急性期脳梗塞の頭部MRIのFLAIR像(A)及び拡散強調(B)を示す。病変の部位はどれか。

- 視床
- 中脳
- 被殻
- 小脳虫部
- 内包前脚
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
1.視床
解説
✔ 画像の特徴と読影ポイント
- B(DWI)画像:右視床領域(画像では左)に明瞭な高信号があり、拡散制限=急性期脳梗塞の所見。
- A(FLAIR)画像:同部位にわずかな変化があるものの、目立たない=陰性。
- FLAIR-DWIミスマッチ所見:DWIは高信号なのに、FLAIRでは変化がほぼない状態。これは脳梗塞がごく早い段階(発症数時間以内)であることを示す重要サイン。

✔ 各選択肢について
1.視床
- 脳室(第3脳室)を挟んで内側に位置する灰白質構造。
- 感覚情報の中継点で、脳梗塞の好発部位のひとつ。今回の高信号病変と一致。
2.中脳
- 脳幹の上部構造。
- 今回のスライスでは描出されておらず、レベルが異なる。
3.被殻
- 内包後脚の外側に位置。
- 今回の病変部位とは不一致。
4.小脳虫部
- 小脳の中央部にある縦長の構造で、左右の小脳半球をつなぐ橋渡し的な部分。
- 今回のスライスは小脳レベルではないため、小脳虫部は描出されていない。
5.内包前脚
- 尾状核と被殻の間にある白質構造。
出題者の“声”

この問題では、「DWIで高信号、FLAIRで変化が乏しい=急性期脳梗塞」という鉄板知識に加えて、大脳基底核の解剖が頭に入っておるかどうかを問うたのじゃ。
つまり、1問で2度おいしい、そんな設問にしておるのじゃ。
先に言っておこう。国家試験を受けるなら大脳基底核の解剖からは逃れられん。
これはもう定番中の定番、出題者が“ニヤッ”としながら狙ってくるところじゃからのう。
なんとなく「視床かな…」と選んだ者、立体的な位置関係がまだ甘いのかもしれんのう。左右・内外・前後を3Dで思い浮かべる習慣をつけておくのじゃ。
それとな、DWIとFLAIRが並んでいた時点で「ミスマッチの問題か?」とひらめいた者、見事じゃ!発症時間との関連まで考えが及んだなら、ボーナスポイントを3点差し上げたいくらいじゃぞ!
臨床の“目”で読む

急性期脳梗塞の診断では、DWI高信号をいち早く見つけることが最重要です。
FLAIRでは、発症初期には変化が見られないことも多く、
“DWI陽性/FLAIR陰性”=発症から数時間以内=tPA投与や血管内治療の対象となる可能性があります。
FLAIRでは、発症初期には変化が見られないことも多く、
「DWI陽性/FLAIR陰性」=「発症から数時間以内」=tPA投与や血管内治療の対象となる可能性があります。
視床は感覚系の中継核であり、梗塞が起きると感覚障害、意識障害、視床痛など多彩な症状が出ます。
このあたりの解剖って一度覚えても忘れやすいんですよね。
参考書1冊の画像だけに頼っていると、違う断面や異なるコントラストの画像で「えっ、なんか違うぞ…?」と戸惑いがちです。
そんなときは、複数の画像ソースを見比べて学ぶのがコツです。ネット検索や症例集、アトラスなどを活用して、「いろんな人の大脳基底核」を見ておくと良いですよ。
臨床でたくさんの症例に触れると、たとえ構造の境界が曖昧でも、
「このへんが被殻っぽいな」「ここが内包かな」っていうのが、「心の目」で見えてくるようになります(まあ、気のせいかもしれませんが…笑)。
キーワード
- 急性期脳梗塞
- DWI(拡散強調像)
- FLAIR像
- 大脳基底核
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