運動エネルギーが 1 GeV の 12C 原子核を 1 nA のビーム強度で 30 秒間流した。12C 原子核によって運ばれた総エネルギー [J] に最も近いのはどれか。
- 1
- 2
- 5
- 10
- 30
出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)
3.5
解説
✔ Step 1:全部でどれくらいの電気が流れた?(総電荷量)
「アンペア(A)」とは、1秒間に流れる電気量(クーロン:C)のことです。 今回は「1 nA(ナノアンペア)」です。「ナノ」は「10のマイナス9乗」ですね。
- 1秒間に流れる電気:1 × 10-9 [C] これを 30秒間 流したので、
- 全体の電気量 = 30 × 10-9 [C]
✔ Step 2:炭素原子核1個の電気量は?
炭素(C)の「原子番号」は6です。つまり、陽子が6個あります(原子核なのでマイナスの電子はありません)。
陽子1個の電気量は「e(電気素量)」なので、炭素原子核1個の電気量は「6e」になります。
※問題文にある「12(質量数)」は重さの話なので、今回は完全にダミー(引掛け)です!
✔ Step 3:炭素原子核は全部で何個?
全体の電気量を、1個の電気量で割れば「個数」が出ます。
- 個数 = (30 × 10-9) ÷ 6e ※まだ e に数字は入れず、このまま放置します!
✔ Step 4:1個あたりのエネルギーをジュール(J)に直す
問題文より、1個のエネルギーは「1 GeV(ギガエレクトロンボルト)」です。「ギガ」は「109」ですね。
- 1個のエネルギー = 109 eV ここで超重要ルール。「1 eV」のエネルギーをジュールに直すと「e ジュール」になります。(※電気素量 e にそのまま J をつけるだけ!)
- 1個のエネルギー = 109 × e [J]
✔ Step 5:合体!
最後に、「1個のエネルギー」と「個数」を掛け算して、総エネルギーを出します。
- 総エネルギー = (109 × e) × {(30 × 10-9) ÷ 6e}
- 分母と分子にある 「e」 が消えます。
- 「109」と「10-9」が打ち消し合って 「1」 になって消えます。
残った数字は……
- 30 ÷ 6 = 5 [J]
見事に余計な数字がすべて消え去り、「5」だけが残りました。よって正解は 3番 です。
出題者の“声”

この問題は、一見すると計算地獄に見えるが、実は「物理的センス」を問うている非常に美しいパズルなんじゃ。
「12C」と書かれているのを見て、「おっ、12を使うんだな!」と飛びついた者はアウトじゃ。電気の計算に必要なのは質量数(12)ではなく、陽子の数(原子番号:6)じゃからな。
そして、「e = 1.6×10-19」を馬鹿正直に代入して計算ミスをする者も多い。
「eV」という単位の成り立ちを知っていれば、途中の計算式で「e」が綺麗に約分されて消えることに気づくはずじゃ。 「物理は公式の暗記ではない。単位の意味を知っていれば計算は勝手にシンプルになる」。そんな出題者からのメッセージじゃよ。
臨床の“目”で読む

-1 GeV(ギガ・エレクトロンボルト)の炭素イオン -
実はこれ、臨床現場で行われている「重粒子線治療(炭素線治療)」のリアルな設定値なのです。
がん治療において、体の深いところ(深さ約20cm以上)にある腫瘍に「ブラッグピーク(ダメージの頂点)」を届かせるためには、炭素原子核を光の速さの約70%(エネルギーにして約1 GeV近辺)まで加速させる必要があります。
また、答えの「5 J」というエネルギー。 1ジュールは「100グラムのリンゴを1メートル持ち上げるエネルギー」です。5ジュールはリンゴ数個分。 これだけ巨大な加速器を使って、体の中に撃ち込まれる総エネルギーは、物理的な力としては「リンゴ数個を持ち上げる程度」しかありません。 しかし、それが「細胞のDNA」という極小の世界に局所的に集中して落とされるため、がん細胞を一撃で破壊する凄まじい致死効果(高LET)を生むのです。
数字の意味を知ると、重粒子線治療の凄さがより実感できますね。
今日のまとめ
- アンペア(A) = 1秒あたりの電気量(C)。全体の電気量は「A × 秒」。
- 炭素の電気量 = 原子番号が6だから、電気量は「6e」
- eVからJへの変換 = 「eV」の「e」をそのまま電気素量(e)として掛け算すれば「J」になる。



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