腸間膜を有さないのはどれか。2つ選べ。
- 空腸
- S状結腸
- 横行結腸
- 十二指腸
- 上行結腸
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
4.十二指腸
5.上行結腸
解説
✔ 腸間膜とは?
- 腸間膜は、腸管を腹壁につなぎとめ、固定する膜状の組織です。
- しかし、ただ固定するだけでなく、腸管に栄養を送る血管やリンパ管、神経が通る「命綱」の役割も担っています。
✔ 腹腔内臓器(腸間膜を有する)
- 腹膜内臓器は腸間膜にぶら下がる形で存在するため、お腹の中で可動性があります。
- 該当:胃、空腸、回腸、横行結腸、S状結腸、肝臓、脾臓など。
✔ 後腹膜臓器(腸間膜を持たない)
- 後腹膜臓器は腹膜の後ろ側にあり、後腹壁に癒着・固定されているため、可動性が乏しいです。
- 該当:十二指腸(大部分)、上行結腸、下行結腸、膵臓、腎臓、副腎、大血管など
✔ 各選択肢について
1. 空腸
- ❌ 誤り
- 小腸間膜によって支持されており、腹腔内で自由に動ける腹膜内臓器です。
2.S状結腸
- ❌ 誤り
- S状結腸間膜をもち、特に可動性が高い腹膜内臓器です。
3.横行結腸
- ❌ 誤り
- 横行結腸間膜をもち、腹腔内を横断する腹膜内臓器です。
4.十二指腸
- ✅ 正解
- 胃に続く最初の部分は腹膜内ですが、続く大部分(第2~4部)は後腹膜に固定された後腹膜臓器です。
5.上行結腸
- ✅ 正解
- 成長の過程で後腹壁に癒着・固定された後腹膜臓器(二次性後腹膜臓器)です。
出題者の“声”

この問題の狙いは、腹部の基本的な解剖区分である「腹膜内」か「後腹膜」かを、腸間膜の有無という観点から正しく理解できているかを確認することじゃ。
この区別は、単なる暗記ではない。
「腸間膜がある=可動性がある」「ない=固定されている」というイメージが、そのまま画像解剖の理解につながるからじゃ。
今後、CT画像をたくさん見ていくと、「S状結腸は人によって位置が違うけど、上行結腸はだいたい同じ場所にあるな」と感じることがあるかもしれん。 それがまさに、腸間膜の有無による違いなんじゃ。
この「動く臓器」と「動かない臓器」という感覚的な理解こそ、病変がどこにあるのか、どう広がっていくのかを予測する読影力の基礎となる。
解剖学は、平面の知識だけでなく、“動きと位置のイメージ”も重要なのじゃ!
臨床の“目”で読む

腸間膜の有無、すなわち腹膜内臓器か後腹膜臓器かという区別は、画像診断や外科手術において極めて重要な意味を持ちます。なぜなら、病気の広がり方(波及様式)が全く異なるからです。
- 腹膜内臓器の病変
- 例:S状結腸の穿孔(穴が開くこと)
- 腸の内容物や膿、空気が腹腔全体に広がりやすく、汎発性腹膜炎という重篤な状態に陥りやすい。
- 後腹膜臓器の病変
- 例:十二指腸潰瘍の穿孔、急性膵炎
- 炎症や液体貯留は、後腹膜腔という限られたスペースに留まる傾向がある。CTでは、腎臓の周りなど特徴的な場所に液体が溜まっているのが観察される。
このように、CTで腹水や遊離ガス(フリーエアー)が見られたときに、その広がり方が「腹腔全体」なのか「後腹膜に限局」しているのかを見極めることで、原因となっている臓器を推測する手がかりになります。
私たち放射線技師も、この解剖学的な違いを理解していることで、「なぜこの撮影範囲が必要なのか」「なぜこの体位で撮影するのか」といった検査の目的をより深く理解でき、医師との円滑なコミュニケーションや、より診断価値の高い画像の提供につながるのです。
キーワード
- 腸間膜
- 腹膜内臓器
- 後腹膜臓器
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