JIS で規定する透視用 X 線装置の基本性能で正しいのはどれか。
- 圧迫筒の圧迫の強さは 20 N を超えてはならない。
- 150 kg の負荷質量で正常に動作しなければならない。
- 通常透視の最大空気カーマ率は 50 mGy/min である。
- 装置が 3 秒以上発する騒音は 50 dB を超えてはいけない。
- 透視用積算タイマは透視時間が 10 分を超えた時点で警告音を発しなければならない。
出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)
3.通常透視の最大空気カーマ率は 50 mGy/min である。
解説
✔ 透視は「放射線皮膚障害」との戦い
X線透視(胃のバリウム検査やカテーテル治療など)は、静止画のレントゲンと違って、何分間もX線を出し続けます。 もし、制限なく強いX線を出し続けたらどうなるでしょうか? 患者さんの背中の皮膚が、放射線で赤くなったり(皮膚紅斑)、重度の場合だと潰瘍ができたりしてしまいます(放射線皮膚障害)。
これを防ぐために、JIS規格では「普通の透視モードなら、これ以上強くしちゃダメ!」という上限を決めています。 それが「50 mGy/min」です。 (※正しくは、基準点における空気カーマ率)
✔ 各選択肢について
1.圧迫筒の圧迫の強さは 20 N を超えてはならない。
- ❌ 誤り
- 胃の検査などで、お腹をグッと押す「圧迫筒」。 20N(約2kgの力)では弱すぎて、まともに圧迫できません。
- JIS規格(通則)では、圧迫筒の強さは「80 N(ニュートン)以下」と規定されています。 (※個別規格では100Nとされることもありますが、いずれにせよ20Nは低すぎます)
2.150 kg の負荷質量で正常に動作しなければならない。
- ❌ 誤り
- 寝台(テーブル)がどれくらいの体重まで耐えられるかという規定です。 JIS Z 4703では、透視台について以下のように定めています。
- 常に動作しなければならない質量:最低 100 kg
- 安全に支持(保持)できなければならない質量:135 kg 以上
3.通常透視の最大空気カーマ率は 50 mGy/min である。
- ✅ 正解
- 「通常透視」では 50 mGy/min を超えてはいけません。
- 太った患者さんや厚い部位を見るために、一時的に出力を上げる「高線量率透視」という機能もありますが、その場合でも上限は 125 mGy/min までと決められています。
- さらに、この高線量率モードを使っている間は、「連続した警告音」を鳴らし続け、術者に「今、強い線量が出ていますよ!」と知らせることが義務付けられています。
4.装置が 3 秒以上発する騒音は 50 dB を超えてはいけない。
- ❌ 誤り
- JIS規格では、操作室や装置の騒音は(3秒以上の持続で)「65 dB 以下」と規定されています(60 dB 以下が望ましいとされています)。
5.透視用積算タイマは透視時間が 10 分を超えた時点で警告音を発しなければならない。
- ❌ 誤り
- 透視時間の積算タイマーは、「一定時間(通常は5分)」経過した時点で警告音を発することとされています。
- 「10分」ではありません。 これは患者さんと操作者の線量管理が目的であり、音で「長く出しすぎてない?」と注意喚起してくれます。
出題者の“声”

この問題は、数字の正確な記憶を試すとともに、「JIS規格が何を守ろうとしているか(目的)」を問うておる。
例えば選択肢5のタイマー。 JIS Z 4703の目的は「患者・操作者の線量管理」じゃ。だからこそ、10分という長い時間ではなく、「5分」という短いスパンで警告を鳴らすことが重要なんじゃ。
そして正解の「50 mGy/min」。 これは「1分間に50mGy」じゃぞ。もし通常透視で20分検査したら 1000mGy(1Gy)。皮膚紅斑のしきい値(2Gy)が見えてくる線量じゃ。 もしこれが「高線量率(125 mGy/min)」なら、わずか8分で1Gyに達する。 だからこそ、高線量率の時は「ずっと音が鳴る(連続音)」という、うるさいくらいの警告が必要なんじゃよ。
臨床の“目”で読む

現場に出ると、この問題に出てくる機能に毎日助けられることになります。
- 「5分タイマー」は現場のBGM
- 消化管造影検査や、整形外科の手術室(Cアーム)、心カテ室などでは、透視時間が長くなりがちです。 検査中に「ピピピピピ!」と音が鳴ったら、それは「5分経ちましたよ」の合図です。 この音が鳴るたびに、「あ、被ばくが増えてるな」と我に返るスイッチになっているのです。
- 「50 mGy/min」の壁
- 最近の装置は賢いので、被写体が分厚くてX線が通りにくいと、自動的に出力を上げようとします(ABC制御)。 しかし、いくら明るくしたくても、通常モードなら50 mGy/minという天井で止まります。JIS規格は、現場の暴走を防ぐ「見えないガードレール」なんです。
今日のまとめ
- 通常透視の線量率上限は「50 mGy/min」(高線量率は 125 mGy/min + 連続音)。
- 透視積算タイマーは「5 分」で警告音が鳴る(線量管理目的)。
- 寝台の動作保証は「100 kg」、安全支持は「135 kg」。
- 圧迫筒の力は「80 N」以下。
- 騒音レベルは「65 dB」以下。



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