紫外線の特徴で正しいのはどれか。
- DNA を標的としない。
- X 線よりも波長が長い。
- 直接電離放射線である。
- X 線よりも LET が高い。
- 発がんを引き起こさない。
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
2.X 線よりも波長が長い。
解説
✔ 紫外線(UV:Ultraviolet radiation)とは?
紫外線は波長10〜400nm程度の電磁波で、可視光よりも波長が短く(エネルギーは高く)、X線よりは長い(エネルギーは低い)領域に位置します。
- 可視光:約400〜700 nm:肉眼で見える光
- 紫外線(UV):約10〜400 nm:目に見えないが、生体に影響を与える
- X線:約0.01〜10 nm:医療画像などで利用、高エネルギー放射線
✔ 「非電離」なのに、なぜ危険なの?
放射線は、物質をイオン化(原子から電子を弾き飛ばすこと)させる能力の有無で大きく2つに分かれます。
- 電離放射線:イオン化する力がある。(例: X線、γ線、α線)
- 非電離放射線:イオン化する力はない。(例: 紫外線、可視光線、赤外線)
ここで多くの学生が「あれ?」と思います。 「紫外線は電離しないのに、なぜDNAを傷つけたり、がんの原因になったりするの?」
その答えは、紫外線が「イオン化は起こさないが、DNAの化学結合を切断するには十分なエネルギーを持っている」からです。
特に皮膚細胞のDNAに吸収されると、DNAの鎖を異常な形で結合させ(ピリミジン二量体)、これが修復されないと突然変異や皮膚がんにつながるのです。
✔ 各選択肢について
1. DNA を標的としない。
- ❌ 誤り
- 紫外線はDNAに直接作用し、ピリミジン塩基の異常結合を引き起こします(特に皮膚がんの原因)。
2.X 線よりも波長が長い。
- ✅ 正解
- 紫外線はX線より波長が長く、エネルギーは低いです。
3.直接電離放射線である。
- ❌ 誤り
- 紫外線は非電離放射線であり、電離作用は持ちません。
4.X 線よりも LET が高い。
- ❌ 誤り
- LET(線エネルギー付与)は、放射線が物質中を進む際にどれだけエネルギーを与えるかを示す指標です。
- 一般にα線のような粒子線が高く、紫外線やX線のような光子は低いです。
- X線の方が紫外線よりもエネルギーが高いため、LETもX線の方が高くなります。
5.発がんを引き起こさない。
- ❌ 誤り
- 長期間の曝露は、皮膚がんの主要なリスク因子として確立されています。
出題者の“声”

この問題は、放射線に関する知識の「解像度」を試しておる。
「放射線=危険=がんになる」といった、漠然としたイメージだけで覚えている者には解けんように作ってあるのじゃ。
特にワシが仕掛けたワナは、「DNA損傷や発がん」と聞くと、すぐに「電離放射線だ!」と結びつけてしまう早とちりじゃ。 紫外線は「非電離」でありながら、DNAを傷つける力を持つ。この一見矛盾したような性質を、正確に理解しているかが問われておる。
「波長」「電離作用」「生物効果(DNA損傷)」「LET」。 これらの言葉の定義を一つひとつ丁寧に整理できている者だけが、迷いなく正解にたどり着ける。
基礎がいかに大事か、よく分かる一問じゃ!
臨床の“目”で読む

放射線技師はX線やγ線といった電離放射線に日常的に接していますが、紫外線の知識も医療において無関係ではありません。
- 皮膚科領域での治療応用
- 紫外線は体を深く透過しない性質を利用し、乾癬(かんせん)や白斑(はくはん)、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患の治療(光線療法)に積極的に用いられます。
- 殺菌・滅菌装置としての利用
- 特定の波長の紫外線(UV-C)は、微生物のDNAを破壊する力が強く、手術室や検査室、物品の殺菌灯として利用されています。これも立派な放射線利用の一つです。
- 職業被ばくとしての防護
- 治療や殺菌で強力な紫外線ランプを扱う際は、UVカット機能のあるゴーグルや手袋、長袖の着用が必須です。非電離放射線だからと油断せず、目や皮膚への曝露を確実に防ぐ安全管理意識が求められます。
「非電離=安全」ではなく、「非電離だが生物作用はあるため、適切な管理が必要」。このバランス感覚が、プロの放射線技師には不可欠です。
今日のまとめ
- 紫外線はX線より波長が長く、エネルギーが低い「非電離放射線」である。
- 非電離だが、DNAを直接損傷させる力があり、皮膚がんの原因となる。
- LET(線エネルギー付与)は低い。(高いのはα線などの粒子線)
- 医療では皮膚科治療や殺菌に利用され、技師もその管理と防護に関わる。
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