NEW!第77回 午後 39

医療安全管理学

使用済み注射針の廃棄処理で正しいのはどれか。

  1. 病原体別に容器を使い分ける。
  2. 容器に段ボール箱を使用する。
  3. 蓋がない開放した容器を用いる。
  4. 容器容量の約8割を超えて詰め過ぎない。
  5. 使用済みの注射針はリキャップしてから廃棄する。

出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)


4.容器容量の約8割を超えて詰め過ぎない。


解説

✔ なぜ注射針の廃棄が重要か?:針刺し事故のリスク 🩸

医療現場で発生する針刺し事故は、医療従事者が最も注意すべき労働災害の一つです。 使用済みの注射針には、患者さんの血液が付着しており、もし誤って自分の体に刺してしまうと、B型肝炎、C型肝炎、HIV(エイズ)などの血液を介して感染する病気に感染するリスクがあります。 この危険を回避するため、使用済み注射針の廃棄には、絶対に守らなければならない厳格なルールが定められています。

✔ 注射針廃棄の4大原則

  • リキャップはしない!
    • 使用後の針に、再びキャップをかぶせる行為(リキャップ)は、手元が狂って自分を刺してしまう針刺し事故の最大の原因です。絶対に行ってはいけません
  • すぐに捨てる!
    • 使用した注射針は、その場で直ちに専用の廃棄容器に捨てます。
  • 専用容器を使う!
    • 廃棄容器は、針が貫通しない硬いプラスチック製で、蓋がしっかり閉まる「バイオハザードマーク」が付いた専用品(シャープスコンテナ)を使用します。段ボール箱やペットボトルでの代用は厳禁です。
  • 詰め込みすぎない!
    • 容器が満杯になると、針が外に飛び出したり、無理に押し込む際に事故が起きたりします。容器の容量の8割程度で交換するのが原則です。

✔ 各選択肢について

1. 病原体別に容器を使い分ける。

  • 誤り
  • 注射針はすべて「感染性廃棄物」として同じ容器に扱います。病原体の種類ごとに分別する必要はありません。

2.容器に段ボール箱を使用する。

  • 誤り
  • 段ボール箱は針が簡単に貫通するため非常に危険です。必ず専用の硬質プラスチック容器を使用します。

3.蓋がない開放した容器を用いる。

  • 誤り
  • 蓋がない容器は、針の飛散や接触のリスクがあり、極めて危険です。

4.容器容量の約8割を超えて詰め過ぎない。

  • 正解
  • 容器が満杯に近くなると、針を捨てる際に自分や他人を傷つけるリスクが急増するため、8割程度で交換することが推奨されています。

5.使用済みの注射針はリキャップしてから廃棄する。

  • 誤り
  • リキャップは針刺し事故の最も多い原因であり、原則禁止されている行為です。

出題者の“声”

この問題は、一見すると「当たり前」の常識問題に見えるかもしれん。しかし、その裏には「日々の業務の忙しさの中で、安全ルールを遵守する意識が根付いているか」という、医療人としての姿勢を問う意図が隠されておる。

「リキャップしない」「8割で交換する」――頭では分かっていても、つい「後でやろう」「まだ入るから大丈夫」と、ルールを軽視してしまう瞬間が一番危ない。

針刺し事故は、たった一回の油断が、自分自身の人生を左右しかねない重大な事故じゃ。これは患者さんのためだけでなく、「自分自身を守るためのルール」であることを、肝に銘じておかねばならん。


臨床の“目”で読む

ー放射線技師と針刺しリスクー

私たち放射線技師も、造影検査の準備・実施・後片付けや、血管確保の介助などで、注射針や鋭利な器具に触れる機会は少なくありません。「自分は慣れているから大丈夫」という油断が、最も危険です。

  • 技師が特に注意すべき場面
    • 造影剤注入のための静脈確保
    • 造影剤自動注入器のシリンジや接続チューブを交換するとき
    • 検査後の後片付けや清掃のとき
    • 満杯になった廃棄容器を交換するとき
    • 医師や看護師の介助をしているとき

ー事故を防ぐためのポイントー

  • ① 常に動線を意識する
    • 針を扱っている人の周りを不用意に横切らない、針を置いたトレイの近くに手を伸ばさない。
  • ② 廃棄容器は手の届く場所に
    • 使用後、すぐに捨てられるように、廃棄容器は常に近くに準備しておく。
  • ③「8割」を徹底する
    • 満杯に近い廃棄容器を見つけたら、自分が使う前でも、率先して新しい容器に交換する。

こうした小さな意識の積み重ねが、自分自身と大切な同僚を、重大な感染のリスクから守ることに繋がるのです。


今日のまとめ

  1. 使用済み注射針は、リキャップせず、使用後すぐに専用の廃棄容器に捨てる。
  2. 廃棄容器は、針が貫通しない硬質プラスチック製で、容量の8割程度で交換する。
  3. 針刺し事故は、患者さんだけでなく、自分自身を守るための最重要課題である。
  4. 安全な廃棄は「個人の注意」だけでなく、「職場のルール」として全員で徹底することが重要。

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