正常の脳核医学画像を示す。使用した放射性医薬品はどれか。

- ¹²³I-IMP
- ¹⁸F-FDG
- ¹⁵O-CO₂ガス
- ¹²³I-イオフルパン
- ¹⁸F-フルテメタモル
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
5.¹⁸F-フルテメタモル
解説
✔ 脳核医学検査:「何」を見ているかで薬剤を区別する 🧠
脳の核医学検査には、目的の異なる様々な放射性医薬品(トレーサー)が使われます。この問題を解く鍵は、まず画像に写っている特徴的なパターンを読み解き、それがどのトレーサーの生理的な振る舞いと一致するかを見極めることです。
✔ 画像の特徴を読み解く
提示された画像を見ると、脳の表面(大脳皮質)が均一に光っているわけではなく、その内側にある大脳白質に沿って、脳溝の形を縁取るように放射能が集まっているのが分かります。
これは、正常な脳におけるアミロイドPETトレーサーの分布として、典型的なパターンです。
✔ 主要な脳トレーサーが見ているもの

✔ 各選択肢について
1. ¹²³I-IMP
- ❌ 誤り
- 脳血流を評価するSPECT薬剤です。
- 正常では、神経活動が活発な大脳皮質全体に集積します。
2.¹⁸F-FDG
- ❌ 誤り
- 脳の糖代謝を評価するPET薬剤です。
- 正常では、大脳皮質全体に強い集積が見られます。
3.¹⁵O-CO₂ガス
- ❌ 誤り
- 脳血流を測定するためのPETガス薬剤ですが、半減期が約2分と極端に短く、特殊な研究施設でしか使われません。
4.¹²³I-イオフルパン
- ❌ 誤り
- ドパミントランスポーター(DaT)を評価するSPECT薬剤で、パーキンソン病などの診断に用います。
- 正常では、大脳基底核の線条体に「コンマ状」の特異的な集積が見られます。
5.¹⁸F-フルテメタモル
- ✅ 正解
- アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβプラークを可視化するPET薬剤です。
- 正常な脳では、このように大脳白質に沿った非特異的な集積パターンを示します。
出題者の“声”

この問題の意図は、「脳核医学の主要トレーサーを、その生理機能と画像パターンで正しく区別できるか」を試すことにある。
多くの学生は「脳の機能画像=血流 or FDG」と短絡的に考えがちじゃ。そこを逆手に取り、近年、認知症診断の切り札として臨床応用が急速に進んでいるアミロイドPETを提示した。
選択肢に¹²³I-IMPや¹⁸F-FDGといった“定番”を混ぜておるのも、受験者が「見慣れた血流や糖代謝のパターンだ」と誤認しないか、その読影眼の鋭さを試すための“ひっかけ”なのじゃ。
脳の核医学が、新たな時代に入っておることを知っておるか、というメッセージでもあるのじゃ。
臨床の“目”で読む

アミロイドPETは、アルツハイマー病(AD)が疑われる患者さんの鑑別診断において、極めて重要な役割を果たします。
ーFDG-PETとの違い:原因と結果ー
- アミロイドPET
- アルツハイマー病の「原因」である、脳への異常タンパク質(アミロイドβ)の蓄積そのものを直接可視化します。
- FDG-PET
- アミロイドβが蓄積した「結果」として生じる、神経細胞の活動低下(糖代謝の低下)を可視化します。
アミロイドの蓄積は、症状が出る10年以上前から始まると言われており、アミロイドPETは超早期の病理変化を捉えることができるのです。
ー臨床での役割と注意点ー
認知症の原因がアルツハイマー病によるものなのか、他の疾患によるものなのかを鑑別する上で、客観的な証拠となります。ただし、正常な高齢者でもアミロイドの蓄積が見られることがある(無症候性アミロイドーシス)ため、陽性所見が直ちにアルツハイマー病の発症を意味するわけではありません。必ず、臨床症状や他の検査所見と合わせて総合的に判断されます。
今日のまとめ
- 画像はアミロイドPETの正常像。使用薬剤はアルツハイマー病の原因物質を可視化する¹⁸F-フルテメタモルである。
- 正常なアミロイドPETは、大脳白質に沿った非特異的集積が特徴的なパターン。
- FDG(糖代謝)やIMP(血流)は大脳皮質に、イオフルパンは大脳基底核に集積し、分布パターンが全く異なる。
- 臨床では、アルツハイマー病の早期診断や鑑別診断に用いられる、最先端の核医学検査である。
コメント