FPDで正しいのはどれか。
- 画像歪はI.I.と同等である。
- 素子間の感度補正が必要である。
- ダイナミックレンジはアナログシステムと同等である。
- 直接変換方式ではX線をシンチレータで光に変換する。
- リアルタイムでX線画像をアナログ信号として出力する。
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
2.素子間の感度補正が必要である。
解説
✔ FPDとは?:現代X線検査の「目」
FPD(フラットパネルディテクタ)は、X線画像をデジタル信号に変換する、薄い板状の検出器です。
数百万個もの微細な画素(検出素子)がマトリクス状に並んでおり、現代の一般撮影やX線TV、マンモグラフィなどの中心的な役割を担っています。
✔ なぜ「感度補正」が必要なのか?
FPDを構成する数百万個の画素は、工業製品であるため、どうしても一つひとつに感度のバラつきや、X線が当たっていなくても信号を出してしまうノイズ(暗電流)が生じます。
もし、このバラつきを放置したまま撮影すると、画像にスジやムラが生じてしまいます。 これを防ぎ、均一で美しい画像を得るために、あらかじめ各画素のクセを補正しておく操作(キャリブレーション)が不可欠です。
この操作を感度補正(ゲイン補正、フラットフィールド補正)やオフセット補正と呼びます。
✔ 各選択肢について
1. 画像歪はI.I.と同等である。
- ❌ 誤り
- FPDは平面であるため、幾何学的な歪みがほとんどないのが大きな利点です。
- 一方、旧来のイメージインテンシファイア(I.I.)は、構造上どうしても画像の周辺部に歪みが発生します。
2.子間の感度補正が必要である。
- ✅ 正解
- 前述の通り、各画素の感度のバラつきを補正し、均一な画質を得るために必須の操作です。
3.ダイナミックレンジはアナログシステムと同等である。
- ❌ 誤り
- FPDは、フィルムなどのアナログシステムに比べて、ダイナミックレンジ(識別できるX線強度の幅)が桁違いに広いです。
- これにより、一枚の画像で骨から軟部組織まで、白とびや黒つぶれなく描出でき、撮影条件の許容範囲も広がりました。
4.直接変換方式ではX線をシンチレータで光に変換する。
- ❌ 誤り
- これは「間接変換方式」の説明です。FPDには2つの方式があります。
- 間接変換方式: X線 → シンチレータ → 光 → フォトダイオード → 電荷
- 直接変換方式: X線 → 光導電体(a-Se) → 電荷 (※シンチレータは使わない)
5.リアルタイムでX線画像をアナログ信号として出力する。
- ❌ 誤り
- FPDは、各画素で発生した電荷を読み出し、A/D変換器でデジタル信号に変換する、純粋なデジタル検出器です。
出題者の“声”

この問題は、FPDという現代X線検査の主役について、その「長所」と「動作に必要な“お作法”」、そして「旧技術との違い」を正しく理解しておるかを試しておる。
最大のポイントは、「FPDは完璧な一枚板ではない」という事実じゃ。あれは数百万の独立した素子の「集合体」。だからこそ、個々の素子のクセを補正する「感度補正」が不可欠となる。
この、FPDが持つ宿命を知っておるかが、まず一つの関門じゃ。
そして、I.I.との「歪み」の違い、フィルムとの「ダイナミックレンジ」の違いなど、旧技術と比較したときのFPDの圧倒的な利点を整理できているか。直接変換と間接変換のプロセスの違いを説明できるか。
一つひとつの知識の解像度が試される、基本にして重要な問題じゃ。
臨床の“目”で読む

FPDの特性は、日々の臨床業務の質と効率に直結しています。
① ダイナミックレンジの広さがもたらす恩恵
FPDの広いダイナミックレンジは、放射線技師にとって大きな助けとなります。撮影条件が多少ズレても、白とびや黒つぶれの少ない画像が得られるため、再撮影の回数を大幅に減らすことができます。これは、患者さんの被ばく低減と、検査のスループット向上に大きく貢献します。また、一枚の画像で骨から軟部組織までを描出できるため、診断能も向上しました。
② 歪みのなさが活きる整形外科領域
I.I.と違い歪みがないため、FPDで撮影された画像は計測の信頼性が非常に高いです。特に、手術計画のために脚の全長や背骨のカーブを計測する長尺撮影(画像をつなぎ合わせる)などでは、この歪みのなさが極めて重要になります。
③ 感度補正と日々の品質管理
感度補正は、装置の設置時に行われるだけでなく、定期的な品質管理(QC)でもチェックされます。もし検出器にホコリが付着したり、一部の画素が劣化(欠損画素)したりすると、それが画像にアーチファクトとして現れることがあります。日々の画像チェックでそうした異常に気づき、必要に応じて再校正を行うことも、私たちの大切な役割です。
今日のまとめ
- FPDは数百万の画素の集合体であり、個々の感度差を補正する「素子間の感度補正」が不可欠である。
- FPDの大きな利点は、I.I.と比べて画像歪みがなく、フィルムと比べてダイナミックレンジが非常に広いこと。
- X線から信号への変換方式には、シンチレータを使う「間接変換方式」と使わない「直接変換方式」がある。
- FPDは、X線強度をデジタル信号に変換して出力する、デジタル検出器である。
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