放射線による細胞障害からの回復で正しいのはどれか。
- PLD回復は組織の高酸素時に生じる。
- がん細胞では観察されない現象である。
- 低LET放射線ではPLD回復がほとんど見られない。
- 低LET放射線では高LET放射線よりSLD回復が生じやすい。
- SLD回復は低線量の分割照射と比較すると高線量の単回照射で生じやすい。
出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)
4.低LET放射線では高LET放射線よりSLD回復が生じやすい。
解説
✔ 2つの「回復」を日本語で理解しよう
- SLD回復(亜致死損傷の回復)
- 意味:「致死(死ぬ)」の「亜(一歩手前)」。つまり「死なない程度のかすり傷」です。
- 特徴:数時間お休みすれば、細胞が自力でDNAの傷(一本鎖切断など)を治せます。
- PLD回復(潜在的致死損傷の回復)
- 特徴:栄養不足や低酸素など、「細胞が分裂できない(お休みせざるを得ない)悪い環境」に置かれると、分裂がストップしている間にじっくり傷を治すことができます。
- 意味:「潜在的」=そのまま放っておいて細胞分裂に進むと死んでしまう「時限爆弾のような傷」です。
✔ LET(線エネルギー付与)とは「武器のデカさ」
- 低LET放射線(X線、γ線など)
- いわば「マシンガン」。細かくパラパラと当たるので、DNAの片側だけが切れる「一本鎖切断(かすり傷)」が多くなります。➡ 回復しやすい!
- 高LET放射線(α線、重粒子線など)
- いわば「大砲」。当たった場所にすさまじいエネルギーを落とすので、DNAが両方バツンと切れる「二重鎖切断(致命傷)」になります。➡ 回復できない!
これを踏まえて正解を見ると、「低LET放射線(X線)の方が、高LET放射線(重粒子線)よりもかすり傷(SLD)が治りやすい」という 4番 が正しい記述になります。
✔ 各選択肢について
1.PLD回復は組織の高酸素時に生じる。
- ❌ 誤り
- PLD回復が生じるのは、細胞がお休みモードに入る「低酸素状態」や「低栄養状態」など、環境が悪い時です。(高酸素状態は細胞が元気で分裂してしまうため、傷が固定されて死んでしまいます)
2.がん細胞では観察されない現象である。
- ❌ 誤り
- 正常細胞もがん細胞も、どちらも回復現象は起きます。ただし、「正常細胞の方ががん細胞よりもSLD回復力が高い」ため、これを利用してがんを追い詰めるのが放射線治療です。
3.低LET放射線ではPLD回復がほとんど見られない。
- ❌ 誤り
- 低LET放射線(X線)は「かすり傷」が多いので、SLD回復もPLD回復もよく見られます。回復がほとんど見られないのは「高LET放射線(一撃必殺だから)」の方です。
5.SLD回復は低線量の分割照射と比較すると高線量の単回照射で生じやすい。
- ❌ 誤り
- 1回でドカンと大線量を当てると、回復する暇もなく死んでしまいます。SLD回復は、「分割照射(数時間〜翌日まで間隔を空ける)」の間に生じる現象です。
出題者の“声”

この問題は、「なぜ放射線治療をわざわざ毎日分割して行うのか」、そして「なぜ重粒子線治療が最先端で注目されているのか」を理解しているか試しておる。
X線治療を毎日少しずつ(分割して)行う最大の理由は、正常組織に「SLD回復」をさせるためじゃ。数時間から1日空ければ、正常細胞はかすり傷を治してケロリとする。これを繰り返してがんとのダメージ差を広げていく。
一方で、最新の「重粒子線治療(高LET)」は一撃必殺の大砲じゃ。回復(SLDもPLDも)を許さないから、X線が効きにくいガン細胞でも粉砕できる。 LETと回復の関係は、治療のメカニズムそのものなんじゃよ。
臨床の“目”で読む

現場では、この「回復」の知識がスケジュール管理の意味に直結します。
- 「なぜ1日2回照射(多分割照射)は、6時間以上空けるのか?」
- 肺がんなどの治療で、1日に2回放射線を当てるスケジュールを組むことがあります。この時、1回目と2回目の間隔は6時間以上(できれば8時間)空けるというルールがあります。 なぜなら、細胞がSLD(かすり傷)を回復するのに必要な時間が「約6時間」だからです。
「午後ならいつでもいいですよ」ではなく、「午前中の照射から最低6時間は空けて予約を入れなければならない」。 このルールは、今日の知識である「SLD回復」を知らなければ、ただの面倒な制約にしか見えません。理論を知ることで、意味のある行動に変わるのです。
今日のまとめ
- SLD回復 = お休みすれば治る「かすり傷」の回復。分割照射の根拠!
- PLD回復 = 低酸素や低栄養など「環境が悪い時」に、じっくり治す回復。
- 低LET(X線) = かすり傷が多い ➡ 回復しやすい。
- 高LET(重粒子線) = 致命傷が多い ➡ 回復しにくい(一撃必殺!)。



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