第77回 午前 8

第77回

急性期脳梗塞の頭部MRIのFLAIR像(A)及び拡散強調(B)を示す。病変の部位はどれか。

  1. 視床
  2. 中脳
  3. 被殻
  4. 小脳虫部
  5. 内包前脚

出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)


1.視床


解説

✔ 画像の特徴と読影ポイント

  • B(DWI)画像:右視床領域(画像では左)に明瞭な高信号があり、拡散制限=急性期脳梗塞の所見。
  • A(FLAIR)画像:同部位にわずかな変化があるものの、目立たない=陰性
  • FLAIR-DWIミスマッチ所見:DWIは高信号なのに、FLAIRでは変化がほぼない状態。これは脳梗塞がごく早い段階(発症数時間以内)であることを示す重要サイン。

✔ 各選択肢について

1.視床

  • 脳室(第3脳室)を挟んで内側に位置する灰白質構造
  • 感覚情報の中継点で、脳梗塞の好発部位のひとつ。今回の高信号病変と一致。

2.中脳

  • 脳幹の上部構造。
  • 今回のスライスでは描出されておらず、レベルが異なる。

3.被殻

  • 内包後脚の外側に位置。
  • 今回の病変部位とは不一致。

4.小脳虫部

  • 小脳の中央部にある縦長の構造で、左右の小脳半球をつなぐ橋渡し的な部分。
  • 今回のスライスは小脳レベルではないため、小脳虫部は描出されていない。

5.内包前脚

  • 尾状核と被殻の間にある白質構造。

出題者の“声”

この問題では、「DWIで高信号、FLAIRで変化が乏しい=急性期脳梗塞」という鉄板知識に加えて、大脳基底核の解剖が頭に入っておるかどうかを問うたのじゃ。

つまり、1問で2度おいしい、そんな設問にしておるのじゃ

先に言っておこう。国家試験を受けるなら大脳基底核の解剖からは逃れられん。
これはもう定番中の定番、出題者が“ニヤッ”としながら狙ってくるところじゃからのう。

なんとなく「視床かな…」と選んだ者、立体的な位置関係がまだ甘いのかもしれんのう。左右・内外・前後を3Dで思い浮かべる習慣をつけておくのじゃ。

それとな、DWIとFLAIRが並んでいた時点で「ミスマッチの問題か?」とひらめいた者、見事じゃ!発症時間との関連まで考えが及んだなら、ボーナスポイントを3点差し上げたいくらいじゃぞ!


臨床の“目”で読む

急性期脳梗塞の診断では、DWI高信号をいち早く見つけることが最重要です。

FLAIRでは、発症初期には変化が見られないことも多く、
“DWI陽性/FLAIR陰性”=発症から数時間以内=tPA投与や血管内治療の対象となる可能性があります。

FLAIRでは、発症初期には変化が見られないことも多く、
「DWI陽性/FLAIR陰性」=「発症から数時間以内」=tPA投与や血管内治療の対象となる可能性があります。

視床は感覚系の中継核であり、梗塞が起きると感覚障害、意識障害、視床痛など多彩な症状が出ます。

このあたりの解剖って一度覚えても忘れやすいんですよね。
参考書1冊の画像だけに頼っていると、違う断面や異なるコントラストの画像で「えっ、なんか違うぞ…?」と戸惑いがちです。

そんなときは、複数の画像ソースを見比べて学ぶのがコツです。ネット検索や症例集、アトラスなどを活用して、「いろんな人の大脳基底核」を見ておくと良いですよ。

臨床でたくさんの症例に触れると、たとえ構造の境界が曖昧でも、
「このへんが被殻っぽいな」「ここが内包かな」っていうのが、「心の目」で見えてくるようになります(まあ、気のせいかもしれませんが…笑)。


キーワード

  • 急性期脳梗塞
  • DWI(拡散強調像)
  • FLAIR像
  • 大脳基底核

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