粒子線治療における深さ方向の線量分布を表す量はどれか。
- 平坦度
- 電子平衡厚
- 照射野サイズ
- 軸外線量比における 100% 線量
- 深部量百分率における 100% 線量
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
5.深部量百分率における 100% 線量
解説
✔ 深部量分布(Depth Dose Distribution)とは?
- 放射線治療では、皮膚表面からの深さに応じて、どれだけの線量が組織に届いているかを把握することが極めて重要。
- その評価に用いられるのが、PDD(Percent Depth Dose:深部量百分率)。
- PDDは、ある基準点(通常は最大線量点)を100%とし、そこから各深度における相対線量をパーセントで示す指標。
- とくに陽子線や炭素線などの粒子線治療では、BraggピークやSOBP(Spread-Out Bragg Peak)といった深さ方向の線量変化が非常に顕著なため、PDDはその評価に不可欠な指標となります。
✔ 各選択肢について
1. 平坦度
- ❌ 誤り
- これはビームの「横方向」、つまり照射野の面内における線量の均一性を示す指標。
2.電子平衡厚
- ❌ 誤り
- 電子線照射において電子平衡が成立する深さのことで、線量分布全体ではなく1点の深さ特性を示す。
3.照射野サイズ
- ❌ 誤り
- ビームの幅や面積といった「照射範囲の広さ」を示す。
4.軸外線量比における 100% 線量
- ❌ 誤り
- ビームの中心軸から「横方向」に離れた点の線量を中心軸上の線量と比較する指標。
5.深部量百分率における 100% 線量
- ✅ 正解
- 「深さ方向」の線量分布を評価するために定義された、最も基本的で重要な指標。
- 粒子線治療におけるブラッグピークやSOBPの形状は、このPDD曲線によって評価される。
出題者の“声”

この問題のキモは、放射線ビームの評価指標が「深さ方向(縦)」を評価するものなのか、「照射野内(横)」を評価するものなのかを、はっきりと区別できているか、という点じゃ。
平坦度、軸外線量比…これらはすべて、ビームを上から見たときの「面の均一性」や「横方向の広がり」に関する話。一方で、今回の主役である粒子線治療の最大の特徴、ブラッグピークは「深さ」に伴う劇的な線量変化じゃな。
この深さ方向の変化を評価するための世界共通のモノサシが、「深部量百分率(PDD)」なんじゃ。
言葉は似ていても、それぞれの指標がビームのどの断面を評価しているのか。そのイメージを頭の中に描けるかどうかが、国家試験でも臨床でも問われるぞい!
臨床の“目”で読む

放射線治療の計画では、「深さによって線量がどう変化するか」を正確に把握するこ放射線治療計画、特に粒子線治療の品質は、PDD(深部量百分率)をいかに精密に制御するかにかかっていると言っても過言ではありません。
PDDは、治療計画における「設計図」そのものです。
私たちがPDDから読み取る主な情報は以下の通りです。
- ブラッグピークの位置と鋭さ:がんの最も深い部分にピークの先端が正確に一致しているか。
- SOBPの幅と均一性:腫瘍の厚み全体を、ムラなく均一な線量でカバーできているか。
- 体表面線量:皮膚へのダメージは許容範囲内か。
- ピーク以降の線量:標的の奥にある重要臓器への線量は、十分に低減されているか。
これらの情報はすべて、水ファントムという人体を模擬した装置で測定されたPDDデータが基礎となります。
放射線技師は、治療計画装置に表示されるPDD曲線を見て、「この線量分布ならば、がんを確実に治療し、かつ正常組織を最大限に保護できる」ということを論理的に判断する能力が求められます。PDDは、日々の品質管理においても、ビームの安定性を保証するための重要なチェック項目なのです。
キーワード
- 深部量百分率(PDD)
- Braggピーク
- SOBP
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