核医学治療で使われる核種で物理的半減期が最も短いのはどれか。
- ⁸⁹Sr
- ⁹⁰Y
- ¹³¹I
- ¹⁷⁷Lu
- ²²³Ra
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
2.⁹⁰Y
解説
✔ 物理的半減期とは?
- 放射性核種がその放射能を半分に減らすのにかかる時間のこと。
- 治療用核種では、放射線の種類(α、β⁻、γ)とともに半減期の長さも治療計画や安全管理に関わる重要な要素です。
✔ 各選択肢について
1. ⁸⁹Sr
- ❌ 誤り
- 半減期:約50.5日
- 主な放射線:β⁻
- 用途:骨転移疼痛緩和
2.⁹⁰Y
- ✅ 正解
- 半減期:約2.67日(64.1時間)→核医学治療で用いられる核種の中では、最も半減期が短い代表格。
- 主な放射線:β⁻
- 用途:放射線内用療法(SIR-Spheres、レジンビーズなど)
3.¹³¹I
- ❌ 誤り
- 半減期:約8.02日
- 主な放射線:β⁻+γ
- 用途:甲状腺疾患(甲状腺がん、バセドウ病)治療
4.¹⁷⁷Lu
- ❌ 誤り
- 半減期:約6.65日
- 主な放射線:β⁻+γ
- 用途:PRRT(神経内分泌腫瘍)など
5.²²³Ra
- ❌ 誤り
- 半減期:約11.4日
- 主な放射線:α
- 用途:去勢抵抗性前立腺癌の骨転移
出題者の“声”

この問題では、治療用放射性核種の“基本的な比較知識”がきちんと身についておるかを確認したかったのじゃ。
核医学治療と聞くと、多くの者がつい“用途”や“放射線の種類”にばかり目を向けがちじゃが、実は“半減期の長さ”も治療設計において非常に重要な要素なのじゃ。
なかでも今回の正解である⁹⁰Y(イットリウム-90)は、物理的半減期が約2.7日と非常に短いのに、高い治療効果を発揮するという特異な性質を持っておる。
国家試験では、「放射線の種類 × 半減期 × 臨床用途」を正しく組み合わせて理解する力が試される場面が多い。
数値と特徴をセットで覚えることが重要なのじゃ。
臨床の“目”で読む

核医学治療(特に内用療法)では、使用する核種の“物理的半減期”は、
治療のスケジュール設計・隔離管理・被ばく防護計画に直結する、非常に大切な情報です。
今回の正解である⁹⁰Yは、半減期が約2.7日と短く、β⁻線のみを放出するため、短時間で効果を発揮し、治療後の放射線量も早く減少するという利点があります。その結果、隔離や接触制限が比較的軽く済むというメリットもあります。
一方で、¹³¹I(約8日)や²²³Ra(約11.4日)のように半減期が長い核種では、治療効果が持続する反面、患者への接触制限や家庭内の放射線防護にも注意が必要になります。
また、α線(²²³Ra)とβ⁻線(⁹⁰Y、¹⁷⁷Lu)では、線エネルギーや到達深度が異なり、どの部位に、どのくらい深く、どれだけ線量を与えるかといった治療戦略に直結します。
放射線技師としては、
- 「この核種は何を目的に使われているか?」
- 「放射線の種類と深達度はどうか?」
- 「どのくらいの期間、放射線管理が必要か?」
- 「周囲の人への配慮はどの程度必要か?」
といった実務的判断を、核種の“半減期”や放射線特性から逆算できる力が求められます。
キーワード
- 物理的半減期
- 治療用核種
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