腹部造影CTのMIP像を示す。矢印で示すのはどれか。

- 腎動脈
- 脾動脈
- 腹腔動脈
- 総腸骨動脈
- 上腸間膜動脈
出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)
5.上腸間膜動脈
解説
✔ 画像の種類(MIP像)を把握する
提示されている画像は、造影CTの「MIP(最大値投影:ミップ)像」です。
これは、造影剤で白く染まった血管だけを抽出して、レントゲン写真のように透かして重ね合わせた画像です。血管の全体的な走行を見るのに非常に適しています。
✔ 腹部大動脈の「前」から出る3本の主要血管
お腹の真ん中をドカンと縦に走っている一番太い血管が「腹部大動脈」です。 この大動脈の「前面(お腹側)」から、腸などの消化管を栄養するために、上から順番に「3つの大きな枝」が出ています。
- 腹腔動脈(一番上から出て、すぐに肝・胃・脾の3方向に分かれる)
- 上腸間膜動脈(SMA)(腹腔動脈のすぐ下から出て、足側に向かって下行する)
- 下腸間膜動脈(IMA)(ずっと下の方から出て、下に向かう)
✔ 矢印の血管を特定する
オレンジ色の矢印が指している血管は、腹部大動脈から出て「足側(下)に向かってスッと伸びて」いますね。 また、左右の腎臓に向かって横に伸びている血管(腎動脈)と、ほぼ同じ高さから起始して、腎動脈の前をクロスするように下へ向かっています。
この「大動脈の前から出て、下に向かって長く伸びる」という走行の特徴は、まさに上腸間膜動脈(SMA)です。
✔ 各選択肢について
1.腎動脈
- ❌ 誤り
- 大動脈の「側面」から、左右の腎臓に向かって「横」に伸びる血管です。画像でも、矢印の血管の後ろ側から左右の腎臓(ソラマメ型の白い臓器)に向かって伸びているのが分かります。
2.脾動脈
- ❌ 誤り
- 腹腔動脈から枝分かれし、左側にある脾臓に向かって「蛇行しながら(クネクネと)」伸びる血管です。
3.腹腔動脈
- ❌ 誤り
- 矢印の血管(上腸間膜動脈)のすぐ「上」から出る血管です。
4.総腸骨動脈
- ❌ 誤り
- 腹部大動脈が一番下(へその下あたり)で「左右に二又に分かれた後」の血管です。
出題者の“声”

この問題は、血管を「平面的」に暗記しているか、「立体的」に理解しているかを試しておる。
MIP像は血管が重なって見えるため、一見すると「どれがどこから出ているか」分かりにくい。 しかし、「腎動脈は横に出る」「上腸間膜動脈は前下方に下りる」という立体的な走行を知っていれば、重なっていても惑わされることはない。 だからあえてMIP像で出題したのじゃ。
教科書の解剖図(イラスト)だけでなく、実際のCT画像で3次元的な位置関係を把握する訓練をしておくのじゃぞ。
臨床の“目”で読む

上腸間膜動脈(SMA)は、小腸全体と大腸の右半分という広大なエリアに血液を送る、お腹の中でトップクラスに重要な血管です。
救急外来で、高齢者が「突然の激しい腹痛」を訴えて運ばれてきたとします。 この時、医師や放射線技師は造影CTでSMA塞栓症がないか確認します。心臓などでできた血栓(血の塊)が飛んできて、このSMAに詰まってしまうと、広範囲の腸が血液不足になり、あっという間に壊死して命に関わります。
CTを撮影した直後、SMAの根元で造影剤が途絶えていることを発見できれば、すぐに緊急手術やカテーテル治療に進むことができます。 この血管を見つけ出す目は、臨床現場ではごくごく当たり前のスキルなのです。
今日のまとめ
- 腹部大動脈の前面から出る血管(上から順に)
- 腹腔動脈
- 上腸間膜動脈(SMA)
- 下腸間膜動脈(IMA)
- 上腸間膜動脈(SMA)の特徴:腎動脈と同じくらいの高さから出て、足側(下)に向かってスッと伸びる!
- 腎動脈:大動脈の側面から、左右に横に伸びる。
- 総腸骨動脈:大動脈の末端で、左右に二又に分かれる。



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