手根管を通過する神経はどれか。
- 副神経
- 尺骨神経
- 正中神経
- 橈骨神経
- 肋間神経
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
3.正中神経
解説
✔ 手根管とは?
手根管は、手首の手のひら側にある、骨と靭帯(横手根靭帯)でできたトンネルです。
この狭いトンネルの中を、指を曲げるための9本の腱と、たった1本の重要な神経が一緒に通っています。その神経こそが「正中神経」なのです。
✔ 手根管症候群とは?
何らかの原因でこのトンネルが狭くなり、中を通る正中神経が圧迫されてしまう病態が「手根管症候群」です。放射線技師も、この疾患が疑われる患者さんの検査を担当する機会が非常に多いです。
- 主な症状:
- 親指から薬指の親指側半分にかけての、ジンジンとしびれるような痛み。
- 夜間や明け方に症状が強くなることが多い。
- 進行すると、親指の付け根の筋肉(母指球筋)が痩せて、物を掴む力も弱くなる。
- 画像所見:
- 超音波やMRIで、圧迫された正中神経が腫れていたり、扁平になっていたりする様子が観察できます。
✔ 各選択肢について
1. 副神経
- ❌ 誤り
- 首の筋肉(胸鎖乳突筋・僧帽筋)を支配する脳神経で、腕や手には分布しません。
2.尺骨神経
- ❌ 誤り
- 手根管のすぐ隣にある「ギオン管」という別のトンネルを通ります。手根管症候群との鑑別で非常に重要なポイントです。
3.正中神経
- ✅ 正解
- 手根管を通過する唯一の神経であり、手根管症候群の原因となります。
4.橈骨神経
- ❌ 誤り
- 主に腕や手の甲側(背側)を走行するため、手のひら側にある手根管は通りません。
- 指を伸ばす筋肉などを支配します。
5.肋間神経
- ❌ 誤り
- その名の通り、肋骨に沿って走行し、胸や腹部の筋肉・皮膚を支配します。
- 上肢とは全く関係ありません。
出題者の“声”

この問題は、手根管を通る神経がどれか、その見極めができるかどうかを試しておるのじゃ。
ふだんは「神経の名前? 正中神経? 尺骨神経? よく聞くなぁ」くらいに思っておる者もおるじゃろう。
そこでワシはこう問いかけるんじゃ……
「さて、この中で“手根管”を通るのはどれじゃ?」
……と聞かれた時、思わずこう考える者もおるはずじゃ。
「手ってつくし、尺骨神経か? いや、橈骨神経? いや、なんかどれも手に関係ありそう……わからん!」
──そうなったら、もうワシの術中にハマっておる!
尺骨神経はギヨン管、橈骨神経は背側、副神経や肋間神経はそもそも関係なし。
手根管を通るのはただ一つ、正中神経だけなのじゃ!
これは、ただの語句暗記では見破れぬように作っておる。
“名前を知ってる”だけでは足らんのじゃ。
なぜその神経がそこを通るのか?
その知識がどう臨床とつながるのか?
そういった、放射線技師としての立体的な理解力を試しておるのじゃ。
ちゃんと神経走行と臨床をセットで学んできた者には、知ってて当然、迷う余地なしの一問じゃろう。
臨床の“目”で読む

放射線技師として、手根管を評価する機会は意外と多いです。
その際、以下のポイントを意識して観察することが、診断の質を高めます。
- 正中神経そのものの評価:
- 神経が圧迫されて腫れていないか?(腫大)
- 逆に、圧迫されて薄く扁平になっていないか?
- 圧迫原因の探索:
- トンネル内に、神経を圧迫するようなガングリオンや腱鞘炎、腫瘍などがないか?
- 術後の評価:
- 手根管開放術などの手術後の状態で、神経の圧迫が解除されているか?
これらの解剖学的な位置関係を正確に理解していれば、撮影断面の設定や、医師への的確な所見の提示に繋がり、チーム医療への貢献度も格段に上がります。
今日のまとめ
- 手根管を通過する神経は正中神経のみ。
- 尺骨神経はギオン管、橈骨神経は背側経路を通る。
- 手根管症候群では、母指~中指のしびれ・筋萎縮が特徴。
- 画像診断においても、正中神経の走行と変化の評価が重要!
コメント