第77回 午前 18

核医学診療技術学

肝受容体シンチグラフィの血中滞在率指標を示す式はどれか。
ただし、心臓部の時間放射能曲線の3分と15分のカウントをそれぞれ H3, H15、肝臓部の時間放射能曲線の15分のカウントを L15 とする。

  1. H3/H15
  2. H15/H3
  3. H3/(H3 + H15)
  4. H15/(H15 + L15)
  5. L15/(H15 + L15)

出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)


2.H15 / H3


解説

✔ 肝受容体シンチグラフィとは?

¹²³I–GSA や ⁹⁹ᵐTc–GSA(GSA:ガラクトース標識アルブミン)などのトレーサーを用いて、肝細胞の表面に存在するアスパラギン酸受容体(ASGPR)の働きを評価する検査です。
投与されたトレーサーは血液を介して肝臓へ運ばれ、受容体に結合・取り込まれていきます。
その過程を
心臓部と肝臓部の放射能カウントの推移から定量的に評価
するのが本検査のポイントです。

✔ 血中滞在率指数(HH15)とは?

  • HH15H15 / H3
  • H3:投与直後(3分)の心臓部カウント → 初期の血中濃度
  • H15:15分後の心臓部カウント → 残存しているトレーサーの量
  • この比が高い=肝に取り込まれず血中に残っている=肝機能低下と判断されます。
  • 逆に、比が小さいほど早く肝に取り込まれ、血中から消える=肝機能が良好と評価されます。

✔ 肝摂取率指標(LHL15)との違い

  • LHL15L15 / (H15+L15)
  • 15分時点で肝臓に取り込まれた割合を示す指標です。
  • 値が高いほど肝への取り込みが良好=受容体機能が高いことを意味します。

✔ 各選択肢について

1. H3/H15

  • 誤り

2.H15/H3

  • 正解
  • 血中滞在率指数(HH15)

3.H3/(H3 + H15)

  • 誤り

4.H15/(H15 + L15)

  • 誤り

5.L15/(H15 + L15)

  • 誤り
  • 肝摂取率指数(LHL15)

出題者の“声”

この問題では、肝受容体シンチグラフィにおける指標の定義式を、きちんと理解しておるかどうかを見ておるのじゃ。

肝機能を評価するには、トレーサーが“血液中に残っているか” それとも “肝臓に取り込まれたか”を定量的に見極めねばならん。

そのために使われるのが、この2つの指標じゃ:

  • 血中滞在率指数(HH15)=H15 / H3
  • 肝摂取率指数(LHL15)=L15 / (H15 + L15)

じゃが、この式の意味と違いがあいまいな者は、わしの罠にまんまと引っかかるのじゃよ。

覚えておいてほしいのは、小難しい数式をただ丸暗記するのではなく、
3分後に入ったトレーサーが、15分後に“どれだけ血中に残っているか” “どれだけ肝に取り込まれたか”
というシンプルな“動きのイメージ”で理解することなんじゃ。

「なぜこの式が肝機能を表すのか?」──そこを筋道立てて説明できるようになっておれば、もうこの問題には迷わんぞい!


臨床の“目”で読む

肝受容体シンチグラフィは、肝細胞が持つ受容体機能、つまりトレーサーを取り込む力そのものを可視化できる、非常にユニークな検査です。

肝機能が低下すると、トレーサーは肝臓に取り込まれにくくなり、そのぶん血中に長くとどまるようになります。すると、HH15は上昇し、LHL15は低下するというパターンが現れてきます。これらの変化は、肝障害の進行を反映した典型的な所見です。

特にこの指標は、肝移植の適応評価や、肝切除術前の残肝機能評価など、「数値で信頼できる肝機能の判断」が求められる場面で非常に有用です。

単に測定して数値を出すだけでなく、「この数字が何を意味しているのか」「この患者の肝臓が今どんな状態にあるのか」を読み取れる――そうした視点が、放射線技師には求められます。


キーワード

  • ⁹⁹ᵐTc–GSA シンチグラフィ
  • HH15(血中滞在率指数)
  • LHL15(肝摂取率指数)

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