第77回 午後 13

核医学診療技術学

PET装置の性能評価法(NEMA NU 2-2018)の項目でないのはどれか。

  1. 感度
  2. 均一性
  3. 空間分解能
  4. 散乱フラクション
  5. PET/CTの重ね合わせ精度

出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)


2.均一性


解説

✔ NEMA規格とは?:装置の「公式スペック」を測る世界基準

NEMA(米国電機工業会)が定める規格は、PETやSPECTといった核医学装置の性能を、世界中のどこでも同じ方法で客観的に評価するための世界標準のルールブックです。 この問題で問われているのは、PET装置の性能評価基準である「NEMA NU 2」です。

✔ 「性能評価」と「日常の品質管理」の違い

車の購入と、毎日の運転に例えてみましょう。

  • NEMA性能評価 🚗 (いわば、新車購入時の公式スペック確認)
    • これは、装置が工場から出荷され、病院に納品される際に行う、本格的な性能試験です。メーカーが公表している通りの性能(燃費、最高速度、安全性など)が出ているかを、厳密な方法で確認します。 感度、空間分解能、散乱フラクション、PET/CT重ね合わせ精度などが、この「公式スペック」に含まれます。
  • 日常の品質管理 🔑 (いわば、毎日の運転前の始業点検)
    • これは、日々の検査を安全かつ正確に行うために、装置の状態が正常であるかを確認する日常的な点検です。タイヤの空気圧やライトの点灯を確認するようなものです。 均一性(Uniformity)は、この「毎日の始発見点検」で確認する、極めて重要な項目です。

この問題は、「新車購入時の公式スペックシート(NEMA NU 2)に載っていない項目はどれか?」と尋ねているのです。


✔ 各選択肢について

1. 感度

  • 誤り
  • NEMA NU 2の評価項目です。どれだけ微弱な放射線を検出できるか、という装置の基本的な能力を示します。

2.均一性

  • 正解
  • NEMA NU 2の評価項目ではありません。これは、SPECT装置の性能評価(NEMA NU 1)で定められている主要項目です。PET装置の均一性は、日常の品質管理(QC)で評価されます。

3.空間分解能

  • 誤り
  • NEMA NU 2の評価項目です。どれだけ小さな病変を識別できるか、という画像の鮮明さに関わる重要な指標です。

4.散乱フラクション

  • 誤り
  • NEMA NU 2の評価項目です。画像に含まれる散乱線の割合を示し、画像の定量性(SUV値の正確さ)に影響します。

5.PET/CTの重ね合わせ精度

  • 誤り
  • NEMA NU 2の評価項目です。PETの機能情報とCTの解剖学的情報の位置が、どれだけ正確に一致しているかを示します。

出題者の“声”

この問題の狙いは、「PETとSPECTの性能評価項目を、明確に区別できているか」、ただ一点じゃ。

多くの学生が、「均一性=核医学装置の重要な評価項目」という漠然とした知識で、これがPETの性能評価にも含まれると勘違いしてしまう。まさに、その典型的な思い込みを狙ったワナじゃ。

ワシが本当に見たいのは、NEMA NU 2(PET用)とNEMA NU 1(SPECT用)の評価項目を、頭の中で正しく切り分けられているかどうか。

この問題は、単なる暗記力ではなく、「どの規格が、どの装置のためのものなのか」という、知識の整理能力を試すフィルターになっておるのじゃ。


臨床の“目”で読む

ーNEMA性能評価の臨床的な意味ー

私たちが日常的に目にするPET/CT画像は、NEMA規格で保証された基本性能の上に成り立っています。

  • 感度・空間分解能
    • これらの性能が高いからこそ、ミリ単位の小さな早期がんや、淡い集積の病変を見逃さずに捉えることができます。
  • 散乱フラクション
    • この値が正確に補正されているからこそ、SUV値という客観的な指標を信頼し、治療効果判定などに用いることができるのです。
  • 重ね合わせ精度
    • これが保証されているからこそ、「CTで示されるこの小さなリンパ節に、PETの集積がある」といった、正確な位置診断が可能になります。

ー「均一性」は日常管理の要ー

一方で、「均一性」がNEMA NU 2の項目でないからといって、重要でないわけでは全くありません。むしろ、臨床現場では毎朝必ず行う、最も重要な日常品質管理(QC)項目の一つです。毎朝、均一な線源(ファントム)を撮影し、検出器の感度が均一であることを確認することで、その日一日の全ての患者さんの画像の信頼性を担保しているのです。測定で均一性を確認することで、患者画像の信頼性を守っているのです。


今日のまとめ

  1. NEMA NU 2は、PET装置の性能評価(いわば納品時の性能試験)の世界基準である。
  2. 感度、空間分解能、散乱フラクション、重ね合わせ精度などが含まれる。
  3. 均一性はNEMA NU 2には含まれず、SPECT装置の性能評価(NEMA NU 1)の主要項目である。
  4. PET装置の均一性は、NEMA規格とは別に、日常の品質管理(いわば毎日の始業点検)で確認する極めて重要な項目である。

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