二極管の電圧と電流の関係を図に示す。
この二極管を 1 kΩ の抵抗に直列に接続して 80 V の電圧を加えたとき流れる電流[mA]はどれか。

- 20
- 30
- 40
- 50
- 60
出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)
2.30
解説
✔ ステップ1:二極管は「オームの法則」が通じない!
普通の抵抗なら、電圧を2倍にすれば電流も2倍になります(直線のグラフになります)。 しかし、問題のグラフを見ると「曲線」になっていますね。つまり、電圧によって抵抗値がコロコロ変わるため、「V = R × I」の計算で答えを出すことができません。
そこで使うのが、「負荷線(ロードライン)」というテクニックです。
✔ ステップ2:回路全体のルールを式にする
回路全体のルール(キルヒホッフの第2法則)を考えます。 電源から「80 V」の電圧をかけました。この 80 V は、「二極管にかかる電圧(V)」と「抵抗にかかる電圧」に分けられます。
- 80 = 二極管の電圧(V) + 抵抗の電圧
抵抗の電圧は、オームの法則で「抵抗(1 kΩ) × 電流(I)」ですね。 ここで単位に注意です。電流の単位は [mA](1000分の1アンペア)なので、1 kΩ(1000 Ω)と掛け算すると、綺麗に打ち消し合います。 (1000 × I/1000 = I) つまり、抵抗にかかる電圧は、そのまま「 I 」になります。先ほどの式に当てはめると、とってもシンプルな式が完成します。
- 80 = V + I
✔ ステップ3:グラフに「直線」を引く魔法!
「80 = V + I」という式を、問題のグラフに直線として書き込みます。この直線を「負荷線(ロードライン)」と呼びます。 直線の引き方は簡単。両端の2点を結ぶだけです。
- 電流 I が 0 のとき、電圧 V はいくつ?
- 80 = V + 0 なので、V = 80 です。 グラフの横軸(電圧)が 80 のところに点(80, 0)を打ちます。
- 電圧 V が 0 のとき、電流 I はいくつ?
- 80 = 0 + I なので、I = 80 です。 グラフの縦軸(電流)が 80 のところに点(0, 80)を打ちます。
そして、この「横軸の80」と「縦軸の80」の2点を、定規で結んで直線を引いてください。
✔ ステップ4:交点が「答え」になる!
グラフに元から描いてある「二極管の曲線」と、今引いた「直線の負荷線」。 この2つの線が交わったポイント(動作点)こそが、この回路に実際に流れる電流と電圧です!
- 電圧(横軸) = 50 V
- 電流(縦軸) = 30 mA
出題者の“声”

この問題は、「非線形素子の扱い方(ロードライン)」を知っているかを試しておる。
「計算で解けないならどうするんだ!?」とパニックになった者は、まだまだ演習不足じゃ。 二極管やトランジスタのような素子は、計算ではなく「素子の性質(曲線)」と「回路の条件(直線)」をグラフ上でぶつけて、その交点(動作点)を探るのが電気工学の定石なんじゃ。
「80 = V + I」という関係に気づき、縦軸の80と横軸の80を結ぶ線を一本引く。 たったこれだけの作業で、あんなに難しそうだった問題が一瞬で解ける。この「謎解き」のような物理の面白さを味わってほしいんじゃよ。
臨床の“目”で読む

ー 二極管のグラフなんて、医療現場で使うの? ー
実はこれ、私たちの最も身近にある「X線管」の性質そのものなのです。
X線管(熱陰極X線管)も、フィラメント(陰極)とターゲット(陽極)の2つの電極からなる「二極管」の一種です。 X線管にかける電圧(管電圧)と、流れる電流(管電流)の関係は、まさにこのグラフのような非線形(空間電荷制限領域など)になります。
私たちが撮影コンソールで「管電圧 80 kV、管電流 300 mA」と設定してボタンを押したとき、装置の内部では、このグラフのような「X線管の特性曲線」と「インバータ回路の出力特性(負荷線)」がピタリと交わる点(動作点)を探り当て、安定したX線を出力してくれているのです。
ブラックボックスに見える撮影装置も、中身はこの基礎的な電気工学のルールの積み重ねで動いています。
今日のまとめ
- 二極管はオームの法則(比例計算)が使えない!
- 計算できないなら「グラフに直線を引く(負荷線)」
- 直線の引き方:横軸の電源電圧(80 V)と、縦軸の最大電流(80 mA)を結ぶだけ!
- 曲線と直線の「交点」が、実際に流れる電流と電圧になる!



コメント