第77回 午前 33

医療画像情報学

ファイアウォールの機能で正しいのはどれか。

  1. ログイン時にパスワードを要求する。
  2. 通信パケットに含まれるウイルスを駆除する。
  3. ネットワーク間で暗号化された通信だけを許可する。
  4. 脆弱性があるシステムのソフトウェアを自動更新する。
  5. 外部と内部のネットワーク間で特定の通信だけを許可する。

出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)


5. 外部と内部のネットワーク間で特定の通信だけを許可する。


解説

✔ ファイアウォール(Firewall)とは?

  • 信頼できる内部ネットワーク(院内LANなど)と、信頼できない外部ネットワーク(インターネットなど)の境界に設置され、両者間の通信を監視・制御する「防火壁」または「門番」のような存在です。
  • その主な機能は、通過する通信パケットのヘッダ情報(送信元/宛先のIPアドレス、ポート番号、プロトコルなど)を見て、あらかじめ設定されたルール(ポリシー)と照合し、「許可された通信だけを通し、それ以外はすべて遮断する」ことです。

✔ 各選択肢について

1. ログイン時にパスワードを要求する。

  • 誤り
  • これはOSやアプリケーションが持つ「認証」機能。

2.通信パケットに含まれるウイルスを駆除する。

  • 誤り
  • これは「アンチウイルスソフト」の機能。
  • ファイアウォールは基本的に通信の可否を判断するだけで、データの中身(ウイルスなど)までは検査しません。

3.ネットワーク間で暗号化された通信だけを許可する。

  • 誤り
  • 通信を暗号化するのはVPN(Virtual Private Network)などの技術や装置の役割。

4.脆弱性があるシステムのソフトウェアを自動更新する。

  • 誤り
  • ソフトウェアの更新はパッチマネージャーやOSの自動更新機能の役割。

5.外部と内部のネットワーク間で特定の通信だけを許可する。

  • 正解
  • 外部ネットワーク(インターネット)と内部ネットワーク(社内LANやPACSネットワークなど)の間で、あらかじめ定義した通信のみを通過させることで、不正アクセスや不要通信を遮断します。

出題者の“声”

この問題では、数あるセキュリティ対策の中で「ファイアウォール」が担う中核的な役割を、正確に理解しているかを確認したかったのじゃ。

「セキュリティ」と一括りにすると、ウイルス対策もパスワードも、すべて同じように見えてしまうかもしれん。しかし、それぞれ専門分野が違うのじゃ。

  • 認証:「あなたは誰ですか?」を確認する。
  • アンチウイルス:「持ち物は安全ですか?」を確認する。
  • ファイアウォール:「あなたはどこから来て、どこへ行く許可がありますか?」を確認する。

このように、役割は全く異なる。ファイアウォールは、ネットワークの住所(IPアドレス)と部屋番号(ポート番号)を見て交通整理をする「門番」じゃと覚えておけば、他の選択肢と間違うことはないはずじゃ。

この基本を理解することが、医療情報システムを守る第一歩なんじゃぞ。


臨床の“目”で読む

ファイアウォールは、患者情報という機密情報を守り、医療機器ネットワークの安全を維持するための、セキュリティの最前線です。

医療情報システム(電子カルテ、PACSなど)は、この「門番」によって外部の脅威から隔離されています。医療現場におけるファイアウォールの具体的な役割は、

  • 境界防御:院内ネットワークとインターネットの間に立ち、外部からの不正なアクセスをブロックする。
  • アクセス制御:例えば、「CT装置はPACSサーバーとのみ通信を許可する」「特定のPCからしか電子カルテサーバーにアクセスできない」といったように、内部の通信経路を必要最低限に限定する。
  • 脅威の封じ込め:万が一、院内の一つの端末がマルウェアに感染しても、ファイアウォールによって他の重要なサーバーへの通信が遮断され、被害の拡大を防ぐ。

私たち放射線技師が「モダリティからPACSへ画像が送れない」といったトラブルに遭遇した際、その原因がファイアウォールの設定である可能性も少なくありません。

「なぜ、この機器とこの機器は通信できるのか(あるいは、できないのか)」その背景にあるセキュリティポリシーを少しでも理解していると、システム管理者との連携やトラブルシューティングがスムーズになります。

セキュリティは「誰かがやってくれるもの」ではなく、医療従事者全員で守るべきものなのです。


キーワード

  • ファイアウォール
  • 医療情報セキュリティ

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