乳房のMR像を示す。この画像で正しいのはどれか。

- T₁強調像である。
- 位相方向は前後方向である。
- 脂肪抑制法が併用されている。
- 右乳房腫瘍は骨格筋と比較し低信号である。
- 大動脈の内腔は高信号として描出されている。
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
3.脂肪抑制法が併用されている。
解説
✔ この画像の特徴は?
- 乳腺内の脂肪が低信号(黒)で描出されており、脂肪抑制がかかっていることが明らかです。
- 右乳房には明らかな高信号の腫瘤が描出されており、造影後T₁強調画像+脂肪抑制法併用像と考えられます。
✔ 各選択肢について
T₁強調像である。
- ❌ 誤り
- 脂肪抑制+造影T₁強調像であり、単純T₁像とは異なる。
2.位相方向は前後方向である。
- ❌ 誤り
- 乳房MRIでは動きによるアーチファクトを避けるために、位相方向は左右(R–L)方向。
- 前後方向では呼吸アーチファクトが重なりやすく不適。
3.脂肪抑制法が併用されている。
- ✅ 正解
- 乳腺脂肪が黒く描出されており、明らかな脂肪抑制像。
- 脂肪抑制 : 脂肪の信号だけを“わざと消して”黒く見せる方法です。病変を目立たせたいときによく使われます。乳がん検査では「脂肪は黒く、病変は白く」なることで見つけやすくなります。
4.右乳房腫瘍は骨格筋と比較し低信号である。
- ❌ 誤り
- 腫瘤は骨格筋よりも明らかに高信号で描出。
5.大動脈の内腔は高信号として描出されている。
- ❌ 誤り
- 大動脈内腔は信号が欠損しており、流速の影響で信号は低下している。
出題者の“声”

この問題では、乳房MRIでの脂肪抑制の大切さと、信号の見方を確認してもらいたかったのじゃ。
見慣れていない者は「白い=脂肪」と思いがちじゃが、脂肪が黒く写っている=脂肪抑制がかかっておるという基本をちゃんと押さえておいてほしいのじゃ。
それとな、乳房MRIでは左右方向を位相エンコードにするのが一般的じゃ。呼吸で前後に動くからのう、位相方向が前後だとアーチファクトがかぶってしまうんじゃよ。
骨格筋や血管と比べた信号差にも注目して、「なんとなく白いから腫瘍っぽい」という判断ではなく、画像の要素を根拠にして読む力を鍛えてほしいのじゃ。
臨床の“目”で読む

乳房MRIでは、造影T₁強調+脂肪抑制の組み合わせが診断の決め手になります。
腫瘍は造影剤を取り込んで白く描出され、脂肪は抑制されて黒く描かれることで、コントラストが最大化されます。
また、乳房は呼吸によりわずかに前後へ動く部位のため、位相方向に前後を設定するとアーチファクトが腫瘍部位に重なりやすくなります。
そのため、左右方向を位相エンコードに設定するのが一般的です。
“動く部位=位相方向に注意”という原則は、乳房だけでなく腹部・心臓・骨盤MRIなど、他部位でも共通の考え方ですね。
キーワード
- 乳房MRI
- 脂肪抑制
- 位相方向
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