内部被ばくによる発がんの可能性が低いのはどれか。
- ウラン鉱山で働いていた鉱夫が肺癌になる。
- 小児がんに対し胸部に放射線治療を施行された女性が乳癌になる。
- 甲状腺癌の肺転移に対しNa131Iを投与された男性が膀胱癌になる。
- 時計の文字盤にラジウムを含む夜光塗料を塗っていた作業員が骨腫瘍になる。
- チョルノービリ(チェルノブイリ)原子力発電所事故当時近隣に住んでいた小児が甲状腺癌になる。
出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)
2.小児がんに対し胸部に放射線治療を施行された女性が乳癌になる。
解説
✔ 「外部被ばく」と「内部被ばく」の違い
この問題の最大のポイントは、「原因となった放射線がどこから出ているか」を見極めることです。
- 外部被ばく:体の「外」にある線源から放射線を浴びること。(例:X線撮影、リニアックによる放射線治療、宇宙線)
- 内部被ばく:放射性物質(RI)を、呼吸や食事などで体の「中」に取り込み、体内から放射線を浴び続けること。
選択肢2の「小児がんに対する胸部の放射線治療」は、リニアックなどの装置を使って体の「外」からX線や電子線を当てる治療です。したがって、これは「外部被ばく」による二次発がんの事例です。
✔ 各選択肢について
他の4つの選択肢は、すべて放射性物質を体内に取り込んだことによる「内部被ばく」の超・有名事例です。なぜその臓器ががんになったのか、理由をセットで覚えましょう。
1.ウラン鉱山で働いていた鉱夫が肺癌になる。
- ウランが崩壊すると「ラドン(Rn)」という放射性のガスが発生します。
- 換気の悪い鉱山内でこれを吸い込み、肺の中でアルファ線を出し続けた結果、肺がんが多発しました。
3.甲状腺癌の肺転移に対しNa131Iを投与された男性が膀胱癌になる。
- I-131(ヨウ素131)は、カプセルを飲んで(経口摂取)治療する、まさに内部被ばく療法(内用療法)です。
- 体内で使われなかったI-131は尿として排泄されますが、膀胱に尿が溜まっている間、膀胱の壁が放射線(ベータ線やガンマ線)を浴び続けるため、膀胱がんのリスクが上がります。
4.時計の文字盤にラジウムを含む夜光塗料を塗っていた作業員が骨腫瘍になる。
- 1920年代、筆を舐めながらラジウム塗料を塗っていた女性作業員たち(ラジウム・ガールズ)の悲劇です。
- ラジウム(Ra)はカルシウムと性質が似ているため、体に取り込まれると「骨」に集まる(骨親和性)という最悪の特徴があります。そこでアルファ線を出し続け、骨肉腫を引き起こしました。
5.チョルノービリ(チェルノブイリ)原子力発電所事故当時近隣に住んでいた小児が甲状腺癌になる。
- 原発事故で放出されたI-131が牧草を汚染し、それを食べた牛のミルクを子供たちが飲んで(経口摂取)しまいました。
- ヨウ素は「甲状腺」に集まってホルモンの材料になる性質があるため、成長期で細胞分裂が活発な子供の甲状腺が内部被ばくし、甲状腺がんが多発しました。
出題者の“声”

この問題は、「放射線防護の歴史」と「物質の体内動態」を紐付けて理解しているか試しておる。
「内部被ばく」の恐ろしいところは、一度体内に取り込まれると、その物質の化学的性質に従って特定の臓器(標的臓器)に集まり、至近距離から被ばくさせ続ける点じゃ。 ラジウムは骨へ。ヨウ素は甲状腺へ。 これは単なる暗記ではなく、「なぜそこに集まるのか?」「どうやって取り込んだのか(吸入か経口か)?」というプロセスを知っておく必要がある。
そして、我々が日常的に行っている「放射線治療」が外部被ばくであると即座に見抜けるか。 歴史の悲劇を教訓として学び、現代の医療安全に繋げられる技師になってほしいというメッセージじゃよ。
臨床の“目”で読む

現場の技師として、この知識をどう活かすか? 特に「選択肢3(I-131による膀胱の内部被ばく)」は、臨床で私たちが直接介入できるポイントです。
- RI内用療法の患者さんへの指導
- 甲状腺がんの治療でI-131(アイソトープ)の大量投与を受けた患者さんは、専用の病室(特別措置病室)に入ります。 この時、患者さんの体から出る排泄物(尿)は強い放射能を持っています。 膀胱がんなどの二次発がんを防ぐ(膀胱の被ばくを減らす)ために、私たち医療従事者は患者さんに次のような指導を行います。
- 「お水やお茶をたくさん飲んでくださいね」(尿量を増やして濃度を薄める)
- 「おしっこは我慢せず、こまめにトイレに行って出してくださいね」(膀胱に放射能が滞在する時間を短くする)
- 甲状腺がんの治療でI-131(アイソトープ)の大量投与を受けた患者さんは、専用の病室(特別措置病室)に入ります。 この時、患者さんの体から出る排泄物(尿)は強い放射能を持っています。 膀胱がんなどの二次発がんを防ぐ(膀胱の被ばくを減らす)ために、私たち医療従事者は患者さんに次のような指導を行います。
「内部被ばくのメカニズム」を知っているからこそ、患者さんの未来を守るための適切なアドバイスができるのです。
今日のまとめ
- 外部被ばく = 体の外から浴びる(X線撮影、リニアックなど)。
- 内部被ばく = 吸い込む、食べる、注射するなどして体内から浴びる。
- ウラン鉱夫(ラドン) ➡ 吸入して肺がん。
- ラジウム(Ra) ➡ カルシウムに似ているので骨に集まり、骨腫瘍。
- ヨウ素131(I-131) ➡ 甲状腺に集まる。尿から出るので膀胱も被ばくする。


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