第77回 午前77

画像工学

FPDで正しいのはどれか。

  1. 画像歪はI.I.と同等である。
  2. 素子間の感度補正が必要である。
  3. ダイナミックレンジはアナログシステムと同等である。
  4. 直接変換方式ではX線をシンチレータで光に変換する。
  5. リアルタイムでX線画像をアナログ信号として出力する。

出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)


2.素子間の感度補正が必要である。


解説

✔ FPDとは?:現代X線検査の「目」

FPD(フラットパネルディテクタ)は、X線画像をデジタル信号に変換する、薄い板状の検出器です。

数百万個もの微細な画素(検出素子)がマトリクス状に並んでおり、現代の一般撮影やX線TV、マンモグラフィなどの中心的な役割を担っています。

✔ なぜ「感度補正」が必要なのか?

FPDを構成する数百万個の画素は、工業製品であるため、どうしても一つひとつに感度のバラつきや、X線が当たっていなくても信号を出してしまうノイズ(暗電流)が生じます。

もし、このバラつきを放置したまま撮影すると、画像にスジやムラが生じてしまいます。 これを防ぎ、均一で美しい画像を得るために、あらかじめ各画素のクセを補正しておく操作(キャリブレーション)が不可欠です。

この操作を感度補正(ゲイン補正、フラットフィールド補正)オフセット補正と呼びます。


✔ 各選択肢について

1. 画像歪はI.I.と同等である。

  • 誤り
  • FPDは平面であるため、幾何学的な歪みがほとんどないのが大きな利点です。
  • 一方、旧来のイメージインテンシファイア(I.I.)は、構造上どうしても画像の周辺部に歪みが発生します。

2.子間の感度補正が必要である。

  • 正解
  • 前述の通り、各画素の感度のバラつきを補正し、均一な画質を得るために必須の操作です。

3.ダイナミックレンジはアナログシステムと同等である。

  • 誤り
  • FPDは、フィルムなどのアナログシステムに比べて、ダイナミックレンジ(識別できるX線強度の幅)が桁違いに広いです。
  • これにより、一枚の画像で骨から軟部組織まで、白とびや黒つぶれなく描出でき、撮影条件の許容範囲も広がりました。

4.直接変換方式ではX線をシンチレータで光に変換する。

  • 誤り
  • これは「間接変換方式」の説明です。FPDには2つの方式があります。
  • 間接変換方式: X線 → シンチレータ → 光 → フォトダイオード → 電荷
  • 直接変換方式: X線 → 光導電体(a-Se) → 電荷 (※シンチレータは使わない)

5.リアルタイムでX線画像をアナログ信号として出力する。

  • 誤り
  • FPDは、各画素で発生した電荷を読み出し、A/D変換器でデジタル信号に変換する、純粋なデジタル検出器です。

出題者の“声”

この問題は、FPDという現代X線検査の主役について、その「長所」「動作に必要な“お作法”」、そして「旧技術との違い」を正しく理解しておるかを試しておる。

最大のポイントは、「FPDは完璧な一枚板ではない」という事実じゃ。あれは数百万の独立した素子の「集合体」。だからこそ、個々の素子のクセを補正する「感度補正」が不可欠となる。

この、FPDが持つ宿命を知っておるかが、まず一つの関門じゃ。

そして、I.I.との「歪み」の違い、フィルムとの「ダイナミックレンジ」の違いなど、旧技術と比較したときのFPDの圧倒的な利点を整理できているか。直接変換と間接変換のプロセスの違いを説明できるか。

一つひとつの知識の解像度が試される、基本にして重要な問題じゃ。


臨床の“目”で読む

FPDの特性は、日々の臨床業務の質と効率に直結しています。

① ダイナミックレンジの広さがもたらす恩恵

FPDの広いダイナミックレンジは、放射線技師にとって大きな助けとなります。撮影条件が多少ズレても、白とびや黒つぶれの少ない画像が得られるため、再撮影の回数を大幅に減らすことができます。これは、患者さんの被ばく低減と、検査のスループット向上に大きく貢献します。また、一枚の画像で骨から軟部組織までを描出できるため、診断能も向上しました。

② 歪みのなさが活きる整形外科領域

I.I.と違い歪みがないため、FPDで撮影された画像は計測の信頼性が非常に高いです。特に、手術計画のために脚の全長や背骨のカーブを計測する長尺撮影(画像をつなぎ合わせる)などでは、この歪みのなさが極めて重要になります。

③ 感度補正と日々の品質管理

感度補正は、装置の設置時に行われるだけでなく、定期的な品質管理(QC)でもチェックされます。もし検出器にホコリが付着したり、一部の画素が劣化(欠損画素)したりすると、それが画像にアーチファクトとして現れることがあります。日々の画像チェックでそうした異常に気づき、必要に応じて再校正を行うことも、私たちの大切な役割です。


今日のまとめ

  1. FPDは数百万の画素の集合体であり、個々の感度差を補正する「素子間の感度補正」が不可欠である。
  2. FPDの大きな利点は、I.I.と比べて画像歪みがなく、フィルムと比べてダイナミックレンジが非常に広いこと。
  3. X線から信号への変換方式には、シンチレータを使う「間接変換方式」と使わない「直接変換方式」がある。
  4. FPDは、X線強度をデジタル信号に変換して出力する、デジタル検出器である。

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