放射性同位元素等規制法で許可された廃棄業者によって廃棄される放射性汚染物で不燃物に該当するのはどれか。
- 注射針
- ポリバイアル
- HEPA フィルタ
- チャコールフィルタ
- プラスチックチューブ
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
1.注射針
解説
✔ なぜ放射性廃棄物を「燃える/燃えない」で分けるのか?
放射性同位元素(RI)を扱う施設(主に核医学部門)から出る汚染物は、法律に基づき厳重に管理された後、許可を受けた専門の廃棄業者によって処理されます。 その処理方法は、廃棄物の性質によって異なり、可燃物は焼却して体積を大幅に減らし、不燃物は圧縮・固化して埋設処分されます。 このため、廃棄物を出す施設側(病院)が、あらかじめ「可燃物」と「不燃物」に正しく分別しておくことが、法律で義務付けられています。
✔ 可燃物と不燃物の分類
分類の基本は、その物品が何でできているかを考えることです。
- 不燃物 🗑️: 燃えないもの。主に金属とガラス。
- 例: 注射針、ピンセット、金属トレイ、ガラスバイアル、試験管
- 可燃物 🔥: 燃えるもの。主にプラスチック、紙、布、有機物。
- 例: ポリバイアル、プラスチックチューブ、ゴム手袋、シリンジ(注射筒)、ろ紙、HEPAフィルタ、チャコールフィルタ
✔ 各選択肢について
1. 注射針
- ✅ 正解
- 注射針は金属(ステンレス鋼)でできているため、不燃物に分類されます。
2.ポリバイアル
- ❌ 誤り
- 「ポリ」はポリエチレンなどのプラスチックを意味します。プラスチック製のため可燃物です。
3.HEPA フィルタ
- ❌ 誤り
- HEPAフィルタのろ材は主にガラス繊維ですが、枠や構造材は可燃性のものが多く、全体として可燃物として処理されます。
4.チャコールフィルタ
- ❌ 誤り
- チャコール(活性炭)は炭素が主成分であり、可燃物です。
5.プラスチックチューブ
- ❌ 誤り
- プラスチック製のため可燃物です。
出題者の“声”

この問題は、核医学の現場における、極めて実践的な知識を確認しておる。高度な物理学ではない。「ゴミの分別」という、安全管理の基本中の基本じゃ。
ワナは、物品の名前に惑わされて、その「材質」を考えないことじゃ。
「HEPAフィルタ」と聞くと、何か特殊な装置のように思えるかもしれんが、結局は紙や繊維でできた「燃えるもの」じゃ。
この問題は、突き詰めれば「この中で、金属かガラスでできているものはどれか?」と問うておるのと同じこと。
そう考えれば、注射針が答えであることは一目瞭然じゃろう。 現場の安全は、こうした地道で正確な作業の積み重ねによって守られておるのじゃ。
臨床の“目”で読む

この「可燃/不燃」の分別は、現場で働く放射線技師の日常業務そのものです。
ー核医学のホットラボにてー
PET検査で使うFDGや、SPECT検査で使うテクネシウムなどを扱うRI室(ホットラボ)には、必ず放射性廃棄物専用の廃棄箱が設置されています。そして、それは「可燃物用」「不燃物用」と明確にラベル分けされています。
例えば、RIの投与準備を終えた後、
- 使った注射針 → 先端を安全に処理し、不燃物の廃棄箱へ
- 注射筒(シリンジ)やプラスチックチューブ → 可燃物の廃棄箱へ
- 薬剤が入っていたガラスバイアル → 不燃物の廃棄箱へ
- 汚染された紙やガーゼ → 可燃物の廃棄箱へ
といった具合に、一つひとつの廃棄物を、その材質に応じて瞬時に判断し、正しく分別することが求められます。
ーなぜ重要なのか?ー
この分別を誤ると、廃棄業者が処理を行う際に、焼却炉を傷めたり、不適切な処理に繋がったりする可能性があります。また、廃棄物の記録管理とも連動しており、不正確な分別は法的な問題にもなりかねません。 この一見単純な作業は、RIを安全に取り扱うための、放射線技師の重要な責務の一つなのです。
今日のまとめ
- 放射性汚染物は、最終的な処理方法が異なるため、発生段階で「可燃物」と「不燃物」に分別することが法律で定められている。
- 注射針は金属製のため不燃物に該当する。ポリバイアルやフィルタ類は可燃物である。
- 分別の基本は材質で判断すること。不燃物は主に金属・ガラス類、可燃物は主にプラスチック・紙・有機物。
- この分別作業は、核医学の臨床現場における、日常的かつ重要な安全管理業務である。
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