PETで正しいのはどれか。
- エミッションスキャンは放射性医薬品の投与前に行う。
- ノーマライズスキャンは減弱補正のためのデータ収集である。
- トランスミッションスキャンは各検出器の感度のばらつきを補正する。
- クロスキャリブレーションによって放射能濃度値からPET値(cps/pixel)に変換する。
- SUVの算出にはPET装置とドーズキャリブレータとのクロスキャリブレーションが必要である。
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
5. SUVの算出にはPET装置とドーズキャリブレータとのクロスキャリブレーションが必要である。
解説
✔ PET画像の定量性とは?
PETでは、体内で放出された511 keVの陽電子消滅γ線を検出し、放射能分布を画像化します。
このとき得られるデータはカウント値(cps/pixel)ですが、これを実際の放射能濃度(Bq/cc)として使うには、PET装置とドーズキャリブレーター間のクロスキャリブレーションが必要です。
✔ SUV(Standardized Uptake Value)とは?
SUVは、PET画像中の放射能濃度を患者の体重や投与放射能量で標準化した値で、臨床では腫瘍活性や治療効果の評価に使われます。
正確なSUVを算出するには:
- PET画像から正確なBq/ccを取得
- ドーズキャリブレーターで測定した投与量(Bq)を反映
- 体重や体表面積などの生体情報を使用
これらの整合性を保つには、両機器のクロスキャリブレーションが不可欠です。
✔ 各選択肢について
1. エミッションスキャンは放射性医薬品の投与前に行う。
- ❌ 誤り
- エミッションスキャンは投与後に体内放射能を測定する。
- 投与前はトランスミッションスキャンやキャリブレーション。
2.ノーマライズスキャンは減弱補正のためのデータ収集である。
- ❌ 誤り
- ノーマライズスキャンは検出器ごとの感度差補正を目的とし、減弱補正ではない。
3.トランスミッションスキャンは各検出器の感度のばらつきを補正する。
- ❌ 誤り
- トランスミッションスキャンは減弱マップ(attenuation map)の作成用。
- 感度補正はノーマライズスキャンで行う。
4.クロスキャリブレーションによって放射能濃度値からPET値(cps/pixel)に変換する。
- ❌ 誤り
- 実際は逆で、PETのカウント値(cps/pixel)を放射能濃度(Bq/cc)に変換するためにクロスキャリブレーションを行う。
5.SUVの算出にはPET装置とドーズキャリブレータとのクロスキャリブレーションが必要である。
- ✅ 正解
- PET装置のカウントと、ドーズキャリブレーターで測定した投与放射能量にズレがないよう調整する必要がある。
出題者の“声”

この問題では、PETのキャリブレーション工程や定量評価の仕組みがちゃんと理解できておるかを見たかったのじゃ。
とくにSUVという指標の“成り立ち”を理解しているかがポイントじゃ。
「画像が明るい=取り込みが多い」という感覚だけで診断しておるようでは、臨床の説得力に欠けるのう。
見かけの画像だけでなく、カウント値(cps/pixel)→放射能濃度(Bq/cc)→SUVという、数値の裏側にある変換プロセスに目を向けてほしかったのじゃ。
あと、「ノーマライズ」「トランスミッション」など、キャリブレーション関連の言葉は似ていて紛らわしい。だからこそ、出題者としては狙いやすいところなのじゃ。
それぞれの「目的」と「タイミング」をはっきり整理しておく必要があるのじゃぞ!
臨床の“目”で読む

SUVは、PET画像を「数字で比較できる」ようにするための非常に重要な指標です。
腫瘍の活動性評価、治療効果判定、経過観察など、定量性が必要な場面では欠かせません。
そのSUVの出発点になるのが、PET装置のカウント値(cps/pixel)。
これを放射能濃度(Bq/cc)に換算するために必要なのがクロスキャリブレーションです。
もしこれを怠ると、数値は出ていても信頼できない=意味のないSUVになります。
さらに、注射した放射性医薬品の正確な放射能量(Bq)を測るドーズキャリブレーターも、PET画像と一致するよう調整(クロスキャリブレーション)しておく必要があります。
臨床で“数値”を扱う以上、その根拠がしっかりしているかを確認できる放射線技師でありたいですね。
キーワード
- エミッションスキャン(Emission Scan)
- トランスミッションスキャン(Transmission Scan)
- ノーマライズスキャン(Normalization Scan)
- クロスキャリブレーション(PET⇔ドーズキャリブレーター)
- SUV(Standardized Uptake Value)
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