肝受容体シンチグラフィの血中滞在率指標を示す式はどれか。
ただし、心臓部の時間放射能曲線の3分と15分のカウントをそれぞれ H3, H15、肝臓部の時間放射能曲線の15分のカウントを L15 とする。
- H3/H15
- H15/H3
- H3/(H3 + H15)
- H15/(H15 + L15)
- L15/(H15 + L15)
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
2.H15 / H3
解説
✔ 肝受容体シンチグラフィとは?
¹²³I–GSA や ⁹⁹ᵐTc–GSA(GSA:ガラクトース標識アルブミン)などのトレーサーを用いて、肝細胞の表面に存在するアスパラギン酸受容体(ASGPR)の働きを評価する検査です。
投与されたトレーサーは血液を介して肝臓へ運ばれ、受容体に結合・取り込まれていきます。
その過程を心臓部と肝臓部の放射能カウントの推移から定量的に評価するのが本検査のポイントです。
✔ 血中滞在率指数(HH15)とは?
- HH15=H15 / H3
- H3:投与直後(3分)の心臓部カウント → 初期の血中濃度
- H15:15分後の心臓部カウント → 残存しているトレーサーの量
- この比が高い=肝に取り込まれず血中に残っている=肝機能低下と判断されます。
- 逆に、比が小さいほど早く肝に取り込まれ、血中から消える=肝機能が良好と評価されます。
✔ 肝摂取率指標(LHL15)との違い
- LHL15=L15 / (H15+L15)
- 15分時点で肝臓に取り込まれた割合を示す指標です。
- 値が高いほど肝への取り込みが良好=受容体機能が高いことを意味します。
✔ 各選択肢について
1. H3/H15
- ❌ 誤り
2.H15/H3
- ✅ 正解
- 血中滞在率指数(HH15)
3.H3/(H3 + H15)
- ❌ 誤り
4.H15/(H15 + L15)
- ❌ 誤り
5.L15/(H15 + L15)
- ❌ 誤り
- 肝摂取率指数(LHL15)
出題者の“声”

この問題では、肝受容体シンチグラフィにおける指標の定義式を、きちんと理解しておるかどうかを見ておるのじゃ。
肝機能を評価するには、トレーサーが“血液中に残っているか” それとも “肝臓に取り込まれたか”を定量的に見極めねばならん。
そのために使われるのが、この2つの指標じゃ:
- 血中滞在率指数(HH15)=H15 / H3
- 肝摂取率指数(LHL15)=L15 / (H15 + L15)
じゃが、この式の意味と違いがあいまいな者は、わしの罠にまんまと引っかかるのじゃよ。
覚えておいてほしいのは、小難しい数式をただ丸暗記するのではなく、
『3分後に入ったトレーサーが、15分後に“どれだけ血中に残っているか” “どれだけ肝に取り込まれたか”』というシンプルな“動きのイメージ”で理解することなんじゃ。
「なぜこの式が肝機能を表すのか?」──そこを筋道立てて説明できるようになっておれば、もうこの問題には迷わんぞい!
臨床の“目”で読む

肝受容体シンチグラフィは、肝細胞が持つ受容体機能、つまりトレーサーを取り込む力そのものを可視化できる、非常にユニークな検査です。
肝機能が低下すると、トレーサーは肝臓に取り込まれにくくなり、そのぶん血中に長くとどまるようになります。すると、HH15は上昇し、LHL15は低下するというパターンが現れてきます。これらの変化は、肝障害の進行を反映した典型的な所見です。
特にこの指標は、肝移植の適応評価や、肝切除術前の残肝機能評価など、「数値で信頼できる肝機能の判断」が求められる場面で非常に有用です。
単に測定して数値を出すだけでなく、「この数字が何を意味しているのか」「この患者の肝臓が今どんな状態にあるのか」を読み取れる――そうした視点が、放射線技師には求められます。
キーワード
- ⁹⁹ᵐTc–GSA シンチグラフィ
- HH15(血中滞在率指数)
- LHL15(肝摂取率指数)
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