MRI と関連事項の組合せで正しいのはどれか。
- 拡散強調像 ― TOF法
- 脂肪抑制法 ― b値
- 非造影灌流MRI ― ASL〈arterial spin labeling〉
- MR hydrography ― BOLD効果
- functional MRI ― 化学シフト
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
3.非造影灌流MRI ― ASL〈arterial spin labeling〉
解説
✔ 各撮像法と関連用語の組合せの正誤は?
1. 拡散強調像 ─ TOF法
- ❌ 誤り
- TOF(Time-of-Flight)は、血流の流入効果を利用して血管を描出するMRA(MR血管撮影)の撮像法です。
- 一方、拡散強調像(DWI)は、水分子の拡散運動(ブラウン運動)を捉える撮像法であり、TOFとは原理も目的も異なります。
- TOF :流れてきた血液だけが新鮮なスピンとして明るく写るため、血管がくっきり見える撮像法です。
2.脂肪抑制法 ─ b値
- ❌ 誤り
- b値は、拡散強調画像(DWI)で使われる拡散感度を表すパラメータであり、脂肪抑制とは無関係です。
- 脂肪抑制には、STIR(反転回復法)やSPIR、Dixon法などが用いられます。
- b 値 :水分子の動きにどれだけ敏感にするかを決める値で、b値が高いほど、拡散のある組織の信号が低下します。
3.非造影灌流MRI ─ ASL
- ✅ 正解
- ASL(Arterial Spin Labeling)は、RFパルスで動脈血を“スピンラベル”して、造影剤を使わずに脳灌流(CBF)を測定できる非造影灌流MRIです。
4.MR hydrography ─ BOLD効果
- ❌ 誤り
- MR hydrography(例:MRCP)は、T2強調画像で水分の信号を強調し、胆道や尿路などの液体構造を描出する技術です。
- 一方、BOLD効果は、血中酸素濃度の変化を利用して脳の活動領域を可視化するfMRIの原理です。
- BOLD効果:脳が活動すると酸素化血流が増え、脱酸素ヘモグロビンが減ることでT2★信号が上昇し、活動部位が画像化されます。
5.functional MRI ─ 化学シフト
- ❌ 誤り
- functional MRI(fMRI)**は、BOLD効果を利用して脳活動に伴う血流変化を画像化する技術です。
- 化学シフトは、水と脂肪の共鳴周波数のわずかな差によって信号がズレる現象であり、MRSやDixon法で用いられます。fMRIとは関係ありません。
- 化学シフト:脂肪と水の信号が少しズレる性質を使って、脂肪と水の分離や物質分析を行う原理です。
出題者の“声”

この問題は、MRIの各撮像法が何を評価し、どんな原理を使っているかをわかっておるかどうかを試しておるのじゃ。
ASLを知らずに「灌流=血流=造影剤」と思い込んでおる者は、まんまとひっかかるのう。
「非造影で灌流」というキーワードを見たら、ASL(動脈スピン標識法)を即答できるようになっておかねばならんのじゃ。
MRIは、名前だけ覚えても意味がない。それぞれの原理や評価指標が、どのように画像として現れるかを理解して整理することが大切なのじゃぞい。
臨床の“目”で読む

ASLって、造影剤を使いにくい患者さん――たとえば小児や腎機能が低下している方――には本当に重宝します。造影剤なしで脳の血流を評価できるので、リスクを避けつつ、ルーチン検査にも組み込みやすい便利な技術なんです。
実際、認知症やTIA(一過性脳虚血発作)の精査では、ASLはよく使われます。
最近では、3D ASLや高分解能タイプも登場していて、臨床応用の幅もかなり広がってきています。
ASLの何が良いかって、やっぱり「静脈穿刺なしで完結」できるところですね。
DWI+ASLを撮れば、急性期脳梗塞の「拡散-灌流ミスマッチ」も評価できて、検査時間は10分強。安全・非侵襲・短時間という、三拍子そろった優れた検査法です。
キーワード
- ASL(Arterial Spin Labeling)
- 非造影灌流MRI
- b値(拡散強調像)
- BOLD効果(fMRI)
- 化学シフト(MRS)
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