永久挿入密封小線源治療で用いられる線源はどれか。2つ選べ。
- ⁶⁰Co
- ¹²⁵I
- ¹³¹I
- ¹³⁷Cs
- ¹⁹⁸Au
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
2.¹²⁵I
5.¹⁹⁸Au
解説
✔ 永久挿入密封小線源療法(Permanent Brachytherapy)とは?
米粒ほどの大きさの密封されたカプセル状の放射線源を、がん組織(主に前立腺がん)に直接、永久に埋め込む治療法です。線源は体内に留置されたまま、その放射線が徐々に弱まっていき、最終的に放射能がなくなるのを待ちます。この治療法に適した線源は、以下の条件を満たす必要があります。
- 適切な半減期:数週間から数ヶ月で線量が十分に減衰する、比較的短い半減期であること。
- 適切なエネルギー:放出される放射線のエネルギーが低く、飛程が短いため、周囲の正常組織への影響を限定できること。
- 密封線源であること:放射性物質が体内に漏れ出さないよう、カプセルに密封されていること。
✔ 各選択肢について
1. ⁶⁰Co
- ❌ 誤り
- 半減期:約5.27年
- γ線エネルギー:約1.17、1.33 MeVと非常に高い。
- 主に外部照射装置(リニアック以前)で使用され、永久挿入には不向き。
2.¹²⁵I
- ✅ 正解
- 半減期:約60日
- γ線エネルギー:約35 keV(低エネルギー)
- 前立腺がんに最も多く使われる永久挿入用シード線源。
3.¹³¹I
- ❌ 誤り
- 半減期:約8日
- β⁻線とγ線を放出(β⁻:606 keV、γ:364 keV)
- 甲状腺疾患の内服治療に使われる“非密封”核種。
4.¹³⁷Cs
- ❌ 誤り
- 半減期:約30年
- γ線エネルギー:約662 keV
- 高エネルギー・長寿命のため、永久挿入には不適。
5.¹⁹⁸Au
- ✅ 正解
- 半減期:約2.7日
- 過去に前立腺がん・乳がん・脳腫瘍などで広く用いられた。
- 近年は減少傾向だが、歴史的に重要な永久挿入型線源の1つ。
出題者の“声”

この問題の狙いは、放射線治療に用いる核種について、「どの治療法に、どの核種が使われるか」という組み合わせを正確に覚えているかを確認することじゃ。
特に¹³¹I(ヨウ素131)や¹³⁷Cs(セシウム137)は、治療で使われる有名な核種だけに、ひっかかりやすい。しかし、¹³¹Iは飲むタイプ(非密封)、¹³⁷Csは半減期が長すぎて永久挿入には使えない、という決定的な違いがある。
正解の¹²⁵Iや¹⁹⁸Auは、「比較的短い半減期」と「低いエネルギー」という、永久挿入に必要な条件を満たしておる。
この「なぜ、その核種が選ばれるのか?」という理由(物理的特性)まで理解できていれば、間違うことはないはずじゃ。
「知っている核種」というだけで飛びつかず、「密封か非密封か?」「永久か一時的か?」「半減期やエネルギーは適切か?」と一歩踏み込んで考える癖をつけることが、合格への鍵じゃ!
臨床の“目”で読む

永久挿入密封小線源療法(シード治療)は、特に早期前立腺がんに対する根治的な選択肢として広く普及しており、患者の生活の質(QOL)を維持しながら治療を行える有効な手段です。
この治療の最大の利点は、線源をがんに直接埋め込むことで、標的へ線量を集中させつつ、直腸や膀胱といった周囲の正常組織への被ばくを最小限に抑えられる点にあります。
実際の臨床で中心的に使われる¹²⁵I(ヨウ素125)は、半減期約60日、低エネルギーγ線(35 keV)という特性をもち、長すぎず短すぎない期間、治療効果を発揮しながら、外部被ばくも少ないという、非常にバランスの取れた線源です。
このおかげで、治療後も早期に社会復帰できるというメリットがあります。
一方、⁶⁰Coや¹³⁷Csのような高エネルギーかつ長寿命の核種をもし永久挿入してしまえば、体内から長期間にわたり強い放射線が放出されることになり、患者自身だけでなく、家族や周囲の人への放射線リスクも無視できません。
放射線技師としては、各治療法で用いられる核種の物理的特性と臨床的な目的を正確に理解し、「なぜ、この治療にこの線源が最適なのか」を常に意識することが、安全で質の高い医療を提供する上で不可欠です。
キーワード
- 永久挿入型小線源治療(Permanent Brachytherapy)
- 密封小線源
- ¹²⁵I(ヨウ素-125)
- 半減期
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