温熱療法で正しいのはどれか。
- 放射線治療期間中は毎日行う。
- 細胞周期のM期に効果が最も高い。
- がん組織の蛋白質の変性を目的とする。
- 腫瘍組織と比較して正常組織の温度は上がりやすい。
- 腫瘍部の温度を長時間39〜42℃に保つことにより効果を発揮させる。
出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)
3.がん組織の蛋白質の変性を目的とする。
解説
✔ 細胞を「ゆで卵」にして殺す(選択肢3)
温熱療法(ハイパーサーミア)の最大の目的は、熱による「蛋白質(タンパク質)の変性」です。
生卵を熱湯に入れると、白身が固まって二度と元の透明な液体には戻りませんよね? これが蛋白質の「不可逆的な変性」です。人間の細胞も蛋白質でできているため、高い熱を加えられると細胞内の酵素や構造が壊れ、細胞死(アポトーシスやネクローシス)を起こします。
✔ 腫瘍の血管は「ポンコツ」だから熱がこもる(選択肢4)
サウナに入っても私たちの体が煮えないのは、正常な血管が拡張して血流を増やし、血液がラジエーター(冷却水)の役割をして熱を逃がしてくれるからです。 しかし、がん細胞が急いで作った新生血管は、神経が通っていない「ポンコツ血管」なので、温度が上がっても血管を広げることができません。結果として血流が滞り、腫瘍組織にだけ熱がこもって温度が上がりやすくなります。 よって、選択肢4は「正常組織の温度は上がりにくい(腫瘍組織の方が上がりやすい)」が正解です。
✔ 各選択肢について
1.放射線治療期間中は毎日行う。
- ❌ 誤り
- 一度熱のダメージを受けると、細胞は「熱ショックタンパク質」というバリアを作り、一時的に熱に強くなります。これを熱耐性と呼びます。
- バリアが消えるまで待つ必要があるため、毎日は行えません。通常は週1〜2回(48〜72時間空けて)行います。
2.細胞周期のM期に効果が最も高い。
- ❌ 誤り
- 温熱療法が一番効くのは、細胞周期の「S期(DNA合成期)」です。
- 放射線は「M期」に効きやすく「S期」に効きにくいという弱点があります。温熱療法は、まさに放射線の弱点(S期)を補う最高のパートナーなのです。
5.腫瘍部の温度を長時間39〜42℃に保つことにより効果を発揮させる。
- ❌ 誤り
- 蛋白質の変性(細胞死)を起こすためには、もう少し高い温度が必要です。
- 目標とする温度は「42.5℃以上(通常 42〜43℃)」です。39℃ではお風呂と同じで、がん細胞は死にません。
出題者の“声”

この問題は、「なぜ放射線治療に温熱療法を組み合わせるのか?」という相乗効果を理解しているか試しておる。
放射線治療には、どうしても効きにくい「厄介な細胞」が2種類いる。 一つは「S期の細胞」。もう一つは、血流が悪くて酸素が足りない「低酸素細胞」じゃ。
熱はS期の細胞に効きやすいし、低酸素細胞(=血流が悪い=熱を逃がせない)は、周囲よりガンガン温度が上がって自滅していく。 放射線で倒せない敵を、熱が裏から仕留める。 ただ「熱で温める」と暗記するのではなく、この「弱点補完のメカニズム」を知ってほしくて、この選択肢を作ったんじゃ。
臨床の“目”で読む

現場において、温熱療法は「患者さんへの説明」が非常に重要な治療です。
- 「なぜ毎日やってくれないの?」
- 放射線治療は毎日通うのに、ハイパーサーミアは週に1〜2回しかスケジュールに入っていません。患者さんに「がん細胞は賢くて、一度熱を加えるとバリア(熱耐性)を張って熱に強くなってしまうんです。そのバリアが解けるのを待ってからもう一度叩くために、あえて数日お休みしています」 このように説明できれば、患者さんも納得して前向きに治療に取り組むことができます。
知識は、患者さんの不安を取り除くための最高の武器になります。
今日のまとめ
- 温熱療法は熱による「蛋白質の変性」でがんを殺す。
- 腫瘍は血管がポンコツなので、血流で熱を逃がせず温度が上がりやすい。
- 熱耐性ができるため、毎日はやらない(週1〜2回)。
- 放射線が苦手な「S期」と「低酸素細胞」にめちゃくちゃ効く!
- 細胞を死滅させる目標温度は 42.5℃以上!



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