脳血流 SPECT データ解析で正しいのはどれか。
- 統計学的画像解析では灰白質体積を評価する。
- パトラックプロット法では採血は不要である。
- 統計学的画像解析では手動で関心領域を設定する。
- Zスコアの算出にはダイナミック画像が必要である。
- コンパートメント解析はスタティック画像で行われる。
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
2.パトラックプロット法では採血は不要である。
解説
✔ 脳血流SPECT解析:目的で使い分けるアプローチ 🧠
脳血流SPECTのデータ解析には、大きく分けて「相対評価」と「絶対定量」の2つのアプローチがあり、それぞれに代表的な手法が存在します。
✔ 主要な解析法の特徴比較

✔ 各選択肢について
1. 統計学的画像解析では灰白質体積を評価する。
- ❌ 誤り
- 統計学的解析は、あくまで血流分布を健常者データベースと比較する方法です。
- 灰白質の体積を評価するのは、MRIを用いたVBM(Voxel-Based Morphometry)などの手法です。
2.パトラックプロット法では採血は不要である。
- ✅ 正解
- 時パトラックプロット法は、頭部の放射能の時間変化(ダイナミックデータ)から入力関数を推定するため、動脈血採血をすることなく脳血流量を定量できる、臨床的に非常に有用な方法です。
3.統計学的画像解析では手動で関心領域を設定する。
- ❌ 誤り
- 手動で関心領域(ROI)を設定するのは、古典的なROI解析法です。統計学的画像解析では、脳全体を標準的な脳の形に当てはめて(空間的正規化)、画素(ボクセル)ごとに統計処理を行うため、手動でのROI設定は行いません。
4.Zスコアの算出にはダイナミック画像が必要である。
- ❌ 誤り
- Zスコアは、ある一点のデータ(スタティック画像)が、正常な集団の平均からどれだけ離れているかを示す統計指標です。算出に時間情報は不要です。
5.コンパートメント解析はスタティック画像で行われる。
- ❌ 誤り
- コンパートメント解析は、トレーサーの時間的な動き(動態)を数理モデルに当てはめて解析するため、ダイナミック画像が必須です。
出題者の“声”

この問題の狙いは、脳血流SPECTにおける各解析法の特徴を、そのキーワード(採血、スタティック、ダイナミック、ROI、統計処理)と正しく結びつけて区別できるか、を確認することじゃ。
よく引っかかるワナは、
- ROI解析と統計学的解析を混同し、「統計=ROI」と思い込む。
- 「Zスコア」や「統計」という言葉の難しそうな響きから、「ダイナミック画像が必要だろう」と連想してしまう。
- 「定量」と聞くと、すべて採血が必要だと思い込む。
しかし、実際にはZスコアはスタティック画像から算出でき、パトラックプロット法は採血なしで定量できる。
この、手法の複雑さと、要求されるデータの複雑さを、正しく対応付けて記憶しているか。そこを巧妙な選択肢の配置で試しておるのじゃ。
臨床の“目”で読む

臨床現場では、これらの解析法を疾患や目的に応じて使い分けます。
- 統計学的画像解析 (SPM, 3D-SSP)
- 早期アルツハイマー型認知症などの診断における強力な武器です。従来の目視やROI法では見逃してしまうような、ごく初期の微妙な血流低下(例: 楔前部や後部帯状回)を、健常者データとの比較によって客観的な「Zスコアマップ」として可視化できます。
- パトラックプロット法 vs コンパートメント解析
- コンパートメント解析は、研究レベルでは最も正確な定量法ですが、動脈穿刺による連続採血が必要なため、患者さんへの負担が大きく、日常臨床で頻繁に行うのは困難です。 一方、パトラックプロット法は、採血が不要で比較的簡便に脳血流量を定量化できるため、臨床での実用性が非常に高く、脳血管障害の評価などで広く用いられています。
今日のまとめ
- 統計学的解析 (SPMなど):健常脳と比較する相対評価。スタティック画像を使用し、ROI設定は不要。
- パトラックプロット法:脳血流量の絶対定量法。最大のメリットは採血が不要であること。
- コンパートメント解析:最も精確な絶対定量法だが、ダイナミック画像と動脈血採血が必要で煩雑。
- Zスコアはスタティック画像から算出可能。手動ROIを用いるのは古典的なROI解析法。



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