系で正しいのはどれか。
- 胸管の起始部を脈絡叢という。
- リンパ管には血液が流入する。
- 胸管は右上半身のリンパ液を集める。
- リンパ系は心臓の拍動により流れる。
- 右下半身のリンパ液は左の静脈角に注ぐ。
出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)
5.右下半身のリンパ液は左の静脈角に注ぐ。
解説
✔ リンパの分布は超・不公平!
リンパ液が最終的に静脈へ戻るルートは、左右で全く広さが違います。ここが最大のポイントです。
- ① 右リンパ本幹(右の静脈角へ)
- 担当エリア:「右上半身」だけ。
- (右の頭・首、右腕、右胸だけ)
- 全体の約1/4しかありません。
- ②胸管(左の静脈角へ)
- 担当エリア:「残り全部」。
- (左上半身 + 両方の下半身全部 + お腹全部)
- 全体の約3/4という広大なエリアを担当します。
今回の問題の選択肢 5. 右下半身のリンパ液 は、この広大な「胸管(②)」のエリアに含まれます。 胸管は、最終的に「左」の静脈角(鎖骨の下)に注ぎ込むため、「右」の足から来たリンパでも「左」へ戻るのです。
✔ 各選択肢について
1.胸管の起始部を脈絡叢という。
- ❌ 誤り
- 正しくは「乳糜槽(にゅうびそう)」です。お腹にあるリンパの溜まり場です。
- 脈絡叢(みゃくらくそう)は、脳室にあって脳脊髄液を作る場所です。
2.リンパ管には血液が流入する。
- ❌ 誤り
- 流れるのは組織液(リンパ液)です。血液が逆流してきたら大惨事です。
3.胸管は右上半身のリンパ液を集める。
- ❌ 誤り
- 前述の通り、右上半身だけは「右リンパ本幹」という別ルートです。胸管は「それ以外全部」です。
4.リンパ系は心臓の拍動により流れる。
- ❌ 誤り
- リンパ管には心臓のような強力なポンプはありません。
- 周り「筋肉の動き(筋ポンプ)」や「呼吸運動」、「リンパ管自体の収縮」によって、ゆっくりと押し流されます。だから、ずっと立っていると足がむくむ(リンパが戻らない)のです。
出題者の“声”

この問題は、君たちが「体の中の物流ルート」を把握しているか試しておる。
「右の足だから、右の静脈に戻るんだろう」 そんな単純な思考をしていると、臨床で必ず痛い目を見る。 人体において、リンパ系は「左側一極集中」という変わった構造をしておるんじゃ。
「足もお腹も左腕も、みんなまとめて『左の首(静脈角)』に集合する」。 この流れを知っていることは、がんの転移や、中心静脈カテーテルのリスク管理において必須の知識なんじゃよ。
臨床の“目”で読む

この「リンパの左右差」の知識は、がん診療において非常に有名なサインにつながります。
- ウィルヒョウのリンパ節転移
- 胃がんや膵臓がんの患者さんで、「左の鎖骨の上(首)」にクリッとした硬いしこりが触れることがあります。 「えっ? 胃がんはお腹なのに、なんで首?」と思いますよね。 これは、お腹のリンパ液が「胸管」を通って、最終的に「左の静脈角」に戻ってくるからです。 つまり、お腹のがん細胞がリンパ流に乗って、ゴール地点である左の首まで運ばれてきた証拠なのです。 「お腹のがんは左の首に出る」。この事実は、今回の解剖学(右下半身→左静脈角)を知らないと理解できません。
- カテーテル挿入のリスク
- 中心静脈カテーテルなどを首から入れる際、左側で行うと「胸管損傷」のリスクがあります。 太いリンパの本幹(胸管)を誤って傷つけると、胸の中にリンパ液が漏れ出す「乳び胸(にゅうびきょう)」という合併症になります。 右側には胸管がない(細い右リンパ本幹しかない)ため、左側に比べてそのリスクは低いです。 解剖学的な理由で、手技のリスクが変わる良い例です。
今日のまとめ
- リンパのゴールは左右で不公平!
- 右上半身 ➡ 右リンパ本幹へ。
- それ以外全部(両下半身含む) ➡ 胸管を通って左静脈角へ。
- 始まりは乳糜槽(にゅうびそう)、ポンプは筋肉。


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