安定な原子核で質量数とおよそ比例関係にあるのはどれか。
- 体 積
- 半 径
- 密 度
- 中性子過剰数
- 核子結合エネルギー
出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)
1.体 積
解説
✔ 原子核を「ビー玉の塊」としてイメージする
まず、言葉の定義を確認します。
- 「質量数(A)」とは、原子核の中にある陽子と中性子(合わせて核子と呼びます)の合計の数のことです。
- 陽子も中性子も、大きさと重さはほぼ同じです。つまり質量数とは「同じ大きさのビー玉が何個集まっているか」を表す数字です。
- これを踏まえて、それぞれの選択肢を見ていきましょう。
✔ 各選択肢について
1.体 積
- ✅ 正解
- ビー玉が1個のとき、体積が「1」だとします。
- ビー玉が10個(質量数10)になれば、全体の体積は「10」になります。
- ビー玉が100個(質量数100)になれば、全体の体積は「100」になります。
- つまり、「質量数(個数)が増えれば、それに比例して体積も増える」。
2.半 径
- ❌ 誤り
- 球の体積は「V = 4/3 × π r3(半径の3乗に比例)」という公式があります。
- 体積が質量数(A)に比例するということは、「半径の3乗が、質量数に比例する」ということです。
- これを半径(r)について解くと、半径は質量数に比例するのではなく、「質量数の3乗根(1/3乗)に比例する」が正解になります。
3.密 度
- ❌ 誤り
- 密度とは「ギュウギュウ詰め具合(質量 ÷ 体積)」のことです。
- 原子核は、質量数(個数)が10倍になれば、重さ(質量)も10倍になり、場所をとる広さ(体積)も10倍になります。
- つまり、原子核の密度は、質量数に関わらず「常に一定」なのです。どの原子核も同じギュウギュウ具合です。
4.中性子過剰数
- ❌ 誤り
- 軽い原子核では陽子と中性子の数はほぼ同じ(過剰数0)ですが、重い原子(質量数が大きい原子)になるほど、陽子同士の反発力を抑えるために中性子の割合が不規則に増えていきます。比例関係ではありません。
5.核子結合エネルギー
- ❌ 誤り
- 原子核をバラバラにするのに必要なエネルギーのことです。全体の結合エネルギーは質量数にある程度比例して増えますが、完全に比例するわけではありません(鉄付近で最も効率よく結合し、その後は効率が落ちていくカーブを描きます)。厳密な「比例関係」としては体積が最も適切です。
出題者の“声”

この問題は、物理を「数式」だけで捉えているか、「現象」として捉えているかを試しておる。
「原子核の半径 R = r0 × A1/3」という公式を丸暗記している学生は多い。 しかし、「なぜ3乗根なのか?」と聞くと答えられない。
「原子核は核子がギュッと集まった一定密度の球体だから、体積が個数(質量数)に比例する。だから逆算すると半径は3乗根になる」 この「体積が比例するから、半径は3乗根になる」という論理の順番を理解しているか。
「密度は一定」「体積は比例」「半径は3乗根」。 この3点セットは、放射線物理の基本ルールなんじゃよ。
臨床の“目”で読む

「原子核のサイズや密度なんて、臨床に関係あるの?」 と思うかもしれませんが、実は「重粒子線治療」や「中性子捕捉療法(BNCT)」といった最先端の放射線治療において、この概念は超重要です。
放射線(中性子や炭素イオンなど)を患者さんの体内の「がん細胞」に当てる時、放射線が的(ターゲットとなる原子核)に当たる確率を計算しなければなりません。この確率を「断面積(クロスセクション)」と呼びます。 的(原子核)の体積や半径がどう変化するかという物理モデルが頭に入っていないと、なぜその深さで放射線が止まるのか(ブラッグピーク)、なぜその確率で反応が起きるのかが理解できません。
物理の基本モデルは、最先端の治療計画装置(TPS)の計算アルゴリズムの土台として、今も現場で活きています。
今日のまとめ
- 体積 ➡ ビー玉の数(質量数)に「比例」する!
- 半径 ➡ 質量数の「3乗根(1/3乗)」に比例する!
- 密度 ➡ どの原子核もギュウギュウ具合は同じ。つまり「常に一定」!



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