膝関節のMR像を示す。正しい組合せはどれか。

- ア — 腓腹筋
- イ — 外側広筋
- ウ — 内側半月板
- エ — 前十字靱帯
- オ — 膝蓋靱帯
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
4.エ ─ 前十字靱帯
解説
✔ 画像の特徴と基本知識
- このMRI画像は、膝関節の矢状断(側面像)をT1強調像で撮影したものです。
- 靱帯・筋肉・脂肪組織の信号強度の違いが明瞭に描出されています。
- 靱帯・腱:低信号(黒)
- 筋肉:中等度の信号(灰色)
- 脂肪体・皮下脂肪:高信号(白)
✔ 各選択肢について
1. ア — 腓腹筋
- ❌ 誤り
- 実際には大腿二頭筋。
- 膝関節後外側に位置し、T1強調像で中等度の信号を示す。
2.イ — 外側広筋
- ❌ 誤り
- 実際には腓腹筋。
- ふくらはぎの筋肉で正常な筋肉は、T1で均一な低〜中信号で、線維の走行が確認できます。
- 内側腓腹筋の遠位部は、肉離れの好発部位で、T2強調像やSTIR像では、損傷部に高信号(白い浮腫や血腫)が描出されます。
3.ウ — 内側半月板
- ❌ 誤り
- 実際には後十字靱帯(PCL)。
- PCL:脛骨の後方 → 大腿骨の前方へ向かう「太めの後ろロープ」。ACLよりも太く、やや水平に走行。MRIでは低信号の線状構造(黒)として描出されます。
- 内側半月板 :C字型の低信号(黒)構造で、脛骨内顆と大腿骨の間に存在。正常では黒く均一。断裂時には内部に高信号が入り込みます。
- 外側半月板:外側(脛骨外顆)にある「よりOに近い形」の低信号構造。内側よりも小さく可動性が高いため、損傷や癒合異常にも注意。
4.エ — 前十字靱帯
- ✅ 正解
- 脛骨の前方 → 大腿骨外側顆の内面へ斜めに走る。
- 膝の前後方向のズレを防ぐ役割をもつ重要な靱帯。
- MRI矢状断では、斜めに走る黒いバンド状構造として描出され、連続性や断裂の有無が評価されます。
5.オ — 膝蓋靱帯
- ❌ 誤り
- 実際には膝蓋下脂肪体(IFP)。
- 膝蓋下脂肪体(IFP):膝蓋靱帯の奥、膝のお皿の下をふわっと埋める“白っぽい脂肪組織。信号はT1・T2ともに高信号(明るい)で、関節炎や術後にむくみとして目立つことも。
- 膝蓋靱帯:膝蓋骨下縁 → 脛骨粗面に向かって垂直に近く走行。均一な低信号(黒)のバンド状構造。矢状断で見ると、大腿四頭筋腱 → 膝蓋骨 → 膝蓋靱帯 → 脛骨粗面と、上下連続した線状構造として確認されます。
出題者の“声”

この問題では、筋肉・靱帯・半月板をちゃんと見分けられるか、その「読影の基礎力」を試したのじゃ。
前十字靱帯(ACL)は、斜めに走る黒くてくっきりした構造じゃな。見慣れておる者なら、ラッキー問題に見えるはずじゃ。
出題者としては、膝のMRI矢状断面を問うなら、やはり“膝の花形”である半月板や靱帯で、きちんと解剖がわかっておるかを確認したいところじゃ。
名前だけを暗記しておっても通用せん。「場所・信号・形」──この三点をセットで覚えておかんと、臨床ではすぐに見落とすぞい。
臨床の“目”で読む

膝MRIは、スポーツ外傷や変性疾患の評価に欠かせないモダリティです。
特に前十字靱帯(ACL)は、断裂の有無を確認するうえで最も重要な構造のひとつといえるでしょう。
この画像のように、ACLが明瞭な低信号(黒)のバンドとして斜走する所見は、正常な典型例です。一方で、断裂があると走行が乱れたり、不明瞭化したりします。
大切なのは、「どこから始まり、どこに付着するか」を頭にイメージしながら構造と照らし合わせることです。たとえばACLであれば、 大腿骨外側顆の内面から、脛骨棘間部の前方へと斜め下に走行します。
また、各断面ごとの主な評価ポイントは以下の通り:
- 矢状断:ACL・PCL・半月板・関節軟骨
- 冠状断:内側・外側側副靱帯、半月板、関節裂隙
- 軸位断:膝蓋大腿関節、周囲の軟部組織
これらの断面を組み合わせて立体的に構造を捉える力が、膝関節の読影には求められます。
なので、もしこの画像(矢状断)で「筋肉の名前を答えさせる問題だったら…
「出題者、それはちょっと…」とツッコミたくなりますね。
キーワード
- 膝関節MRI
- 前十字靱帯(ACL)
- 後十字靱帯(PCL)
- 半月板
- 膝蓋下脂肪体(IFP)
コメント