第77回 午前 87

第77回

IVRで使用するガイドワイヤで正しいのはどれか。

  1. 滅菌して再利用できる。
  2. 造影剤の誘導に用いられる。
  3. 血管刺入部の止血に用いられる。
  4. 血管内カテーテルの誘導に用いられる。
  5. カテーテルの長さよりも短いものが用いられる。

出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)


4.血管内カテーテルの誘導に用いられる。


解説

✔ ガイドワイヤとは?:血管内の「線路」

IVRで使用するガイドワイヤは、細くしなやかな金属製のワイヤーです。

その最も重要な役割は、目的の場所までカテーテル(治療や検査に使う細い管)を安全かつ確実に届けるための「線路」や「道しるべ」となることです。

IVRの基本手技であるセルディンガー法では、

  1. まず針で血管を穿刺し、
  2. 針の内腔を通して、先にガイドワイヤを血管内に挿入し、
  3. その後、針を抜いて、血管内に残したガイドワイヤに沿わせる形でカテーテル(シース)を挿入します。

このように、常にガイドワイヤを先行させることで、カテーテルが血管壁を傷つけることなく、スムーズに目的部位まで到達させることができるのです。


✔ 各選択肢について

1. 滅菌して再利用できる。

  • 誤り
  • ガイドワイヤは、血液に直接触れる医療機器であり、感染や血栓形成、ワイヤー表面のコーティング劣化などのリスクがあるため、単回使用(ディスポーザブル)が原則です。再滅菌して使用することはありません。

2.造影剤の誘導に用いられる。

  • 誤り
  • 造影剤を注入するのは、中が空洞になっているカテーテルの役割です。ガイドワイヤは、そのカテーテルを導くためのものであり、ワイヤー自体を通して何かを注入することはありません。

3.血管刺入部の止血に用いられる。

  • 誤り
  • 検査・治療が終わった後の穿刺部の止血は、手による圧迫や、専用の止血デバイスを用いて行います。
  • ガイドワイヤに止血の機能はありません。

4.血管内カテーテルの誘導に用いられる。

  • 正解
  • これがガイドワイヤの最も基本的かつ重要な役割です。カテーテルを進めるための「線路」として機能します。

5.カテーテルの長さよりも短いものが用いられる。

  • 誤り
  • 安全に操作するため、ガイドワイヤは必ず使用するカテーテルよりも長くなければなりません。
  • これにより、カテーテルを体内に進めている間も、常にワイヤーの端を体の外で保持でき、ワイヤーが体内で迷子になる(逸失する)のを防ぎます。

出題者の“声”

この問題は、IVRの世界への第一歩、基本中の基本である「ガイドワイヤ」の役割を、正しく理解しておるかを試しておる。

カテーテル治療と聞くと、つい主役であるカテーテルに目が行きがちじゃが、そのカテーテルを安全に導く「名脇役」であるガイドワイヤの存在なくして、IVRは成り立たん。

「ワイヤーがカテーテルより短い」なんていう選択肢は、臨床の現場を想像すれば、ヒヤリとするような状況じゃな。ワイヤーの端を常に手元で確保しておく、という安全操作の基本が分かっておれば、即座に誤りだと見抜けるはずじゃ。

臨床実習の時に「何を使って」「何をしているのか」をしっかり見ていたものにとってはサービス問題じゃ。道具とその役割を、一つひとつ正確に結びつけて覚えることが肝心じゃぞ。


臨床の“目”で読む

IVRの現場では、私たち放射線技師もチームの一員として、これらのデバイスの知識を深く理解しておく必要があります。

ー技師の役割とデバイスの知識ー

IVR中、術者である医師は手元に集中しています。その医師が「次の○○ワイヤーちょうだい」と指示を出したときに、多種多様なガイドワイヤの中から、素早く正確に手渡すのが、介助につく技師や看護師の重要な役割です。

ー多様なガイドワイヤー

ガイドワイヤと一口に言っても、その種類は数百にも及びます。

  • 硬さ: 蛇行した血管を通過するための柔らかいワイヤー、硬い病変を貫くための硬いワイヤー
  • 先端形状: まっすぐなストレート型、血管の枝への迷入を防ぐJカーブ型
  • 表面加工: 血管内での滑りを良くするための親水性コーティングが施されたもの

など、治療の目的や血管の状態に応じて、様々なワイヤーを使い分けます。 この問題は、その多様なワイヤーの、最も共通した「カテーテルを導く」という基本機能を問うているのです。


今日のまとめ

  1. ガイドワイヤの最も重要な役割は、血管内でカテーテルを目的部位まで安全に誘導すること。
  2. 安全な操作のため、ガイドワイヤは常に使用するカテーテルよりも長いものを使用する。
  3. 造影剤の注入や止血には用いられず、これらはカテーテルや専用デバイスの役割である。
  4. 感染や機能劣化のリスクを防ぐため、単回使用(ディスポーザブル)が原則である。

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